《十便十宜図帖 十便図・釣便》
1771年 川端康成記念館(神奈川)
福原五岳筆 池大雅像
池大雅(いけのたいが/1723-76)は、18世紀、江戸中期に活躍しました。
日本の南画(文人画)の大成者です。
幼くして画才を輝かせ、初期文人画家たちの指導を受けます。
文人画とは、中国の官僚で知識人や儒教的教養を備えた文人が、自らの理想を描いた絵画です。風景を前にして、心の中に内在するものを中心に、描き出そうとした絵をいいます。あくまでアマチュア絵画で、職業画家のものとは区別されていました。
これが江戸時代中期に日本に入り、日本的な趣を持って発展します。
そして、文人画風の「南画」として確立させたのが、池大雅や与謝蕪村(よさぶそん)らです。柔らかで叙情的な画風です。
《十便十宜図帖 十宜帖・宜暁》
《十便十宜》(じゅうべんじゅうぎ)は、池大雅と与謝蕪村の合作です。
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3級 過去問/Q.216
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池大雅《浅間山真景図》
18世紀(江戸時代) 紙本墨画淡彩
57.2×103㎝ 個人蔵
真景図(しんけいず)は、理想郷ではなく、特定の場所の写生に基づいた山水画を指します。
池大雅をはじめとする文人画家たちによって、広く試みられました。
大雅は旅行や登山が好きで、日本各地を旅し、目にした風景を描きました。
ひろく諸派の絵画を研究し、西洋の画法も取り入れ、個性的で新鮮な画風を確立しました。
3級 過去問/Q.217
《雪松図屏風》右隻
円山応挙(まるやまおうきょ/1733-95)は、近現代の京都画壇にまでその系統が続く「円山派」の祖です。
若い頃に、覗きからくりのための「眼鏡絵」を制作し、西洋の透視遠近法を体得するとともに、写生画を確立します。
写生画とは、実物・実景を見て描いた絵ですね。
「写生」ということ自体は鎌倉時代からあり、動物や植物の姿はスケッチされていましたが、あくまで絵を描くための準備作業でした。
応挙は、中国から入ってきた写実的画風に大きな影響を受けて、古今の画風を貪欲に学びます。やがて実物をみているような克明な描写で、立体感のある写生画の確立にいたります。
それは京都画壇で絶大な人気となりました。
《雪松図屏風》右隻
18世紀後半 三井記念美術館(東京) 国宝
これは鈴木春信の画で、眼鏡絵を除く様子を描いています。
西洋画の遠近法を応用して描いた風景などを、「覗き眼鏡」という凸レンズを嵌めた箱を通して見ると、立体的にみえるというものです。
3級 過去問/Q.218
《南天雄鶏図》(《動物綵絵》より)
1757-66年 絹本著色
全30幅 141.8~142.9×79~79.8㎝
宮内庁 三の丸尚蔵館(東京)
法堂 重要文化財
相国寺(しょうこくじ)は、京都にある臨済宗相国寺派大本山の寺院です。
《雪松図屏風》右隻
18世紀後半 三井記念美術館(東京) 国宝
京都の青物問屋の息子で、家業を離れてひたすら絵に打ち込みました。庭に鶏を放して、写生に没頭したエピソードは有名です。
若冲40代のとき、鋭い観察力と濃厚な彩色技法で描いた連作が《動植綵絵》(どうしょくさいえ)です。
4級のQ.81にも出てきました。
3級 過去問/Q.219
《蝦蟇・鉄拐仙人図》(がま・てっかいせんにんず)
ボストン美術館
曾我蕭白(そがしょうはく/1730-81)も、若冲同様、奇想の画家と呼ばれます。
見るからに異彩を放つ画風で、蕭白自身も実生活で数々の奇行や逸話を残しています。
Q.215、216に出てきた、南画の池大雅とは仲が良く、親しく交流をしていたそう。
江戸時代中期には、ざまざまな美術に、個性的な作家の活躍がみられます。
蕭白においては贋作も多かったようで、それだけ人気が高かった証拠です。
変わったものほど 魅かれますよね。
3級 過去問/Q.220
《不忍池図》
1770年代 絹本着色 8.5×132.5㎝
秋田県立近代美術館蔵 重要文化財
小野田直武(おのだなおたけ/1750-80)は、秋田藩角館城代に仕えていた武士の子として生まれます。子どもの頃より絵の才能に恵まれていました。
1773年、23歳の時、秋田に来ていた平賀源内と出会い、洋画の手ほどきを受けます。それをきっかけに江戸へ。
源内の友人である杉田玄白らが訳した『解体新書』の挿絵を担当しました。
はじめに出てきた風景画は、江戸の名所、上野の「不忍池」(しのばずのいけ)です。
直武は、日本画と西洋画を融合した画風を確立し、洋画派の1つ「秋田蘭画」の一角を担いました。
そしてこの直武に学んだ絵師が、司馬江漢(しばこうかん/1747-1818)です。
《三囲景》1783年
司馬江漢は、正遠近法を用いて風景画を描き、日本で初めて銅版画を制作しました。
油絵にも取り組んで、新たなジャンルを切り開いた作家です。
この《三囲景》(みめぐりのけい)に描かれた川は、隅田川です。
実際の風景とは左右逆に描かれていて、反射式覗き眼鏡で覗いた時に、本来の景色を鑑賞できるようになっています。
すごいですね!
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編 株式会社幻冬舎 2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019