美術検定3級 過去問/Q.48~51(北方ルネサンス美術2)

ヴェネツィアでルネサンスの美術や理論を学び、《メランコリアⅠ》をはじめ銅版画でも北方の細密な描写と結びつけた作品を生み出した、ドイツ出身の画家は?
① デューラー
② クラーナハ(父)
③ ブリューゲル(父)
④ グリューネヴァルト
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.36
デューラー メランコリアⅠ

《メランコリアⅠ》
1514年 銅版画
24×18.8㎝ 

答え ① デューラー

アルブレヒト・デューラー(1471-1528年)

デューラー 自画像 

自画像(26歳) プラド美術館

15世紀末から16世紀初頭、ヴェネツィアに滞在してイタリア・ルネサンス美術を学びます。その理想的な人体表現と、合理的な空間表現を、ドイツ絵画に導入します。

この作品《メランコリアⅠ》の天使は、メランコリー(憂鬱質)を擬人化したもの。
「憂鬱質」は人間の体液を構成する4つの気質の1つで、当時は芸術家の想像力と関連づけられていました。

魔法陣多面体は、芸術家に必要な理論的側面を、彗星コウモリは、克服すべき迷信や獣性を表すとされています。

デューラー メランコリアⅠ 魔法陣 

右上の魔法陣は縦、横、斜め、どの列の和も「34」。
角2×2の4つのマスで見た時も、それぞれの和が「34」。

紀元34年
がキリストの没年なので、キリストの象徴ともいわれています。

この作品サイズは、24x18.8㎝で、B5くらいの版画です。
デューラーは版画にも力を入れていました。

3級 過去問/Q.49

クラーナハ(父)の友人であり、彼がしばしば肖像画を描いた宗教改革者は?
① マルティン・ルター
② ジャン・カルヴァン
③ フルドリッヒ・ツヴィングリ
④ ヤン・フス
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.36
マルティン・ルター クラーナハ(父)

クラーナハ(父)
1529年 ウフィツィ美術館

答え ① マルティン・ルター

この作品は《ルターの肖像》。
腐敗したキリスト教会を批判し、宗教改革を進めたマルティン・ルターの肖像画です。

描いたのは、ルーカス・クラーナハ(父)(1472-1553)。

クラーナハ(父)

77歳のクラーナハ自画像
1550 ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

ヴィッテンベルク(現ドイツの都市)に工房を設立。
宗教画から世俗的なものまで、幅広く制作しました。

ルターはヴィッテンベルク大学の教授で、クラーナハルターの熱心な擁護者でした。

クラーナハ(父)は、領主ザクセン選帝侯の宮殿画家で、裸体画の名手でもありました。
裸婦像の受注をマニュアル化して、顔を発注者の好みに変えるなど、柔軟に客のニーズに応えています。

その他、代表作はこちらを👇

息子も同じ名前の画家であるため、クラーナハ(父)と表記されています。

父が亡くなった後は、息子が工房を引き継いでいます。
父の作風も受け継いでおり、どちらのものか未だ判明していない作品もあるようです。

3級 過去問/Q.50

《キリストの磔刑》(イーゼンハイムの祭壇画)を描いたドイツ・ルネサンスの画家は?
① アルトドルファー
② デューラー
③ クラーナハ(父)
④ グリューネヴァル
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.36
グリューネヴァルト キリスト磔刑

《キリストの磔刑》(イーゼンハイムの祭壇画・部分)
1512-16年 ウンターリンデン美術館(フランス)

答え ➃ グリューネヴァルト

マティアス・グリューネヴァルト(1470-1528)は、デューラーと並ぶドイツ・ルネサンスの巨匠の一人です。

自画像

この絵は《イーゼンハイムの祭壇画》の中央図!

グリューネヴァルト イーゼンハイムの祭壇画 キリスト磔刑
© Jörgens.mi
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Isenheimer_Altar_(Colmar)_jm01221_(retouched).jpg
グリューネヴァルト イーゼンハイムの祭壇画 詳細

数ある祭壇画の中でも、強烈なインパクトを与える作品です。

十字架にかけられたキリストの手足はねじ曲がり、身体には無数の傷が…
あまりに痛々しい描写です。

当時流行していた皮膚病患者の施療院だった、アントニウス修道院への祭壇画だったため、キリストが患者と同様に苦しむ様子を描くことで、患者の苦しみを和らげようとしたものです。

感情の直接的表現は、ゴシックの伝統を継承しており、ルネサンス的写実描写が加わって、劇的な効果を高めています。

扉を開くと「受胎告知」「キリスト降誕」「キリストの復活」が描かれています。

グリューネヴァルト イーゼンハイムの祭壇画 受胎告知

さらに開くと

グリューネヴァルト イーゼンハイムの祭壇画 第3場面

「聖アウグスティヌス」「聖アントニウス」「聖ヒエロニムス」の立像まで!

第一面で苦しみをキリストと共有し、第二面と第三面で人々は救われたんですね。

現在は各面ごと、分割されて展示されています。

イーゼンハイムの祭壇画 
vincent desjardins, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons

3級 過去問/Q.51

次のネーデルラントの画家のうち、活動した時期が最も遅いのは?
① ブリューゲル(父)
② ファン・デル・ウェイデン
③ ヤン・ファン・エイク
④ ボス
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.36

《ネーデルラントの諺》
1559年 油彩・板
117×163㎝ ベルリン美術館

答え ① ブリューゲル(父)

最も遅い16世紀に活動したのは、ピーテル・ブリューゲル(父)(1525/30-1569)です。

ブリューゲルの息子もまた、同じ名前で画家のため、大ブリューゲルまたはブリューゲル(父)と表記されます。

ピーテル・ブリューゲル(父)自画像

The Painter and The Buyer》おそらく自画像
1565年 ペン・インク・紙
25.5×25.1㎝ アルベルティーナ(ウィーン)

農民の風俗聖書ことわざを題材にした作品で知られます。

人生の不条理や人間とは何かという心理を、風刺寓話を通してユーモラスに暖かく描いています。

16世紀のネーデルラントは、スペインの支配下で、庶民はその弾圧に苦しんでいました。

そんな庶民の気持ちに寄り添って、王に対する皮肉を込め、上の作品《ネーデルラントの諺》の中には、100個もの諺が散りばめられています!

ネーデルラントの諺 詳細 

 逆さまの世界
 ⇒ 何事もあるべきようにはならない

ネーデルラントの諺 詳細

 風で鳥の羽を飛ばす
 ⇒ 無計画で成果のない仕事

ブリューゲル(父)ネーデルラントの諺 詳細

 頭を壁に向けて歩く
 ⇒ 不可能なことを試みる

ネーデルラントの諺 詳細

 豚の前にバラ(真珠)を投げてはならない
  ⇒ 価値のないことに浪費してはならない

その他の代表作

ブリューゲル 雪中の狩人

《雪中の狩人》
1565年 油彩・板
117×162㎝ ウィーン美術史美術館

この作品は、月暦画(1年をそれぞれの月に特有な行事や風俗で表したシリーズ絵)と呼ばれる連作の1つです。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
増補新装 カラー版 西洋美術史  高階秀爾監修 株式会社美術出版社  2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ)  瀧澤秀保監修  株式会社三才ブックス  2019

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