バロック美術(フランドル)

バロック フランドル ルーベンス レウキッポスの娘たちの略奪
ルーベンス《レウキッポスの娘たちの略奪》 1618年 アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)

15世紀以降、伝統ある美術を守ってきたネーデルラント地方でしたが、17世紀初頭に南北に分断され、それぞれ違う美術が発展しました。

南側がフランドル(現在のベルギーあたり)で、スペイン帝国の支配の下、国際貿易港アントウェルペンを中心に繁栄します。(北部はオランダ共和国として独立)

カトリックが勢力を回復すると、再興を進める教会のため、画家たちにたくさんの仕事が注文されました。この時代、最も活躍したのが、ピーテル・パウル・ルーベンスです。

17世紀のフランドルでは、ルーベンスのように祭壇画物語を描いた画家の他、風景動物などを専門とする画家が登場しました。


特徴 
君主の肖像・神話化した君主像・キリスト教的主題

ピーテル・パウル・ルーベンス
Peter Paul Rubens
1577年6月28日~1640年5月30日

フランドル
アントウェルペン出身

23歳から8年間イタリアに留学し、古代ルネサンス美術とともに、カラヴァッジョ様式も学んで帰国します。宮廷画家として大工房を構え、多くの弟子たちとヨーロッパ各地からあらゆる注文に応じる分業体制を確立。生涯におよそ2000点もの作品を手掛けています。外交官としても活躍。

《キリスト昇架》

ルーベンス キリスト昇架

1609-1610年頃 油彩・板
462x341㎝ 聖母大聖堂(アントウェルペン/ベルギー)

《キリスト降架》

ルーベンス キリスト降架

1611-1614年頃 油彩・板
421x311㎝
聖母大聖堂(アントウェルペン/ベルギー)

ルーベンス キリスト降架 詳細

このアントウェルペン大聖堂の2大祭壇画は、造形表現や強烈な明暗法螺旋を描く対角線構図など、イタリア絵画の影響がしっかりと見られます。

ルーベンスのスケールの大きさと迫力ある祭壇画によって、人々はカトリックの信仰へと導かれました。

「フランダースの犬」でネロ少年が見た最後の絵としても有名ですね♪

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ルーベンス キリスト降架
Jean Housen, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:20210626_antwerpen219.jpg

《マリー・ド・メディシスの生涯(マルセイユ上陸)》

ルーベンス マリー・ド・メディシスの生涯 マルセイユ上陸

1622-25年頃 油彩・カンヴァス
364x295㎝ ルーブル美術館蔵(パリ)

《三美神》

ルーベンス 三美神

1636-38年 油彩・カンヴァス
221x181㎝ プラド美術館(マドリード)

「三美神」 とは、美の女神アフロディテに使える3人の女神のこと✨
 タレイア(花の盛り)
 プシュネ(喜び)
 アグライア(輝く女

《パリスの審判》

パリスの審判 ルーベンス

1632-35年頃 油彩
144.8x193.7㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

豊満な肉体滑らかな肌の質感は、ルーベンスの裸婦像の特徴です。

ヤーコブ・ヨルダーンス

ヨルダーンス

ヤーコブ・ヨルダーンス
Jacob Jordaens
1593年5月19日-1678年10月18日

フランドル

ルーベンスの弟子
滑稽で庶民的、活力ある作品を描いています。

《サテュロスと農民》

ヨルダーンス サテュロスと農民

1620-1621年 油彩・カンヴァス
322x340㎝ サン・ルイジ・デイ・フランチェ―ジ教会(ローマ)

ヨルダーンスも、ルーベンスの助手でした。
神話画や宗教画、風俗画を得意としました。

《豆の王様の祝宴》

ヨルダーンス 豆の王様の祝宴

1640年頃 
242x300㎝ ウィーン美術史美術館

楽しそうですね~ ^^

ヴァン・ダイク

ヴァン・ダイク

アンソニー・ヴァン・ダイク
Anthony van Dyck
1599年3月22日-1641年12月9日

フランドル

ルーベンスの工房で弟子として働いたのち、イタリア留学を経て、イギリス王チャールズ1世の宮廷画家へ。屋外での肖像画の伝統を確立。上流階級の華麗な肖像画を数多く手掛けています。

《チャールズ1世の肖像》

ヴァン・ダイク チャールズ1世の肖像

1635年頃 油彩・カンヴァス
266x295㎝ ルーブル美術館蔵(パリ)

狩りに出たチャールズ1世が、ひと休みしているところ。『狩猟場の王』とも呼ばれる作品です。
ヴァン・ダイクは、モデルの地位や心理を巧みに演出。形式ばった堅苦しい肖像画ではなく、品格威厳を添えながら人間味あふれる作品を残しました。
チャールズ1世だけで40点もの肖像画を描いています。

《馬上のチャールズ1世とサン・アントワープの領主の肖像》

ヴァン・ダイク 馬上のチャールズ1世とサン・アントワープの領主の肖像

1633年 油彩・カンヴァス
368x269㎝ バッキンガム宮殿(ロンドン)

ヤン・ブリューゲル

ヤン・ブリューゲルと家族の肖像

ヤン・ブリューゲル(父)

Jan Brueghel the Elderi
1568年-1625年1月13日

ブラバント公国(現 ベルギー)

「花のブリューゲル」や、絵の色調から「ビロードのブリューゲル」と呼ばれ、植物図鑑のような花卉画静物を得意としました。

は北方ルネサンスで活躍した、画家のピーテル・ブリューゲル。兄弟のピーテルに、息子のヤンとアンブロシウスも画家。

《青い花瓶の中の花束》

ヤン・ブリューゲル 小さな壺の花束

1599-1607年
美術史美術館(ウィーン)

これは静物画のひとつ花卉画(かきが)。観賞用の花の絵です。
開花時期の違う花が混在しており、それぞれの花の特徴がよくわかるように構成して描かれています。

スネイデルス

スネイデルス

フランス・スネイデルス

Frans Snyders
1579年11月11日-1657年8月19日

アントウェルペン
動物画・静物画家
ルーベンスとの共同制作も行う

《野猪狩り》

スネイデルス 野猪狩り

油彩・キャンヴァス
194×340㎝ ロコックスハウス(アントウェルペン)

《果物》

スネイデル LA_FRUTERA

1633年 油彩・キャンヴァス
プラド美術館(スペイン)

【参考図書】
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著  宝島社 2018
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013
知識ゼロからの名画入門 永井龍之介監修 株式会社幻冬舎 2016
世界でいちばん素敵な西洋美術の教室 (世界でいちばん素敵な教室) 永井龍之介監修 株式会社三才ブックス 2018

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