
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Europe_relief_laea_location_map.jpg
「北方」は、アルプスの北側で、ドイツ、ネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー)などをさします。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Map_Burgundian_Netherlands_1477-en.png
1477年頃のネーデルラント
イタリアのルネサンスとほぼ同時期に、アルプス山脈以北で起こった芸術運動が北方ルネサンスです。
北方には熱心なキリスト教徒がたくさんいたため、イタリアルネサンスに比べると、キリスト教色の強い作品が多くみられます。
3級 過去問/Q.44

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Flemish_Region_in_Belgium_and_Europe.svg
フランドルは、ベルギーのあたりでネーデルラント南部の名称です。
フランダースともいわれ、あの「フランダースの犬」の舞台となった場所ですね!
毛織物工業や貿易が発達して、豊かな経済力を背景に市民文化が栄えます。
油絵具の原料である、亜麻仁油の産地でもありました。
早くからこの油絵具が使われ、色調豊かに 風景など自然を、正確に表現する技法が確立されています。
油絵具の特性を発見して、いち早く絵画表現に取り入れたのが、ファン・エイク兄弟です。

ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻の肖像》
1434年 油彩・板
81.9×59.9㎝ ナショナルギャラリー(ロンドン)

奥の壁には「ヤン・ファン・エイクここにありき」という文字と、ヤン自身が映り込んでいます。
驚異的な細密画を生み出したファン・エイク兄弟。
弟のヤンは「神の手」と称えられるほどの超絶技巧の持ち主です!
細部まで本当にすごいです。
フランドルは、16世紀にスペインの支配下に入り、宗教改革で多数派のプロテスタントが北に逃れ、ネーデルラント連邦共和国(オランダ)として独立します。
3級 過去問/Q.45

《神秘の仔羊の礼拝》(ヘントの祭壇画・部分)
1432年 油彩・板
聖バーフ大聖堂(ヘント)
「北方」「フランドル」「油絵の技法」
といえばファン・エイク兄弟!
顔料(岩石や鉱物から作られる色のもとになる粉)に、乾性油(空気中で徐々に酸化して固化する油)を練り合わせたものが油絵具です。
チューブの絵具が開発される19世紀までは、画家や弟子たちが練り合わせて作っていました。
テンペラ(顔料と卵)画に比べて乾燥が遅い反面、ぼかしや透明感のある色を出せます。
ファン・エイク兄弟は、その特性を生かして非常に細密な描写を実現しました。
この作品もすごいですね~
大規模な多翼祭壇画《ヘントの祭壇画》の中央パネルの絵です。

👆この部分




なんて細かい描写……
スゴすぎますね~


閉じた状態
お兄さんはフーベルト・ファン・エイク。
この作品の制作途中で亡くなってしまい、弟のヤンが完成させています。

《ターバンの男の肖像》
1433年 ナショナルギャラリー(ロンドン)
ヤンの自画像では!? といわれている作品です。
3級 過去問/Q.46

《十字架降架》
1435頃 油彩・板
220×262㎝ プラド美術館(マドリード)

コルニリス・コートによるファン・デル・ウェイデンの肖像画
1572年
ヤン・ファン・エイクに比べると、写実性は劣りますが、精神性のある人物表現が高く支持されていました。



こちらもすごいですね!
ウェイデンの師である ロベルト・カンピンは、写実による現実的描写や、統一感ある空間構成など、初期ネーデルランド絵画の基礎を築き上げた革新者です。
その代表作がこちら

ロベルト・カンピン 《メロードの祭壇画》
1424-28年 油彩・板
メトロポリタン美術館別館 クロイスターズ(NY)
「受胎告知」の場面ですが、これまで見た「受胎告知」と違って、部屋のしつらえや調度品が普通の家のようです。
個人(商人層)の依頼によって描かれました。




見てて楽しくなりますね♪
それにしても北方の画家たちって…
すごすぎますね~
3級 過去問/Q.47

ヒロエニムス・ボス 《快楽の園》
1503-04年 油彩・板
220×97㎝ プラド美術館(マドリード)
ネーデルランドの画家といえば、ヒエロニムス・ボス(1450頃~1516年)も忘れてはいけませんね!
この代表作《快楽の園》を所蔵しているのは、スペインのプラド美術館です。

死後の肖像画 1585年
この作品は3枚のパネルからなる祭壇画は、聖書に登場するモチーフが描かれていますが…
画面のほとんどを、不気味な怪物や奇妙な動植物などが占めています。





ボスのこの幻想的な世界は、のちのブリューゲルやシュルレアリスムの画家たちに影響を与えています。
もう少し詳しくはこちらを👇
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019