1900年という世紀の変わり目、急速な工業化や都市化が進むヨーロッパの都市で、世紀末的な不安感を表現するように、神秘的な表現や、装飾的な芸術運動が登場します。
◆ラファエル前派
・1848年にロンドンで結成(~57年)
・アカデミーが規範とするラファエロに反発
・ラファエロ以前の美術(中世や初期ルネサンスのような、飾らない優雅さや、明るく澄んだ色彩)を規範
・細密な描写 自然観察主義
・文学の影響
・象徴主義の先駆け
・思想家ジョン・ラスキンからの強い影響
◆主な作家
ミレイ
ロセッティ
ホルマン・ハント
ジョン・エヴァレット・ミレイ
《オフィーリア》1851-52年
ロセッティ
《ベアタ・ベアトリクス》1864-70年頃
ホルマン・ハント
《雇われ羊飼い》1851-52年
◆象徴主義
・フランス、ベルギー、オランダ、ドイツ
・フランス文学界からはじまる
・科学発展によるブルジョワ精神や市民社会のポジティブな倫理観を嫌悪
・不安 夢のような世界 神秘的
・内面を描く
◆主な作家
モロー フランス 聖書や神話を題材に抽象的概念
ルドン フランス 印象派全盛期にはモノクロの木炭画
クノップフ ベルギー ファム・ファタルの女性像
アンソール ベルギー 北方ルネサンスの伝統を受け継ぐ
ベックリーン スイス 死や戦争を扱う寓話
ムンク ノルウェー ベルリン分離派に影響
ギュスターヴ・モロー《出現》1875年頃
ルドン《キュクロプス》1914年頃
ジェームズ・アンソール
《仮面の中の自画像》1899年
フェルナン・クノップフ《愛撫》1896年
ベックリーン《死の島》1883年
ムンク《叫び》1893年
◆ウィーン分離派
・オーストリア
・幻想的で装飾的 華やかさと不安
・クリムトを中心に結成
◆主な作家
クリムト オーストリア
ココシュカ オーストリア
シーレ オーストリア エロティシズムと孤独さの人物画
ワーグナー 建築家 オーストリア
オルブルヒ 建築家 分離派館設計 オーストリア
クリムト《接吻》1908/09年
ココシュカ《風の花嫁(テンペスト)》1913年
エゴン・シーレ《暗色のスーツとラヴェンダーのシャツを着て立つ自画像》1914年
ワーグナー ウィーン郵便貯金局
オルブルヒ セセッション館(分離派館)
◆アーツ・アンド・クラフツ
・イギリス 1880年代
・芸術と生活の融合
・手仕事重視
・モリスに共鳴するデザイナーたちが展開
・アール・ヌーヴォーや分離派に影響を与える
◆主な作家
モリス
ウィリアム・モリス
ウィリアム・モリス《ジェフリー・チョーザー著作集》
1896年刊行
◆アール・ヌーヴォー
・「新しい芸術」
・ドイツでは「ユーゲントシュティール」(雑誌『ユーゲント』(ミュンヘンで創刊)にちなむ)
・フランスを中心に欧州各国
・植物をモチーフにした有機的なデザイン
・滑らかな曲線
・ジャポニスムの影響
◆主な作家
ロートレック フランス
ビアズリー イギリス
ミュシャ チェコ
ガレ フランス ガラス工芸
ギマール フランスの建築家
ガウディ スペインの建築家
ロートレック《ディバン・ジャポネ》1893年
ビアズリー『サロメ挿絵集』より 1906年刊行
ミュシャ《ジスモンダ》1894年
エミール・ガレ 1900年頃
ギマール パリ地下鉄アベス駅入口 1899-1904年
ガウディ サグラダ・ファミリア 1882年-
[参考図書]
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著 宝島社 2018
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013