美術検定3級 過去問/Q.212~214(江戸時代前期の美術2)

江戸時代初期の風俗図《風速図(彦根屏風)》に関する説明で、まちがっているのはどれですか?
① 漢画の伝統的な主題である「琴棋書画」が描かれている
② 作者は俵屋宗達である
③ 能のストーリーが反映されているという説がある
④ 現在、彦根城博物館に収蔵されている
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.108
彦根屏風

《彦根屏風》1624-44年
彦根城博物館(滋賀)  国宝

答え ② 作者は俵屋宗達である

間違っているのは作者です。この作品の作者は不明です。

《風俗図(彦根屏風)》(ひこねびょうぶ)には、印章・落款がありませんが、確かな技術に裏打ちされており、狩野派の絵師による、密やかな仕事ではないかと考えられています。

①の答えにあります「琴棋書画」(きんきしょが)とは、「琴を弾いて 囲碁を打ち 書を書いて 絵を描く」ということで、中国では四芸と呼ばれ、文人の嗜みとされました。

この《彦根屏風》の中では、その四芸が、当時の日本の俗なものに置き換えられています。

彦根屛風 詳細

 琴 座頭の弾く三味線
 棋 若衆と遊女が興じる双六
 書 遊女がしたためる書
 絵 背景の屏風絵

彦根屛風 詳細
彦根屛風 詳細

このように、題材を古典文学古事から取って、時代を超えて当世風に表現する手法を「見立て」といいます。別のものに置き換えて表現することですね。

わかりやすところでは、枯山水なども、白砂や小石の文様で、水の流れを「見立て」ていますね。

考えてみると、和歌も俳句も歌舞伎も…  日本の芸術の分野は、見立てがいっぱいです。

彦根屛風 詳細

こちらの男性… 何しているのか気になりますね。

それにしても着物のデザインも、いろいろオシャレで、文様が見事に描かれています。

3級 過去問/Q.213

下図の《鶴図下絵和歌巻》は合作です。作者は俵屋宗達と、もう1人はだれですか?
① 松花堂昭乗
② 小野道風
③ 本阿弥光悦
④ 良寛
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.110
本阿弥光悦・俵屋宗達《鶴図下絵和歌巻》部分

《鶴図下絵和歌巻》(部分)
18世紀(江戸時代) 紙本墨画淡彩
57.2×103㎝ 個人蔵 重要文化財

答え ③ 本阿弥光悦
本阿弥光悦

こちらの男性… 何しているのか気になりますね。

本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)は、刀剣の研ぎ・浄拭・鑑定を家職とする本阿弥家の分家生まれです。

近衛信伊(このえのぶただ)、松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)とともに「寛永の三筆」の1人で、蒔絵や陶芸も残しています。

本阿弥光悦・俵屋宗達《鶴図下絵和歌巻》部分

この《鶴図下絵和歌巻》(つるずしたえわかかん)は、宗達が描いた千羽鶴の上に、光悦三十六歌仙の和歌を散らした作品です。

因みに「三筆」(さんぴつ)とは、日本の書道史上の能書のうちで、最も優れた3人のこと。
平安時代初期の、空海・嵯峨天皇・橘逸勢の3人がはじまりで、寛永の三筆黄檗の三筆幕末の三筆明治の三筆と、違う時代にも、それぞれ活躍した3名がいます。

寛永の三筆の残りの2人は、

近衛信伊(このえのぶただ)
近衛信伊
松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)
松花堂昭乗

「松花堂」とは、晩年に構えた草庵の名称で、松花堂弁当の名も これに由来するようです。

三筆について詳しくはこちらを👇

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3級 過去問/Q.214

《風神雷神図屏風》は、江戸時代、ある画家たちによって描き継がれた絵画主題です。その画家群はどれでしょう?
① 土佐光則-土佐光起-土佐光成
② 俵屋宗達-尾形光琳-酒井抱一
③ 狩野光信-狩野探幽-狩野常信
④ 歌川豊春-歌川豊国-歌川国貞
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.110
tawaraya-sotatsu-wind-god-and-thunder-god

《風神雷神図屏風》
17世紀前半 紙本金地著色 二曲一双
157×173㎝ 建仁寺(京都)

答え ② 俵屋宗達-尾形光琳-酒井抱一

俵屋宗達は、俵屋という絵屋を経営していた、町の絵師でした。

そして琳派の祖ですね。
宗達から、尾形光琳酒井抱一と続く琳派は、直接の師弟関係を持ちません。時代を隔てながら、私淑(ひそかに師と仰ぐこと)によって受け継がれた画派です。

とりわけ宗達の代表作である、建仁寺《風神雷神図屛風》は、琳派芸術の規範となっています。

作品の詳細は、4級Q.78を!

尾形光琳(おがたこうりん)
ogata-korin-wind-god-and-thunder-god

《風神雷神図屏風》 東京国立博物館蔵 重要文化財

酒井抱一(さかいほういつ)
酒井抱一《風神雷神図屏風》

《風神雷神図屏風》 出光美術館

酒井抱一は宗達ではく、光琳の作品を模写しています。

光琳と抱一は 4級Q.86で、もう少し詳しく取り上げています。

町人層から世に出る作家も生まれ、江戸時代の美術が豊かになっていきますね。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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