美術検定3級 過去問/Q.221~224(江戸時代中・後期の美術2)

次の浮世絵シリーズを制作年代が古い順に並べると、どれが正しいですか?
A. 歌川広重「名所江戸百景」
B. 喜多川歌麿「婦人相学十躰」
C. 葛飾北斎「富嶽三十六景」
D. 鈴木春信「浮世美人寄花」
① A→B→C→D
② B→A→D→C
③ C→D→A→B
④ D→B→C→A
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.112
答え ④ D→B→C→A

古い順にいきます。

鈴木春信「浮世美人寄花」(うきよびじんはなによす)

1769-70年

はじめは墨1色だった浮世絵も、やがて「錦絵」とよばれる多色摺りへ。
鈴木春信は「錦絵」の成立にもかかわり、みごとな中間色で表現しています。

鈴木春信《浮世美人寄花》

《山しろや内はついと 萩》 東京国立博物館

喜多川歌麿「婦人相学十躰」(ふじんそうがくじってい)

1792-93年

微妙に表情を変える美人画を描き、この連作で歌麿は一躍人気絵師となります。

喜多川歌麿「夫人相学十躰」

《浮気の相》

4級Q.89 も参考に!

葛飾北斎「富嶽三十六景」(ふがくさんじゅうろっけい)

1831-34年

葛飾北斎《神奈川沖浪裏》

《十便十宜図帖 十宜帖・宜暁》

歌川広重「名所江戸百景」

1856-58年

歌川広重《大はしあたけの夕立》

《大はしあたけの夕立

東海道五十三次」広重ですね。
4級Q.90 Q.91で、北斎広重を取り上げています。

他には、一番初めに出た鈴木春信よりも前に、

菱川師宣(ひしかわもろのぶ/?-1697)がいます。

菱川師宣《見返り美人図》

《見返り美人図17世紀後半

浮世絵というと、一般的には版画ですが、これは肉筆の作品です。
4級Q.80 で取り上げています。

東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)もいます。

東洲斎写楽《三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛》

《三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛》1794年

写楽は、歌舞伎役者の顔の特徴を、強調して描きました。

3級 過去問/Q.222

鈴木春信の解説として、ふさわしいものはどれですか?
① 木版本の挿絵から絵の部分を独立させ、新たな木版画の世界を拓いた
② 伝統的な素材を用いながら、西洋画法を駆使した秋田蘭画を残した
③ 錦絵の成立にもかかわり、中間色による瀟洒な作風で知られる
④ 江戸時代後期に活躍し、武者絵で人気を集めた
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.112
鈴木春信《中納言朝忠(文読み)》

鈴木春信中納言朝忠(文読み》

答え ③ 錦絵の成立にもかかわり、中間色による瀟洒な作風で知られる

ひとつ前の問いでも出てきましたね。
鈴木春信がかかわったとされる「錦絵」の誕生は、18世紀後半です。

江戸の風流人たちが行っていた絵暦(カレンダー)交換会が盛んになり、豪華な多色摺版画が作られるようになりました。

春信はやまと絵を意識した、やわらかな色合いと、柳腰の美人たちの情景画で人気を博しました。

4級Q.88 も参考に!

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3級 過去問/Q.223

幕末の浮世絵師・歌川国芳についての解説で正しいものはどれですか?
① 女性の心理を写し出した美人画に秀でた
②《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》のような戯画や武者絵を得意とした
③《東海道五十三次》をはじめとする風景画に本領を発揮した
④ 写実的な役者絵で人気を博したが、わずか数か月で制作をやめた
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.114
答え ②《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》のような戯画や武者絵を得意とした
utagawa-kuniyoshi-at-first-glance-he-looks-fiarce

《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》1847年頃

歌川国芳(うたがわくによし/1798-1861)は、北斎や広重の後、江戸末期に活躍しました。

初代、歌川豊国の弟子です。(創始者は歌川豊春
役者絵・美人画の歌川国貞(くにさだ)や、所絵(風景画)の歌川広重とともに、幕末の浮世絵を牽引しました。

奇想天外な戯画や、世相を鋭く皮肉った風刺画を描き、江戸市民に強く支持されました。

歌川国貞《吉原時計 亥ノ刻》

歌川国貞《吉原時計 亥ノ刻》

kunisada-ninja-and-prince-genji

歌川国貞今源氏綿絵合 須磨十二》

4級Q.92でも取り上げています。

3級 過去問/Q.224

浮世絵版画のプロデューサー的な役割を担ったのは、なんと呼ばれる人たちですか?
① 絵師
② 彫師
③ 摺師
④ 版元
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.114
答え ④ 版元

版元(はんもと)です。
浮世絵版画は、絵師彫師(ほりし)と 摺師(すりし)による共同作業です。その工程を統括したのが版元です。

版元はまず、絵の題材を決定して絵師を選定し、全体を監督しながら、版画を作成して販売します。

蔦重」(つたじゅう)こと、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/1750-97)は、代表的な版元でした。

蔦屋重三郎の発行人印

蔦屋重三郎の発行人印

蔦屋重三郎は、歌麿写楽の才能を発掘し、半身像顔を大きく描いた大首絵」(おおくびえ)を開発して描かせました。

喜多川歌麿 大首絵

喜多川歌麿

東洲斎写楽《四代目市川海老蔵 竹村貞之進役》

東洲斎写楽

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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