美術検定3級 過去問/Q.103~105・110(ラファエル前派・象徴主義)

下図を描いた19世紀イギリスのロセッティらが結成した「ラファエル前派」の説明として、最もふさわしい説明は?
① ラファエロ以前の芸術を偽善的なキリスト教精神の権化と批判した
② ラファエロ以前の芸術を理想とし、それ以後失われた崇高な精神性を取り戻そうとした
③ ラファエロ以前の芸術に倣って、公共建築の壁画を描いた
④ ラファエロ以前の芸術に憧れ、忠実な複製品を作った
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.60
ロセッティ 受胎告知

ロセッティ《受胎告知》
1849-50年 油彩・キャンヴァス
73×42㎝ テート・プリテン(ロンドン)

答え ② ラファエロ以前の芸術を理想とし、それ以後失われた崇高な精神性を取り戻そうとした

描いたのは、
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
(1828-82)

ロセッティ 自画像

《自画像》
1847年 鉛筆・白チョーク・紙
21×17㎝ ナショナル・ポートレート・ギャラリー(ロンドン)

19世紀中ごろ、フランスで印象派が誕生する少し前、イギリスではラファエル前派と呼ばれる前衛芸術運動が興ります。

ラファエロ以後の西洋絵画を退廃として認めず、初期ルネサンスや、フランドル美術など、ラファエロ以前のもに回帰しようとしたグループです。

アカデミーの型にはまった規則から解放されて、自由に描くことを求めました。
素朴な信仰心や、美しいものへの純粋な思いを、伝説文学に託して描いています。

その他の代表作

ベアタ・ベアトリクス

《ベアタ・ベアトリクス》
1863年 油彩・キャンヴァス
86×66㎝ テート・ブリテン(ロンドン)

ロセッティ レディ・リリス

《レディ・リリス》
1866年 油彩・キャンヴァス
98×85㎝ デラウェア美術館(アメリカ)

3級 過去問/Q.104

ミレイが描いた《オフィーリア》は、シェークスピアのどの戯曲からの題材?
①『ロミオとジュリエット』
②『真夏の夜の夢』
③『ハムレット』
④『マクベス』
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.60
ミレイ《オフィーリア》

ミレイ 《オフィーリア》
1851-52年 油彩・キャンヴァス
76×112㎝ テート・プリテン(ロンドン)

答え ③『ハムレット』

描いたのは、
ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896)

ミレイ

ナショナル・ポートレート・ギャラリー(ロンドン)

ミレイラファエル前派、イギリスの画家です。

この作品、シェークスピアの『ハムレット』の登場人物オフィーリアが、父親をハムレットに殺されて発狂し、川で溺死する場面を描いたもの。

ミレイ オフィーリア 詳細
John Everett Millais, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons
ミレイ オフィーリア 詳細
John Everett Millais, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons

明るい色彩細密描写で、見たままを忠実に描くのもラファエル前派の特徴のひとつです。

4級Q.42でも似た問題が出ています!

3級 過去問/Q.105

この作品の作者で、弟子の中からマティスやルオーなどフォーヴィスムの担い手を生んだ画家は?
① シャヴァンヌ
② モロー
③ ルドン
④ ゴーギャン
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.60
モロー《出現》

《出現》
1875年頃 油彩・キャンヴァス
142×103㎝ ギュスターヴ・モロー美術館(パリ)

答え ② モロー

象徴主義の代表格でもあるフランスの画家、
ギュスターヴ・モロー

モロー 自画像

《自画像》
1850年 油彩・キャンヴァス
41×32㎝ ギュスターヴ・モロー美術館(パリ)

神話中世の伝説をモチーフに、神秘的な世界を表現しています。

象徴主義では、見慣れた光景や身近なものの中に、ある特別の意味を持たせたり、目に見えない世界を表現しています。

フランスの文学界から広まり、夢や幻想、愛や死などの神秘的なテーマが特徴です。

モローはエコール・デ・ボザール(フランスの国立美術学校)の教授でもあり、教え子の中にマティスルオーがいました。

《出現》については、4級Q.53でも!

他、ギリシャ神話を題材に、独特の幻想的な世界です。

モロー オイディプスとスフィンクス

《オイディプスとスフィンクス》
1864年 油彩・キャンヴァス
206×105㎝ メトロポリタン美術館(NY)

モロー オルフェウス

《オルフェウス(オルフェウスの首を抱くトラキアの娘)》 1865年 油彩・キャンヴァス
154×99.5㎝ オルセー美術館(パリ)

3級 過去問/Q.110

ムンクが描いた下図の説明として、最もふさわしいものは?
① 歩行中に恐怖にかられた本人が、友人に向けて大声を出している
② 歩行中に恐怖にかられた本人が、ムンクを大声で呼んでいる
③ 自然を貫く叫び声を恐れて耳をふさぎ、自らも叫び出しそうになっている
④ 自然を貫く叫び声に恐怖を感じ、それらを吸い込もうとして口を開けている
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.62
ムンク《叫び》

《出現》
1875年頃 油彩・キャンヴァス
142×103㎝ ギュスターヴ・モロー美術館(パリ)

答え ③ 自然を貫く叫び声を恐れて耳をふさぎ、自らも叫び出しそうになっている
エドヴァルト・ムンク(1863-1944)
ムンク 写真
1933年

ノルウェーの画家。
19世紀末~20世紀初頭にドイツで活躍し、ドイツ美術界に大きな影響を与えました。

生・死・愛・憂愁・恐怖などの、内面の世界を劇的に表現しました。

ムンクも象徴主義に分類されます。

《叫び》については、4級Q.54で確認を!

他、象徴主義を代表する作家に、

オディロン・ルドン(1840-1916)
 幻想的な世界を描いています。
ルドン《キュクロプス》

《キュクロプス》
1914年頃 油彩・キャンヴァス
64×51㎝ クレラー・ミュラー美術館(オランダ)

アルノルト・ベックリーン(1827-1901)
 ナビ派でスイス出身。
ベックリーン《死の島》

《死の島》第3バージョン
1883年 油彩・キャンヴァス
80×150㎝ 旧国立美術館(ベルリン)

ジェームス・アンソール(1860-1949)
 ベルギーの画家。
ジェームズ・アンソール 《仮面の中の自画像》 

《仮面の中の自画像
1899年 油彩・キャンヴァス
117×82㎝ 旧国立美術館(ベルリン)

フェルナン・クノップフ(1858-1921)
 こちらもベルギーの画家。
クノップフ《スフィンクスの愛撫》

《スフィンクスの愛撫》
1896年 油彩・キャンヴァス
50×150㎝ ベルギー王立美術館(ブリュッセル)

世紀末、人々は急速な近代化を受け入れながらも、とまどいや不安を感じていました。
この象徴主義はヨーロッパ各地で、同時多発的に起こっています。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019
ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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