美術検定3級 過去問/Q.191~195(南北朝・室町時代前期の美術)

下図の《慕帰絵》は浄土真宗のある高僧の生涯を描いた絵巻です。その僧侶はだれですか?
① 親鸞
② 覚如
③ 蓮如
④ 証如
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.100
藤原隆章・隆昌《慕帰絵》
[慈俊] [著] ほか『慕帰繪々詞 10巻』巻5,鈴木空如,松浦翠苑 模,大正8-9 [1919-1920]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2590852 (参照 2023-10-09)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2590852/1/24

藤原隆章・隆昌《慕帰絵》(部分)
1351年 紙本著色 前10巻
各32×812~1482㎝ 西本願寺(京都)

答え ② 覚如

本願寺教団の基礎を築いた覚如(かくにょ)です。浄土真宗を開いた親鸞の曾孫で、親鸞が亡くなってから8年後に生まれています。

この慕帰絵》(ぼきえ)は、覚如の伝記を描いた絵巻で、10巻からなります。

描いたのは南北朝時代の画家、藤原隆章たかあき(第2・5・6・8を担当)と、藤原隆昌たかまさ(第3・4・9・10を担当)。

1と7は後世に紛失し補作されています。

当時の建物や調度、風俗の様子がよく描かれています。

《慕帰絵》
[慈俊] [著] ほか『慕帰繪々詞 10巻』巻1,鈴木空如,松浦翠苑 模,大正8-9 [1919-1920]. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2590848 (参照 2023-10-09)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2590848/1/29

3級 過去問/Q.192

室町時代の文化・美術にとくに大きな影響を与えた仏教の宗派はどれですか?
① 天台宗
② 真言宗
③ 律宗
④ 禅宗
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.100
八角三重塔 安楽寺(長野)
Rsa, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Anrakuji_Hakkakusanjyuunotou_BessyoOnsen.jpg
八角三重塔 安楽寺(長野)
答え ④ 禅宗

禅宗は日本では、
 臨済宗(りんざいしゅう)と
 曹洞宗(そうとうしゅう)と
 黄檗宗(おうばくしゅう)の 総称のこと。

特に座禅を重んじて、達磨が宋祖です。

禅宗の寺院のことを禅林(ぜんりん)といいますが、室町時代はこの禅林のネットワークが作られ、国内外を問わず盛んな交流を見せました。

この安楽寺(上田市)の三重塔は、八角中国風です。

下図は、山口県下関市の功山寺(こうざんじ)の仏殿です。現存する日本最古の禅宗建築です。

功山寺仏殿
Wiki708 at Japanese Wikipedia, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kozanji_Temple_(Shimonoseki).JPG
功山寺 仏殿 1327年 国宝

この建築様式は唐様ともいわれ、全体的に木割(きわり)が細く軒の反りの大きさなど、装飾的な造作が特徴です。

東京の東村山市の正福寺地蔵堂も、禅宗様が継承されており、都をはるかに離れた地にも、その広がりを確認できます。

正福寺 東村山市
江戸村のとくぞう (Edomura no Tokuzo), CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E6%AD%A3%E7%A6%8F%E5%AF%BA%EF%BC%8D%EF%BC%91.JPG

正福寺 地蔵堂(東村山市) 国宝

従来の寺院建築様式の和様、鎌倉時代初期の大仏様(だいぶつよう)、そしてこれらに対して禅宗様(ぜんしゅうよう)と呼ばれます。

この時代、国内外を問わず交流が盛んでした。多くの僧が中国に修業に行き、帰国後は中国式の規範のもと、後進を育てました。

黙庵(もくあん)
黙庵《四睡図》

《四睡図》(しすいず)
中国画に近い水墨です。

無等周位(むとうしゅうい)
無等周位《夢窓疎石像》

《夢窓疎石像》 14世紀頃

こちらは中国風というより日本化していますね。

禅林はこの時代、文化の拠点として機能していました。

3級 過去問/Q.193

室町時代初期、足利義満が京都の北山に造営した別荘で、のちに禅寺となった建築物の通称はなんですか?
① 金閣寺
② 銀閣寺
③ 護国寺
④ 後醍寺
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.100
金閣寺
Kakidai, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kinkaku-ji_2015.JPG
答え ① 金閣寺

金閣寺の正式名称は、鹿苑寺(ろくおんじ)です。

開基(創設者)である室町幕府3代将軍足利義満の、法号鹿苑院殿(ろくおんいんどの)にちなむ寺名です。

金閣はこの寺の中心的な建物で、応仁の乱では唯一寺内で焼失を免れますが、

焼失前の金閣
National Museum of Denmark from Denmark, No restrictions, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kinkakuji_Kyoto,_Japan._(10795616574).jpg
焼失前の金閣

1950年の放火によって、焼失しています。

焼失後の金閣寺 1950年7月2日
焼失直後の金閣(1950年7月2日)
現在の建物はその5年後に復元されたものです。
金閣寺
AllyUnion, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Golden_Pavillion_2010_03_29_41.jpg
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3級 過去問/Q.194

下図のような、画に詩が書かれた、室町時代の掛軸をなんというでしょう?
① 詩画軸
② 書軸画
③ 画中書
④ 書画一致
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.100
《柴門新月図》(部分)1405年 
Khssm, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Saimon_jpg.jpg
《柴門新月図》(部分) 1405年 紙本墨画 129.4x43.3 藤田美術館(大阪)国宝
答え ① 詩画軸

詩画軸(しがじく)は、縦長の掛軸の画中に、(解釈や論評・共感など)が加えられたものです。

多くの場合、絵は画面下の方に寄せられて、文字は上の方に配されます。

もともと、元時代の文人たちの間で行われていたものですが、日本でも室町時代に、禅僧たちの間で流行しました。

詩画軸主題は3つに大別されます。

詩意図(しいず)/ 中国の古典・故事の世界を描いたもの。
設問の《柴門新月図》(さいもんしんげつず)は、この詩意図で
現存する最も古い詩画軸です。

送別図」/ 旅立つ友を激励して惜別の想いを描いたもの。
送別図《帰郷省親図》(常磐山文庫)
《帰郷省親図》(常磐山文庫)

書斎図」/ 禅僧の書斎を大自然の中に理想化したもの。
代表作《江天遠意図》は、根津美術館のサイトで👇

と、種類がありますが、見ただけでは区別できないですね。

3級 過去問/Q.195

能阿弥・芸阿弥・相阿弥らが美術史上で果たした役割はなんでしょう?
① 美術コーディネーターとして当時の文化の骨組みを築いた
② 朝廷の専属絵師として、やまと絵を発展させた
③ 僧でありながら、新仏像の造形を生み出した
④ 画家として京都で学んだ画風を鎌倉で広めた
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.102
芸阿弥《観瀑図》

芸阿弥《観瀑図》
1480 根津美術館 重要文化財

答え ① 美術コーディネーターとして当時の文化の骨組みを築いた

能阿弥(のうあみ)の子が、芸阿弥(げいあみ)で、その子が相阿弥(そうあみ)です。

この三代同朋衆(どうぼうしゅう)として、足利将軍家に仕えました。

同朋衆とは、将軍の近くで雑務や芸能に携わるものたちのこと。
美術のコーディネーターを務め、三代それぞれが優れた絵師たちでした。

ちなみに他の答えは、

朝廷の専属絵師として、やまと絵を発展させた ➝ 絵所預となった土佐派

③ 僧でありながら、新仏像の造形を生み出した 明兆(東福寺で新しい仏画の造形を生み出す)

画家として京都で学んだ画風を鎌倉で広めた 祥敬(鎌倉五山の建長寺の画家で、芸阿弥に学び関東の中央画壇の画風を広める)

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013

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