美術検定3級 過去問/Q.174~177(奈良時代の美術)

釈迦の前世と生涯が、経文と絵で表されている下図の作品を何といいますか?
①《絵因果経》
②《釈迦説法図繍帳》
③《天寿国繍帳》
④《当麻曼荼羅

出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.92
絵因果経

(部分)

答え ① 《絵因果経》

絵因果経》(えいんがきょう)は、仏伝経典の1つである『過去現在因果経』をもとにつくられました。
釈迦の前世と生涯を説く経文と、その内容をで表したものです。

西欧における宗教画と同じように、信仰の内容を言葉だけでなく、イメージに置き換えて、よりわかりやすく伝えようとしました。

絵因果経

8世紀(奈良時代)  紙本着色
26.4×115.9㎝  奈良国立博物館 重要文化財

中国の作例を手本としており、鎌倉時代から盛んになる絵巻の源流と考えられます。

3級 過去問/Q.175

興福寺の《阿修羅》はじめ《八部衆像》は、どのような性質の神でしょうか?
① 釈迦に教化され仏法を守護するインド由来の神
② 仏教を破壊しようとし仏法の敵とされた中央アジア由来の神
③ 本来仏教とは関係のないペルシア由来の神
④ 仏教東伝とともに取り入れられた中国・道教の神
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.92
阿修羅像 興福寺

《阿修羅像》
734年 興福寺(奈良)

答え ① 釈迦に教化され仏法を守護するインド由来の神

興福寺八部衆像(はちぶしゅうぞう)は、734年に十大弟子像(じゅうだいでしぞう)とともに、乾漆造(かんしつづくり)によって造立されました。

八部衆」(はちぶしゅう)とは、仏法を守護する八神で、釈迦に教化され仏法を守護するようになった
インドの異教の神々です。

この上の画像の阿修羅(あしゅら)の他に、(てん)、(りゅう)、夜叉(やしゃ)、乾闥婆(けんだつば)、迦楼羅(かるら)、緊那羅(きんなら)、摩睺羅迦(まごらが)の八神から構成されています。

十大弟子」は、釈迦10人の弟子のことで、こちらも難しい名前がいっぱいです。

富楼那 10大弟子

十大弟子の一人、《富鏤那》

710年に奈良(平城京)に遷都されると、造寺造仏が国家的規模で盛んになります。

この時代の仏像(天平仏)は、新しい乾漆造塑像という技法も加わり、動きのある写実的な表現となりました。

乾漆造」(かんしつづくり)は、麻布や和紙を漆で張り重ねたり、漆と木粉を練り合わせたものを、盛り上げて形作る方法です。

塑像」(そぞう)は、心木に縄などを巻いて、その上を粘土で肉付けして、ヘラや指で造形したものです。

この時代になると、表情も人間味が増していますね。

3級 過去問/Q.176

下図の奈良時代に建立されたこの三重塔は、次のうちのどこの寺院にありますか?
① 唐招提寺
② 秋篠寺
③ 東大寺
④ 薬師寺
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.92
三重塔 薬師寺
663highland, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yakushiji_Nara11s5bs4200.jpg

730年 国宝

答え ④ 薬師寺

奈良の薬師寺にあります。

薬師寺は680年に天武天皇が、皇后の病気回復を祈願して建てられたもので、藤原京に建てられたましたが、平城遷都に伴い、718年に現在の場所に移転しています。

幾度も災害にみまわれ、当時の遺構はこの「東塔」(三重塔)を残すのみです。

一見、六重塔に見えるのは、それぞれの屋根の下に付けられた裳階(もこし)によるもの。裳階とは、雨風から構造物を保護するもので、外見の美しさも際立たせます。

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3級 過去問/Q.177

奈良時代に建てられた聖武天皇の遺品など、貴重な宝物を収蔵する建築はどれですか?
① 宝物殿
② 収古館
③ 正倉院
④ 収蔵庫
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021 p.92
正倉院
あずきごはん, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shosin-shouso.jpg
答え ③ 正倉院

東大寺の一角にある正倉院です。

東大寺の創建期から残る唯一の建造物です。
建立時期は756年前後、高床式校倉造(あぜくらづくり)

その内部には、光明皇后によって東大寺大仏に奉納された、聖武天皇ゆかりの品々や、大仏開眼供養に用いられた品々などが納められています。

聖武天皇は仏教を厚く信仰し、諸国に国分寺と国分尼寺を建立し、奈良には、全国の国分寺の中心として東大寺を造営しました。

校倉造
ignis, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Azekura-dukuri_JPN.JPG
校倉造

他、奈良時代の現存例には、鑑真が創建した「唐招提寺金堂」もあります。

唐招提寺金堂
663highland, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Toshodaiji_Nara_Nara_pref01s5s4290.jpg
唐招提寺金堂

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
芸術教養シリーズ1 信仰、自然との関わりの中で 日本の芸術史 造形篇I 栗本徳子編  株式会社幻冬舎  2013

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