3級 過去問/Q.52
マニエリスムは、盛期ルネサンスの後、イタリアで展開した美術様式です。
16世紀の初めから17世紀初頭にかけて、ヨーロッパの宮廷を中心に広まりました。
「様式・手法」を意味する「マニエラ」が語源です。
現在使われている「マンネリズム(マンネリ)」も、ここから派生した言葉です。
完成された盛期ルネサンス美術の「調和」をあえて崩し、技法をこらして人口的な美を追求しています。
細長く伸ばされた人体や、大胆な構図、鮮やかな色彩などが特徴で、明暗や遠近を強調した動きのある構成は、バロック様式へと繋がる要素です。
👇これら、ミケランジェロ後期の作品です。
《勝利の天才》1532-34年 大理石 ヴェッキオ宮殿(フィレンツェ)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tomb_of_Giuliano_de%27_Medici_(casting_in_Pushkin_museum)_by_shakko_04.jpg
ミケランジェロ
《昼》
大理石 メディチ家礼拝堂(フィレンツェ)
ひねりを加えた身体表現は、ミケランジェロ独特で「蛇状曲線体」と呼ばれ、古典的比例さえ超える「優美」だと評価されていました。
またこの時代、王侯貴族や学者などのインテリ層に知的な作品を求められ、寓意画が多く描かれました。
3級 過去問/Q.53

《十字架降下》
1525-28年頃 テンペラ
313×192㎝ サンタ・フェリチタ聖堂 カッポーニ礼拝堂(フィレンツェ)
描いたのは、ヤコポ・ダ・ポントルモ(1494-1557)。

鮮やかで冷たい色使や、重量感のない謎めいた人物、曖昧な空間表現が特徴です。
盛期ルネサンス美術を模範としつつ、異なる独自の表現を模索しました。
こちらは、ポントルモと同じ工房で修業した、ロッソ・フィオレンティーノ(1494-1540)の《十字架降下》。

ヴァザーリによるロッソ

《十字架降架》
1521年 油彩・木
375×196㎝ ヴォルテラ美術館
3級 過去問/Q.54

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Giambologna_raptodasabina.jpg
《サビニの女の略奪》
1579-83年 大理石
H410㎝ ロッジア・ディ・ランツィ(フィレンツェ)
マニエリスムの彫刻家、ジャンボローニャ(1526-1608)。

フランドルの生まれですが、ローマで古代彫刻やミケランジェロを研究。その後フィレンツェで活動しています。
この彫刻は、大理石の塊から彫り出されたもの!
どの角度から見ても、3人がらせん状につらなっており、ミケランジェロのねじれによる情念の表現が受け継がれています。
3級 過去問/Q.55

《無原罪のお宿り》
1608-13年 油彩・キャンヴァス
348×174.5㎝ サンタ・クルス美術館(スペイン)
エル・グレコ(1541-1614)は、「ギリシア人」を意味するあだ名で、本名はドメニコス・テオトコブーロスです。

《男の肖像》おそらく自画像
1595~1600年頃 油彩・キャンヴァス
52.7×46.7㎝ メトロポリタン美術館(NY)
クレタ島で生まれ、イタリアでティツィアーノから色彩を学びます。16世紀後半からスペインのトレドへ。
独特の縦に引き伸ばされた人体描写と、動きのあるタッチを用いて、神秘的な宗教画を描いています。《無冤罪のお宿り》は10頭身です!
👇こちらも代表作です。
《ラオコーン》
1610-14 油彩・キャンヴァス 142×193㎝
ナショナルギャラリー(ロンドン)
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019