3級 過去問/Q.228
高橋 由一
高橋由一(たかはしゆいち/1828-94)は、江戸時代の生まれ。
油絵の普及に生涯を捧げた画家です。
明治の初めに活躍し、近代絵画の先駆者と言われています。
初めは狩野派を学びますが、西洋の石版画を見て衝撃を受け、30代半ばで洋画家へと転向。蕃書調所画学局やチャールズ・ワーグマンのもとで、油絵を学びます。
(「蕃書調所画学局/ばんしょ しらべしょ ががくきょく」は、幕府直轄の洋学の研究教育機関です。)
代表作の《鮭》は、ほぼ実物大の静物画で、日本近代洋画の始まりを告げる記念碑的作品となっています。
《鮭》
油彩・紙 140×46.5センチ
1877年 東京藝術大学大学美術館(重要文化財)
《豆腐》
油彩・キャンヴァス 30×43㎝
1876-77年頃 金毘羅宮(香川)
《花魁》
油彩・キャンヴァス 77×54.8㎝
1872年 東京藝術大学大学美術館 重要文化財
由一は、1873年日本橋浜町に画塾「天絵楼」(てんかいろう)を開き、84年まで後進を育てました。(後に「天絵舎」「天絵学舎」と改称)
原田直次郎《騎龍観音》
1890年 護国寺蔵
川端玉章《四時ノ名勝》
1899年 三の丸尚蔵館蔵
一応、他の答えは下記のとおりです。
3級 過去問/Q.229
「大阪城内で徳川慶喜に訓練を披露する英国陸軍第9連隊の兵士」
1867年8月10日のイラストレイテッド・ロンドン・ニュースの挿絵
1つ前の問題にも名前が出てきましたが、ワーグマンはイギリスの画家で、1861年の幕末期に記者として来日しました。
日本のさまざまな様子や事件、風俗を描き残しています。
明治初期にかけて、横浜で風刺雑誌『ジャパン・パンチ』を発行します。
1878年7月号表紙
ワーグマンのもとには、髙橋由一の他に、五姓田義松(ごせだよしまつ)や、山本芳翠(やまもとほうすい)など、西洋画を学ぼうとする多くの画家が訪れています。
ワーグマンは日本近代洋画の成立に、重要な役割を果たしました。
「ポンチ絵」という言葉はこの雑誌に由来します!
3級 過去問/Q.230
《九段坂五月夜》
1880(明治13)年 木版 横大判錦絵
ボストン美術館
小林清親(こばやしきよちか/1847-1915)は、明治時代の浮世師です。
1877年(30歳)頃
明治維新後、清親もまた、ワーグマンから油絵を学びます。
河鍋暁斎(かわなべきょうさい/1831-89)には日本画を、柴田是真(しばた ぜしん/1807-91)には漆絵を学んでいます。
1876年~81年にかけて発表した風景版画シリーズ《東京名所図》は、従来の浮世絵に、西洋画の遠近法や陰影表現をとり入れ、「光線画」(こうせんが)として人気を集めました。
明暗を強調し、それまでの浮世絵とは違ってやさしい色使いです。
《高輪牛町朧月影》1879年
《江戸橋夕暮富士》1979年
《川口善光寺雨晴》1879年
《隅田川夜》1881年
清親は文明開化の波の中、江戸から東京へと移りゆく都市景観を描いて、その新しくノスタルジックな画風で、人気絵師となりました。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
芸術教養シリーズ2 飾りと遊びの豊かなかたち 日本の芸術史 造形篇II 栗本徳子編 株式会社幻冬舎 2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019