3級 過去問/Q.48
《メランコリアⅠ》
1514年 銅版画
24×18.8㎝
アルブレヒト・デューラー(1471-1528年)
自画像(26歳) プラド美術館
15世紀末から16世紀初頭、ヴェネツィアに滞在してイタリア・ルネサンス美術を学びます。その理想的な人体表現と、合理的な空間表現を、ドイツ絵画に導入します。
この作品《メランコリアⅠ》の天使は、メランコリー(憂鬱質)を擬人化したもの。
「憂鬱質」は人間の体液を構成する4つの気質の1つで、当時は芸術家の想像力と関連づけられていました。
魔法陣や多面体は、芸術家に必要な理論的側面を、彗星や犬やコウモリは、克服すべき迷信や獣性を表すとされています。
右上の魔法陣は縦、横、斜め、どの列の和も「34」。
角2×2の4つのマスで見た時も、それぞれの和が「34」。
紀元34年がキリストの没年なので、キリストの象徴ともいわれています。
この作品サイズは、24x18.8㎝で、B5くらいの版画です。
デューラーは版画にも力を入れていました。
3級 過去問/Q.49
クラーナハ(父)
1529年 ウフィツィ美術館
この作品は《ルターの肖像》。
腐敗したキリスト教会を批判し、宗教改革を進めたマルティン・ルターの肖像画です。
描いたのは、ルーカス・クラーナハ(父)(1472-1553)。
77歳のクラーナハ自画像
1550 ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
ヴィッテンベルク(現ドイツの都市)に工房を設立。
宗教画から世俗的なものまで、幅広く制作しました。
ルターはヴィッテンベルク大学の教授で、クラーナハはルターの熱心な擁護者でした。
クラーナハ(父)は、領主ザクセン選帝侯の宮殿画家で、裸体画の名手でもありました。
裸婦像の受注をマニュアル化して、顔を発注者の好みに変えるなど、柔軟に客のニーズに応えています。
その他、代表作はこちらを👇
息子も同じ名前の画家であるため、クラーナハ(父)と表記されています。
父が亡くなった後は、息子が工房を引き継いでいます。
父の作風も受け継いでおり、どちらのものか未だ判明していない作品もあるようです。
3級 過去問/Q.50
《キリストの磔刑》(イーゼンハイムの祭壇画・部分)
1512-16年 ウンターリンデン美術館(フランス)
マティアス・グリューネヴァルト(1470-1528)は、デューラーと並ぶドイツ・ルネサンスの巨匠の一人です。
自画像
この絵は《イーゼンハイムの祭壇画》の中央図!
数ある祭壇画の中でも、強烈なインパクトを与える作品です。
十字架にかけられたキリストの手足はねじ曲がり、身体には無数の傷が…
あまりに痛々しい描写です。
当時流行していた皮膚病患者の施療院だった、アントニウス修道院への祭壇画だったため、キリストが患者と同様に苦しむ様子を描くことで、患者の苦しみを和らげようとしたものです。
感情の直接的表現は、ゴシックの伝統を継承しており、ルネサンス的写実描写が加わって、劇的な効果を高めています。
扉を開くと「受胎告知」「キリスト降誕」「キリストの復活」が描かれています。
さらに開くと
「聖アウグスティヌス」「聖アントニウス」「聖ヒエロニムス」の立像まで!
第一面で苦しみをキリストと共有し、第二面と第三面で人々は救われたんですね。
現在は各面ごと、分割されて展示されています。
3級 過去問/Q.51
《ネーデルラントの諺》
1559年 油彩・板
117×163㎝ ベルリン美術館
最も遅い16世紀に活動したのは、ピーテル・ブリューゲル(父)(1525/30-1569)です。
ブリューゲルの息子もまた、同じ名前で画家のため、大ブリューゲルまたはブリューゲル(父)と表記されます。
《The Painter and The Buyer》おそらく自画像
1565年 ペン・インク・紙
25.5×25.1㎝ アルベルティーナ(ウィーン)
農民の風俗や聖書、ことわざを題材にした作品で知られます。
人生の不条理や人間とは何かという心理を、風刺や寓話を通してユーモラスに暖かく描いています。
16世紀のネーデルラントは、スペインの支配下で、庶民はその弾圧に苦しんでいました。
そんな庶民の気持ちに寄り添って、王に対する皮肉を込め、上の作品《ネーデルラントの諺》の中には、100個もの諺が散りばめられています!
逆さまの世界
⇒ 何事もあるべきようにはならない
風で鳥の羽を飛ばす
⇒ 無計画で成果のない仕事
頭を壁に向けて歩く
⇒ 不可能なことを試みる
豚の前にバラ(真珠)を投げてはならない
⇒ 価値のないことに浪費してはならない
その他の代表作
《雪中の狩人》
1565年 油彩・板
117×162㎝ ウィーン美術史美術館
この作品は、月暦画(1年をそれぞれの月に特有な行事や風俗で表したシリーズ絵)と呼ばれる連作の1つです。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019