美術検定3級 過去問/Q.228~230(明治時代の美術1)

日本洋画の創始者とされる高橋由一について述べたものはどれですか?
① 東京美術学校の初代校長を務めた
② フランスに留学した
③ 代表作に《鮭》《豆腐》《花魁》などがある
④ シーボルトの助手を務めた
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.116
高橋由一

高橋 由一

答え ③ 代表作に《鮭》《豆腐》《花魁》などがある

高橋由一(たかはしゆいち/1828-94)は、江戸時代の生まれ。
油絵の普及に生涯を捧げた画家です。

明治の初めに活躍
し、近代絵画の先駆者と言われています。

初めは狩野派を学びますが、西洋の石版画を見て衝撃を受け、30代半ばで洋画家へと転向。蕃書調所画学局やチャールズ・ワーグマンのもとで、油絵を学びます。

(「蕃書調所画学局/ばんしょ しらべしょ ががくきょく」は、幕府直轄の洋学の研究教育機関です。)

代表作の《鮭》は、ほぼ実物大の静物画で、日本近代洋画の始まりを告げる記念碑的作品となっています。

高橋由一《鮭》

《鮭》
油彩・紙 140×46.5センチ
1877年 東京藝術大学大学美術館(重要文化財)

高橋由一《豆腐》

《豆腐》
油彩・キャンヴァス 30×43㎝ 
1876-77年頃 金毘羅宮(香川)

高橋由一《花魁》

《花魁》
油彩・キャンヴァス 77×54.8㎝
1872年 東京藝術大学大学美術館 重要文化財

由一は、1873年日本橋浜町に画塾「天絵楼」(てんかいろう)を開き、84年まで後進を育てました。(後に「天絵舎」「天絵学舎」と改称)

その中には、原田直次郎
原田直次郎《騎龍観音》

原田直次郎《騎龍観音》
1890年 護国寺蔵

日本画家となった川端玉章(かわばたぎょくしょう)などがいます。
川端玉章《四時ノ名勝》

川端玉章《四時ノ名勝》
1899年 三の丸尚蔵館蔵

一応、他の答えは下記のとおりです。

➀ 東京美術学校の初代校長は「岡倉天心」(おかくらてんしん)
➁ フランスに留学したのは「黒田清輝」(くろだせいき)
➂ シーボルトの助手は「川原慶賀」(かわはらけいが)

3級 過去問/Q.229

『イラストレイテッド・ロンドン・ニューズ』の特派員として来日し、多くの日本人に洋画の基礎を伝授したのは、次のうちだれですか?
① アーネスト・サトウ
② チャールズ・ワーグマン
③ ジョルジュ・ビゴー
④ ジョサイア・コンドル
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.116
ワーグマン 挿絵

「大阪城内で徳川慶喜に訓練を披露する英国陸軍第9連隊の兵士」
1867年8月10日のイラストレイテッド・ロンドン・ニュースの挿絵

答え ② チャールズ・ワーグマン
高橋由一《ワーグマン》
Wirgman, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Charles_Wirgman_Diggins_HD.jpg

1つ前の問題にも名前が出てきましたが、ワーグマンはイギリスの画家で、1861年の幕末期に記者として来日しました。
日本のさまざまな様子や事件、風俗を描き残しています。

明治初期にかけて、横浜で風刺雑誌『ジャパン・パンチ』を発行します。

ジャパン・パンチ

1878年7月号表紙

ワーグマンのもとには、髙橋由一の他に、五姓田義松(ごせだよしまつ)や、山本芳翠(やまもとほうすい)など、西洋画を学ぼうとする多くの画家が訪れています。

ワーグマン日本近代洋画の成立に、重要な役割を果たしました。

ポンチ絵」という言葉はこの雑誌に由来します!

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3級 過去問/Q.230

明治時代に木版画・石版画に手を染め、江戸へのノスタルジーを込めつつ、下図のような維新後の東京の新風景を描いた版画家はだれですか?
① 河鍋暁斎
② 橋口五葉
③ 小林清親
④ 林忠正
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.116

《九段坂五月夜》
1880(明治13)年 木版 横大判錦絵
ボストン美術館

答え ③ 小林清親

小林清親(こばやしきよちか/1847-1915)は、明治時代の浮世師です。

小林清親

1877年(30歳)頃

明治維新後、清親もまた、ワーグマンから油絵を学びます。

河鍋暁斎(かわなべきょうさい/1831-89)には日本画を、柴田是真(しばた ぜしん/1807-91)には漆絵を学んでいます。

1876年~81年にかけて発表した風景版画シリーズ《東京名所図》は、従来の浮世絵に、西洋画の遠近法陰影表現をとり入れ、「光線画」(こうせんが)として人気を集めました。

明暗を強調し、それまでの浮世絵とは違ってやさしい色使いです。

小林清親《高輪牛町朧月影》

《高輪牛町朧月影》1879年

小林清親《江戸橋夕暮富士》

《江戸橋夕暮富士》1979年

小林清親《川口善光寺雨晴》

《川口善光寺雨晴》1879年

小林清親《隅田川夜》

《隅田川夜》1881年

清親は文明開化の波の中、江戸から東京へと移りゆく都市景観を描いて、その新しくノスタルジックな画風で、人気絵師となりました。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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