マニエリスムの美術

エル・グレコ オルガス伯の埋葬
エル・グレコ《オルガス伯の埋葬》1586-88年 トレド・サント・トメ教会

盛期ルネサンスの後のイタリア、1530年頃、奇抜さや技巧を凝らした様式「マニエリスム」が登場します。

細長く伸ばされた人物や、入り組んだポーズ、冷たく鮮やかな色彩などが特徴。それまでの完成されたルネサンス的調和や均衡を崩して、独特な表現を追求しています。社会的にも宗教的にも不安定な時代に、不安感漂う緊張感のある作品が描かれました。

「マニエリスム」は、「様式」「手法」を意味するイタリア語の「マニエラ」が語源。今日使われているマンネリズム(マンネリ)も、ここから派生した言葉です。

やがてフランスやプラハやウィーンと、欧州各地へ広がり、各地の宮廷を中心に広まりました。
明暗や遠近を強調した動的な構成は、バロック様式へと繋がります。


時代 16世紀~17世紀初め
キーワード 人体のねじれ・冷たく鮮やかな色・遠近法の誇張・明暗のコントラスト・寓意画・螺旋構図 

ロッソ・フィオレンティーノ

ロッソ・フィオレンティーノ
Rosso Fiorentino
(本名 ジョバンニ・バティスタ・ディ・ヤコポ)
(1494-1540年)

イタリア出身
ポントルモと同じ工房で修業
フランソワ1世にマネからフランスへ

《十字架降下》

ロッソ・フィオレンティーノ 十字架降下

1521年 油彩・板
ヴォルテラ美術館

重量感のない謎めいた人物や、曖昧な空間表現です。

ポントルモ

ヤコポ・ダ・ポントルモ
Jacopo da Pontormo
1494年5月24日-1557年1月2日
イタリアの画家

《十字架降下》

ポントルモ 十字架降降下

1525-28年頃
サンタ・フェリチタ聖堂 カッポーニ礼拝堂(フィレンツェ)

鮮やか冷たい色使い、人物の表情やデフォルメされた体つき、浮遊感による不明確な位置関係など、不安をかきたてるような描写。

盛期ルネサンス美術を規範としながらも、それとは異なる独自の表現を模索しています。

パルミジャニーノ

パルミジャニーノ

パルミジャニーノ
Parmigianino
1503年1月11日-1540年8月24日

ラファエロの影響を受ける

《長い首の聖母》

パルミジャニーノ 首の長い聖母

1425-27年頃 油彩・板 
219x135㎝ ウフィツィ美術館(フィレンツ)

S字に曲がった首の聖母マリア、不自然な体つきのキリスト、いくつもの視線が交差し、右下には哲学者?
それぞれに寓意がありそうですが、明確な答えは不明のままです。

パルミジャニーノ 長い首の聖母
パルミジャニーノ 長い首の聖母

ティントレット

ティントレット 自画像

ティントレット

Tintoretto
1518年9月29日-1594年5月31日

ティツィアーノの色彩とミケランジェロの人体描写を目指す。
ヴェネツィア・ルネサンスの最後を飾る画家。

《最後の晩餐》

1592-94年 油彩・カンヴァス
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会(ヴェネツィア)

キリストが裏切り者の存在を告げる場面。上部の明かりによる強い明暗や、斜めに配されたテーブルによる遠近感、天井には天使が舞い、世俗性神秘性の混じり合う、斬新な構図の《最後の晩餐》です。

《奴隷を解放する聖マルコ》 

ベルニーニ サンピエトロ広場

1548年 416x544㎝
アカデミア美術館(ヴェネツィア)

エル・グレコ

エル・グレコ

エル・グレコ
El Greco
(本名 ドメニコス・テオトコプーロス)
1541年-1614年4月7日
クレタ島出身

16世紀スペインの代表的なマニエリスト。独創的なスタイルを築きました。
エル・グレコ」は「ギリシア人」を意味するあだ名。
ヴェネチアとローマで修業後、スペインへ移り住みます。

《ラオコーン》

エル・グレコ ラオコーン

1610年-1614年 油彩
142x193㎝ 
ナショナル・ギャラリー(ワシントン)

グレコが描いた唯一の神話画
蛇と格闘するラオコーン2人の息子です。

《無原罪の御宿り》 

エル・グレコ 無原罪の御宿り

1613年 油彩・板
サンタ・クルス美術館(トレド)

10頭身!

《オルガス伯の埋葬》

エル・グレコ オルガス伯の埋葬

1586-88年 油彩・カンヴァス
487.5x360㎝ サント・トメ教会(トレド)

ジャンボローニャ

ジャンボローニャ 肖像

ジャンボローニャ
Giambologna
1529年-1608年8月13日

フランドル生まれ
マニエリスムの彫刻家
ローマで古代彫刻やミケランジェロを研究し、フィレンツェで活動

《サビニの女の略奪》

ジャンボローニャ サビニの女の略奪 

1579-1583年 大理石 約 H410㎝
ランツィの回廊(シニョーリア広場/フィレンツェ)

どの角度から見ても、3人の人物が螺旋状に連なって見えます。
ミケランジェロの造形理念であるねじれた人体による感情の表現を受け継いでいます。
大理石の塊から彫り出された作品。

[参考図書]
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著  宝島社 2018
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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