美術検定3級 過去問/Q.181~186(平安時代後期の美術)

定朝が1053年に制作した《阿弥陀如来坐像》はどの寺院にありますか?
① 法隆寺
② 平等院
③ 浄土寺
④ 知恩院
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.94
阿弥陀如来坐像 平等院

《阿弥陀如来坐像》 約H284㎝

答え ② 平等院
平等院鳳凰堂
平等院鳳凰堂
Martin Falbisoner, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Phoenix_Hall,_Byodo-in,_November_2016_-01.jpg

平等院は、11世紀に藤原頼通別荘として建てたものを、に改めたものです。
浄土式伽藍と呼ばれています。美しいですね~

中堂(現在の鳳凰堂)に安置された《阿弥陀如来坐像》を造ったのは、仏師である定朝(じょうちょう)です。

この坐像は、定朝の確証ある唯一の遺作で、用いられた技法は寄木造(よせぎづくり)です。身、腕、脚など、別々に彫って組み合わせています。

全体的に柔らかな曲線で、彫りも浅く流れる衣文穏やかな表情
その優美な表現は平安後期特有のもので、定朝様(じょうちょうよう)として、仏像彫刻の主流となりました。

3級 過去問/Q.182

神社や仏寺の創建の由来や本尊の霊験などを描いた絵巻を何といいますか?
① 伝承絵巻
② 説話絵巻
③ 縁起絵巻
④ 創世絵巻
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.96
信貴山縁起絵巻

《信貴山縁起絵巻》山崎長者の巻(部分)
31.7x879.9㎝

答え ③ 縁起絵巻

縁起絵巻は、対象とする社寺の権威を示し、信仰を集めることを目的に制作されました。

平安末期の絵巻物は、主に2つのジャンルに分かれます。
説話絵巻」と「物語絵巻」です。

説話絵巻」は、仏教説話や民衆の間で語り継がれた話をまとめたもので、この《信貴山縁起絵巻》(しぎさんえんぎえまき)は、信貴山を再興した修行僧の命蓮(みょうれん)にまつわる説法で、「説話絵巻」のジャンルに含まれます。

(「物語絵巻」については、次の問題で!)

他 「説話絵巻」の代表作

《伴大納言絵巻》(ばんだいなごんえまき)
伴大納言絵巻

「応天門炎上」部分

《鳥獣人物戯画》(ちょうじゅうじんぶつぎが)
世界最古の漫画とも称されます。
鳥獣人物戯画

何紙にもわたる画面に、出来事の変化が描写されて、躍動感あふれる表現です。

3級 過去問/Q.183

次の絵巻のうち、物語絵巻に属する平安時代の作品はどれでしょう?
①《信貴山縁起絵巻》
②《蒙古襲来絵詞》
③《北野天神縁起絵巻》
④《源氏物語絵巻》
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.96
源氏物語絵巻 竹河

《竹河》

答え ④《源氏物語絵巻》

こちらがもう一つのジャンル物語絵巻です。文学を題材に絵巻化したものです。

《源氏物語絵巻》は、華やかな色彩や細密な描写で、『源氏物語』の世界を情緒的に表現しています。

金銀の装飾の雅さとともに、吹抜屋台(ふきぬきやたい)という、建物の屋根と天井を描かない表現法や、引目鉤鼻(ひきめかぎばな)という、細長いひとすじの目と、くの字型の鼻、赤い小さな点で唇を表現する日本独特の描写です。

12世紀はまさに絵巻の黄金時代でした。

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3級 過去問/Q.184

下図のようなそれまでの中国調の仏画に代わって、平安時代後期の10隻後半あたりから登場した日本の風物や風俗を題材にした絵画を何といいますか?
① 四季絵
② 京絵
③ 世俗絵
④ やまと絵
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.96

《両部大径感得図》(部分) 1136年 紙本着色 2幀
各179×143㎝ 藤田
美術館(大阪)国宝

答え ④ やまと絵

やまと絵は、平安時代に発達した日本独自の絵画のことで、倭絵大和絵とも表記されます。

日本の絵画史のうち、宗教画を除く鑑賞的絵画である風景・花鳥画・物語・人物・風俗画などにわたって、平安時代以来用いられています。

中国風の「唐絵」(からえ)に対する呼称です。

この《両部大径感得図》(りょうぶだいきょうかんとくず)は、密教の根本を示す両界曼荼羅のよりどころである大日経と、金剛頂経との伝来をめぐる説話を描いた唐絵です。

894年に遣唐使が廃止され、そこから日本独自の文化が花開きます。仮名文字が普及し、和歌物語などが生まれました。

一つ前の問題に出てきた《源氏物語絵巻》《信貴山縁起絵巻》などがやまと絵ですね。

日本の風物や風俗を、雲や霞や水流などで平面的・並列的につなげて、散らし描かれており、とても優美です。

3級 過去問/Q.185

唐絵とやまと絵の違いについての説明で、正しいものはどれですか?
① 墨一色で描かれた絵が唐絵、多色により鮮やかに描かれた絵がやまと絵
② 中国的主題の絵が唐絵、日本的主題の絵がやまと絵
③ 中国からの輸入画材を使用した絵が唐絵、日本の画材を使用した絵がやまと絵
④ 渡来人が描いた絵が唐絵、日本人が描いた絵がやまと絵
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.96
山水屏風

《山水屏風》
京都国立博物館 国宝

答え ② 中国的主題の絵が唐絵、日本的主題の絵がやまと絵

唐絵(からえ)は、平安時代以来使われた絵画用語で、本来はからもたらされた絵、あるいは、中国を題材として描いた日本の絵をさします。

それに対して日本の風景や風俗を描いた絵がやまと絵ですね。

東寺に伝来した《山水屏風》(せんずいびょうぶ)は、中国の詩に基づく唐絵ではありますが、春の風景が情緒豊かに描かれ、背後には穏やかな海景が広がっていて、和様の表現が取り入れられています。

3級 過去問/Q.186

下図の仏画に描かれているのは何という菩薩ですか?
① 文殊菩薩
② 観音菩薩
③ 普賢菩薩
④ 弥勒菩薩
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.96
普賢菩薩像

12世紀(平安時代)
紙本着色 159.1×74.5㎝
東京国立博物館 国宝

答え ③ 普賢菩薩

普賢菩薩(ふげんぼさつ)は、法華経を信仰するものを救うために、白い象に乗って出現すると言われています。

この東大寺の釈迦三尊像のように、文殊菩薩(智慧の神様)とともに、釈迦如来の脇侍として並ぶことが多いです。

釈迦三尊像 東大寺

釈迦三尊像 東大寺

右脇侍(向かって左)が象に乗った普賢菩薩
左脇侍(向かって右)が獅子に乗った文殊菩薩です。

因みに法隆寺金堂釈迦三尊像は、

horyuji-sakya-trinity-of-kondo

両脇にいるのは、薬王菩薩薬上菩薩です。

兄弟の菩薩で、ともに良薬を人々に与え、心と身体の病気を治したと言われます。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
芸術教養シリーズ1 信仰、自然との関わりの中で 日本の芸術史 造形篇I 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013

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