美術検定3級 過去問/Q.75~77・83(新古典主義)

新古典主義に関する説明で正しいものは?
① ピクチャレスクという考え方が用いられ、多くの風景が描かれた。
② 感覚を重んじ、華麗で繊細な作品が多く制作された。
③ 古代ギリシャ・ローマの理想美を規範とし、理性を重んじた。
④ ウジェーヌ・ドラクロワが代表的な画家の1人である。
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.48
ジョセフ・マリー・ヴィエン アモル(クピド)を売る女性

《アモル(クピド)を売る女性》
1763年 油彩・キャンヴァス
117×140㎝ フォンテーヌブロー宮殿(フランス)  

答え ③ 古代ギリシャ・ローマの理想美を規範とし、理性を重んじた。

新古典主義の始まりを飾るのは、

ジョセフ=マリー・ヴィアン(1716-1809)
ジョセフ=マリー・ヴィアン
ジョゼフ・デュプレシによる肖像画 1784年

ルイ16世の筆頭宮廷画家です。
ヴィアンの弟子に、後に新古典主義を代表する画家、ジャック=ルイ・ダヴィッドがいます。

上の作品《アモル(クピド)を売る女性》は、キューピッドの訪問販売です。(えー、売れるの!?  買えるの!?  って感じですね!)

衣服も建築様式も、古代ローマ美術の構図や、人体像を利用して描かれています。

18世紀末のヨーロッパでは、フランス革命によって、王や貴族たちは市民階級に勢力を奪われます。

美術においても ロココは否定され、ギリシャ・ローマの美術を規範とする「新古典主義」が生まれます。

その背景には、火山噴火で滅亡したと言われていた、ポンペイ遺跡の発掘がありました。研究が盛んになり、古代が見直されていたんですね。

3級 過去問/Q.76

ジャック=ルイ・ダヴィッドが1787年に描いたこの作品のタイトルは?
① ヘラクレスの死
② マラーの死
③ ナポレオンの死
④ ソクラテスの死
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.48
ダヴィッド ソクラテスの死

1787年 油彩・キャンヴァス
129.5×196.2㎝ メトロポリタン美術館(NY)

答え ➃ ソクラテスの死
新古典主義を代表する画家、
ジャック=ルイ・ダヴィッド(1748-1825)
ジャック=ルイ・ダヴィッド 自画像

《自画像》
1794年 油彩・キャンヴァス
81×64㎝ ルーブル美術館(パリ)

《ソクラテスの死》は、古代ギリシアの偉大な哲学者ソクラテスが、牢獄で威厳ある死を遂げた最後の日を描いています。

ダヴィッドは、一つ前の問題のところで取り上げたヴィアンの弟子でしたね。

1774年26歳の時、コンクールでローマ賞を受賞します。
こちらがその受賞作品。

ダヴィッド アンティオコスとストラトニケ

《アンティオコスとストラトニケ
1774年 油彩・キャンヴァス
120×155㎝ エコール・デ・ボザール(パリ)

受賞特典のイタリア留学で、ラファエロや古代の歴史・文化に触れ、新しい歴史画を確立します。

ダヴィッド ホラティウス兄弟の誓い

《ホラティウス兄弟の誓い》
1784年 油彩・キャンヴァス
323×245㎝ ルーブル美術館(パリ)

ダヴィッド マラーの死

《マラーの死》
1793年 油彩・キャンヴァス
162×128㎝ ベルギー王立美術館(ブリュッセル)

ダヴィッド サン=ベルナール峠を越えるボナバルト

《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》
1801
年 油彩・キャンヴァス
261×221㎝ マルメゾン城(リュエイユ=マルメゾン)

ダヴィッド ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠

《ナポレオン一世の戴冠式と皇妃ジョセフィーヌの戴冠》
1805-1807年 油彩・キャンヴァス
6.21×9.79m ルーブル美術館(パリ)

やがて新古典主義の指導的存在として、フランスを超えて広く認められるようになります。

3級 過去問/Q.77

アングルが描いたオリエント風の横たわる裸婦像のタイトルは?
① エステルの化粧
② ヴィーナスの化粧
③ トルコ風呂
④ グランド・オダリスク
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.48
アングル グランド・オダリスク

1814年 油彩・キャンヴァス
89×162.5㎝ ルーブル美術館(パリ)

答え ➃ グランド・オダリスク
ドミニク・アングル(1780-1867)
ドミニク・アングル
《自画像》1804年

精密なデッサンに、計算された構図。
新古典主義の美しい描写を、徹底して追求しました。

とはいえ、この《グランド・オダリスク》のように、人体においては古典主義的な理想美よりも、個人的な美意識を優先しています。

また下の作品《トルコ風呂》のように、東方趣味の優雅な雰囲気を表現して、道徳や英雄崇拝とは無関係な美を追求。ロマン主義よりでもありました。

アングル トルコ風呂

《トルコ風呂
1863年 油彩・キャンヴァス
108×108㎝ 
ルーブル美術館(パリ)

4級Q.37も《グランド・オダリスク》に関する問題でした。

その他、フランス

アントワーヌ=ジャン・グロ(1771-1835)
アントワーヌ=ジャン・グロ
《自画像》1791年

ダヴィッドの弟子であり後継者です。

ジャン・グロ アイラウの戦場のナポレオン

《アイラウの戦場のナポレオン》
1808年 油彩・キャンヴァス
521×784㎝ ルーブル美術館(パリ)

アンヌ・ルイ・ジロデ(1767-1824)
ジロデ
《自画像》

ジロデもダヴィッドの弟子です。
ロマン主義を先取りする明暗法で、光の描写がきれいです。

ジロデ ナポレオンの指揮官を迎えるオシアン

《ナポレオンの指揮官を迎えるオシアン》
1802年 油彩・キャンヴァス
192×184㎝ マルメゾン城(リュエイユ=マルメゾン)

新古典主義を彫刻で表現したのが、イタリア

アントニオ・カノーヴァ(1757-1822)
カノーヴァ
《自画像》1790

ギリシャ・ローマ彫刻の理想美と、近代彫刻の複雑な構成とを結びつけました。

カノーヴァ アモールとブシュケー
カノーヴァ アモールとブシュケー 詳細

《アモールとプシュケー》 
1787-1793年 大理石
155×168㎝ ルーブル美術館(パリ)

3級 過去問/Q.83

古典的なモチーフの白いレリーフをあしらったジャスパーウェアという陶器を生み出したイギリスの工場は?
① ウェッジウッド
② ミントン
③ フッチェンロイター
④ ロイヤル・コペンハーゲン
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.50
フラックスマン ジャスパー・ウェア
ジャスパー・ウェアと呼ばれる浮彫
答え ① ウェッジウッド

工芸の分野では、1759年設立されたイギリスのジョサイア・ウェッジウッドの陶器工場が、新古典主義の普及に貢献しました。

ジョン・フラックスマン(1755-1826)らのデザイナーを起用。古代品の図集からモチーフを採り入れます。

浮き彫りを施された壺や皿、装飾用陶板が特徴です。

フラックスマン
ジョン・フラックスマン《自画像》
フラックスマン 壺 ホメロス礼讃

《壺(ホメロス礼讃)》
1786年頃 大英博物館 

ある程度システム化された生産と流通によって市場に出まわり、新古典主義的な美意識が広まりました。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019
サンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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