美術検定3級 過去問/Q.141~143(アンフォルメル・抽象表現主義)

「アール・ブリュット」(生の芸術)を提唱したアンフォルメルの造形作家はだれですか?
① ピエール・スーラージュ
② アンリ・ミショー
③ パウル・クレー
④ ジャン・デュビュッフェ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.76

《メタフィジックス》 
1950年 油彩・キャンヴァス
ポンピドゥー・センター(パリ)

答え ④ ジャン・デュビュッフェ
ジャン・デュビュッフェ
Paolo Monti, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Paolo_Monti_-_Servizio_fotografico_(Italia,_1960)_-_BEIC_6341424.jpg

ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)は、フランスの画家で、アンフォルメルの造形作家です。
文明よりも未開を好んで、落書きのような無垢な作風で異彩を放った作家です。

アンフォルメルとは、第二次世界大戦後の、それまでの幾何学的な抽象画に対して、パリの画家たちの間から生まれた新たな抽象絵画の運動です。

激しい情熱を画面にぶつけるようなダイナミックな表現や、絵具の分厚い塗り重ねなど、作品表面の強い質感が特徴です。

フランス語で「非公式の」を意味する形容詞で、美術用語として正式には「アール・アンフォルメル」。日本語にすると「不定形抽象」とか、「非定型芸術」といった意味の言葉になります。

この運動の先駆者がデュビュッフェです。

そして、そのデュビュッフェが提唱したのが「アール・ブリュット(生の芸術)です。

英語では「アウトサイダー・アート」といわれ、独学だったり趣味としてだったり、美術界とは無縁に制作されたものを指します。

デュビュッフェは、精神病患者や霊的幻視者などの作品を「最も純粋で、最も無垢な芸術」と積極的に評価します。1948年、他の作家らと会社を設立して、アール・ブリュットの作品を収集、公開していきました。

やがて美術の一領域として、広く認知されるようになっていきました。

デュビュッフェさくひんクレラー・ミュラー美術館

クレラー・ミュラー美術館(オランダ)

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3級 過去問/Q.142

第二次世界大戦後のアメリカを中心に隆盛した「中心をもたない構成」「平面性の協調」「巨大化する画面」などを特徴とする絵画傾向を何と呼ぶでしょう?
① ポップ・アート
② ネオ・ダダ
③ 抽象表現主義
④ オブ・アート
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.76
答え ③ 抽象表現主義

抽象表現主義は、主にアメリカ1940~50年代に制作された抽象絵画を指します。

第二次世界大戦の混乱で、芸術家たちの多くが、ヨーロッパからアメリカへと亡命。芸術の中心も、パリからニューヨークへと移ります。そして生まれたのが抽象表現主義です。

どれも個性的ですが、中心がなく均質な画面で、その多くが大画面というのが共通点です。

大まかに2つの傾向があります。

1つは「アクション・ペインティング」です。
描く行為そのものを「絵画」と位置づけています。

主な作家が、

ジャクソン・ポロック(1912-1956)
jackson-pollock's-passport

ジャクソン・ポロック《ナンバー1A》 1948年

この作品《ナンバー1A》は、床に置いた大きなキャンバスに、絵具を滴らせる技法(ドリッピング)で描いています。

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ウィレム・デ・クーニング(1904-1997)
ウィレム・デ・ク―ニング

筆をたたきつけたような、激しい動きのある人物画を描いています。
「女シリーズ」では、女性を美しく描くという発想も否定しています。

デ・クーニング《女と自転車》1952-53年

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次に登場したのが、「カラー・フィールド・ペインティング」(色面派)です。

大きな画面に、単色か少数の色彩で色面を制作。その広がりの中に、静寂性精神性を漂わせた作品です。

代表する作家が、

マーク・ロスコ(1903-1970)
マーク・ロスコ
Consuelo Kanaga, No restrictions, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Consuelo_Kanaga,_Mark_Rothko,_Yorktown_Heights,_ca._1949.jpg

《黒の上の赤》 1957年

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クリフォード・スティル(1904-1980)

《1957-D.No.11957年

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描く行為そのものを作品としてみせることが、やがてハプニングパフォーマンスというジャンルになっていきます!

3級 過去問/Q.143

1940年代にニューヨークで独自の表現を獲得し、活躍した画家たちを総称して「ニューヨーク・スクール」といいますが、それに属する画家はだれですか?
① ウォーホル
② リキテンスタイン
③ ハミルトン
④ ポロック
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.76

《ナンバー3》 1949年

答え ④ ポロック

一つ前の問題で出てきましたね。

ニューヨークを拠点として活躍した抽象表現主義の作家らを、ニューヨーク・スクールと総称します。ニューヨーク派とも呼ばれます。

スクールとは、学校ではなく、流派とか学派って意味の方ですね。

他の作家、ウォーホルやリキテンスタイン、ハミルトンは、ポップ・アートの代表的な作家として知られています。次の問題に出てきます!

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
芸術教養シリーズ7 欧米のモダニズムとその後の運動 近現代の芸術史 造形篇I 林洋子編  株式会社幻冬舎  2013

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