ポスト印象主義・新印象主義の美術

ゴーガン《タヒチの女たち》
ゴーガン《タヒチの女たち》

ポスト印象主義の特徴

・「ポスト」は「~の後」の意
・印象主義を乗り越えようと、独自の表現を追求
・後のフォーヴィスムやキュビスム、表現主義などが興るきっかけを築いた作家たち
・画廊や芸術雑誌が増える

主な作家
 セザンヌ 自然を構成で表現 後のキュビスムに影響
 ゴッホ 激しい色彩とタッチ 内面的な世界を表現作
 ゴーガン 
単純化 大きな色の面 鮮やかな色彩 原始的な自然との一体化

ポン=タヴァン派
ポン=タヴェン村に集まり、ゴーギャンの影響を受けた画家たち
太い輪郭線で単純化 鮮やかな色使い
 ベルナール
 セリュジエ 後にナビ派

 

ナビ派
ゴーガンに同調しパリを中心に活動した若い画家たち
1892年結成(1900年頃まで活動)
「ナビ」とは、ヘブライ語で「預言者」という意味(自分たちを新しい芸術の預言者と考える)
力強い色彩表現 大きく分割された画面構成 平面的 
もの憂げな感じの装飾的画風
 モーリス・ドニ
 ヴュイヤール
 ボナール
 マイヨール 
のちに彫刻家
スーラ
《グランド・ジャット島の日曜日の午後》

新印象主義の特徴
・点描主義
・印象派の色彩技法を科学的にアプローチ
・自然の普遍的な心理を求める

主な作家
 スーラ 点描画、普遍性を明らかにしようとする、サロンに対抗して無審査のアンデパンダン展を設立
 シニャック 
スーラの追従者 装飾性をプラス
 アンリ=エドモン・クロス

ポール・セザンヌ

ポール・セザンヌ
Paul Cézanne
1839年1月19日~1906年10月23日
フランス
ポスト印象主義

従来の遠近法を捨て、一枚の絵の中に複数の視点を盛り込む。後のキュビスムなどの流派に大きな影響を与える。

《サント・ヴィクトワール山》

連作に取り組んだ故郷の山です。(4級 Q.51)(3級 Q.96

セザンヌ サント=ヴィクトワール山

1887年頃 油彩・キャンヴァス
66.8×92.3㎝ コートールド・インスティテュート・ギャラリー(ロンドン)

《カード遊びをする人々》

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1890-95年 油彩・キャンヴァス
130×190㎝ オルセー美術館(パリ)

《林檎とオレンジ》

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1899年 油彩・キャンヴァス
74×93㎝ オルセー美術館(パリ)

上から見た林檎、斜め横から見た水差しと、いくつもの視点が混在している。

《大水浴》

セザンヌ《大水浴》

1899-1906年 油彩・キャンヴァス
210.5×250.8㎝ フィラデルフィア美術館(アメリカ)

ゴッホ

ゴッホ《耳に包帯を巻いた自画像》

フィンセント・ファン・ゴッホ
Vincent van Gogh
1853年3月30日~1890年7月29日
オランダ
ポスト印象主義

パリへ移って印象主義を知り、浮世絵にも影響を受けながら、激しい情熱がほとばしるような絵画を生み出す。内面の世界や心の動きを表現。

《ひまわり》

ゴッホ《ひまわり》

1888年 油彩・キャンヴァス
92.1×73㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

1888年から翌年にかけて、何点かの「ひまわり」を描いています。その連作のうちの1つを、損保ジャパン東郷青児美術館(新宿)所蔵しています。

《アルルの寝室》

ゴッホ《アルルの寝室》

1888年 油彩・キャンヴァス
72×90㎝ ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

フランスのアルルにいた15か月間は、ゴッホの才能が開花した絶頂期と言われています。他に2点、同じ絵を描いています。

《月星夜》

ゴッホ《星月夜》

1889年 油彩・キャンヴァス
74×92㎝ ニューヨーク近代美術館(NY)

《鳥の飛ぶ麦畑》

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1890年 油彩・キャンヴァス
50×103㎝ ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)

ゴーガン

ゴーガン

ポール・ゴーガン
Paul Gauguin
1848年6月7日~1903年5月8日
フランス
ポスト印象主義

もとは株式仲買人の仕事をしながらに日曜画家。35歳で画家転身。やがて文明を嫌ってタヒチへ移り住み、優れた作品を生み出す。

はっきりとした輪郭線、鮮やかで平坦な色、単純化したかたち(クロワゾニスム)で、宗教的なテーマや、原始の美術が持つ精神的なイメージを描く。

《マナオ・トゥパパウ》

ゴーガン《マナオ・トゥパパウ》

1892年 油彩・キャンヴァス
116×134.6㎝ オルブライト=ノックス美術館(アメリカ)

《我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか》

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1897-1898年 油彩・キャンヴァス
139×375㎝ ボストン美術館(アメリカ)

ベルナール

エミール・ベルナール

エミール・ベルナール
Émile Bernard
1868年4月28日~1941年4月16日
フランス
ポン・タヴェン派

《草地のブルターニュの女たち》

ベルナール《草地のブルターニュの女たち》

1888年 油彩・キャンヴァス
74×92㎝ 個人蔵

セリュジエ

ポール・セリュジエ
Paul Sérusier
1864年11月9日~1927年10月7日
フランス
ポン・タヴェン派 のちにナビ派

《愛の森の風景(タリスマン)》

paul-serusier-the-talisman

1888年 油彩・キャンヴァス
27x21.5㎝ オルセー美術館

(3級Q.98

モーリス・ドニ

モーリス・ドニ

モーリス・ドニ
Maurice Denis
1870年11月25日~1943年11月13日
フランス
ナビ派

《ミューズたち》

モーリス・ドニ《ミューズたち》

1893年 油彩・キャンヴァス
137.×171㎝ オルセー美術館(パリ)

エドゥアール・ヴュイヤール

エドゥアール・ヴュイヤール

エドゥアール・ヴュイヤール
Édouard Vuillard
1868年11月11日~1940年6月21日
フランス
ナビ派

《新聞》

1896-98年

ピエール・ボナール

ピエール・ボナール
Aréat, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:T%C3%AAte_de_Bonnard_(Portrait_photograph_of_Pierre_Bonnard),_c.1899,_Mus%C3%A9e_d%27Orsay,_restaur%C3%A9e.jpg

ピエール・ボナール
Pierre Bonnard
1867年10月3日~1947年1月23日
フランス
ナビ派

ゴーガンの影響を受けて、パリを中心に活動した「ナビ派」の中心的存在。
平面的、甘美な色彩で、日常の情景や裸婦像を描く。日本の浮世絵から影響を受ける。

《浴槽の裸婦》

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1936年  パリ市立近代美術館

《昼光を浴びる裸婦》

ボナール《昼光を浴びる裸婦》

1908年 油彩・キャンヴァス
124.5×109㎝ ベルギー王立美術館(ブリュッセル)

スーラ 

スーラ

ジョルジュ・スーラ
Georges Seurat
1859年12月2日~1891年3月29日
フランス
新印象主義

印象派の画家たちの色彩技法を科学的に研究
サロンに対抗して無審査のアンデパンダン展を設立

《アニエールの水浴》

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ジョルジュ・スーラ 《アニエールの水浴》
1883-84年 油彩・カンヴァス
200x300㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

《グランド・ジャット島の日曜日の午後》

スーラ グランド・ジャット島の日曜日の午後

1884-86年 油彩・カンヴァス
207.5×308.1㎝ シカゴ美術研究所

すべてが小さな色の点の集まりで表現されています。

スーラは、色彩理論や色の対比や補色の関係などを学び、絵具をパレット上で混合すると、明度が減ずることに気づきます!

そこで小さい色の斑点を、規則的に並べて(色調分割)一定の距離を置くと… 配置された色の斑点が、観る側の網膜上で混じり合って(視覚混合)明るい画面を創り出します。これが点描技法です。

シニャック

シニャック

ポール・シニャック
Paul Signac
1863年11月11日~1935年8月15日
新印象主義

スーラの追従者

《フェリックス・フェネオンの肖像》

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1890年 油彩・キャンヴァス
73.5×92.5㎝ ニューヨーク近代美術館

[参考図書]
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著  宝島社 2018
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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