16世紀になると、ルネサンス美術の中心が、ローマとヴェネツィアへ移ります。
ローマはユリウス2世の潤沢な資金で、ヴェネツィアは海上貿易で栄えます。
様々な分野で巨匠たちが出現。30年ほどの短い間に、それまでは「職人」だった画家や彫刻家、建築家が「芸術家」として意識を持ち始め、偉大な作品を創造していきます。
年代 1500~1530年頃
地域 ローマ・ヴェネツィア
特徴 スフマート、遠近法、油彩技法、色彩
ヴェネツィア派/ティツィアーノ、ジョルジョーネ、ティントレット、ヴェロネーゼ
描写の自由度が高い油彩技法で、色彩と筆触を重視。詩情豊かに自由な描写。早くからフランドルより油彩技法がもたらされ、多湿の気候にも合い油彩画が発展。港町でありキャンヴァスが普及。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
Leonardo da Vinci
1452年4月15日-1519年5月2日
「万能の人」
盛期ルネスサンス三大巨匠の一人
《モナ・リザ》
1503-06年 油彩・板
77×53㎝ ルーブル美術館(パリ)
15世紀ころまで、しっかり描かれていた人物の輪郭線ですが、レオナルドは「自然界に輪郭線はない」として描きませんでした。より自然な陰影や表現を研究し、スフマート法や空気遠近法を発展させました。
フスマート法
スフマートは「煙」を意味するイタリア語 「くすんだ」「薄れる」という意味の fumo が語源。薄い色彩を何層も塗り重ねて、周囲と馴染ませ、色の境目がわからないようにぼかす技法。乾燥が遅い油絵具の特性を利用しており、その微妙な明暗だけで、深みやボリュームを出しています。
空気遠近法
遠くにある対象が青みを帯びて霞むことを応用し、色彩で空間の奥行を表現する技法。近くのものは濃くはっきりと、遠くのものは淡くぼかして表現。
《岩窟の聖母》
1491-92・1506-08年
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
ジョルジョーネ
ジョルジョーネ
Giorgione
1477/78年頃-1510年
ヴェネツィア派
《嵐》
1505-07年
アカデミア美術館(ヴェネツィア)
詩的で豊かな自然を描いたジョルジョーネですが、代表作とされるこの《嵐》はテーマが解読されないままの絵。
はっきりとした主題のない絵を描いた最初の画家と言われています。
《眠れるヴィーナス》
1510年 油彩・キャンヴァス
108.5x175㎝ アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)
横たわる裸体のヴィーナス像のルーツとなる作品。
制作途中でペストにより亡くなってしまい、その後完成させたのがティツィアーノ。
ラファエロ
ラファエロ・サンティ
Raphael
1483年-1520年4月6日
レオナルドやミケランジェロとともに、盛期ルネサンスの三大巨匠の一人 。「聖母子の画家」とも呼ばれます。
《アテネの学堂》
1425-27年頃
サンタ・マリア・デル・カルミネ教会
レオナルドの顔をモデルとしたプラトンと、その横アリストテレスを中心に、50名を超える古代ギリシアの哲学者・科学者が集う夢の学舎を描いています。
レオナルドとミケランジェロに学んだラファエロ。
美しい調和に満ちた作品を創出しました✨
《アテネの学堂》詳しくはこちらを👇
《美しき女庭師》
1505-06年頃 ルーヴル美術館
聖母マリアはキリスト教会絵画では、赤い衣と青いマントで描かれます。
《牧場の聖母》
油彩・板 113x88㎝
1506年頃 美術史美術館(ウィーン)
《小椅子の聖母》
油彩・板 φ71㎝
1513-14年 ピッティ美術館(フィレンツェ)
ミケランジェロ
ミケランジェロ・ブオナローティ
Michelangelo
1475年3月6日~1564年2月18日
盛期ルネスサンス三大巨匠の一人
《アダムの創造》
1508-12年頃 フレスコ
480×230㎝ システィーナ礼拝堂(ヴァチカン)
天井画の中心部は『旧約聖書』の最初の書である「創世記」からの9場面が描かれています。
周囲には預言者や巫女などが描かれています。
《最後の審判》
1536-41年 フレスコ
1370×1200㎝ システィーナ礼拝堂(ヴァチカン)
天井画から30年近く後に制作された祭壇画は『新約聖書』の最後に納められた「ヨハネの黙示禄」に記された預言の一場面が描かれています。
世界の終末と人類への審判……
再臨したキリストを中心に、ダイナミックな構図です。
《ピエタ》
1498-99年 大理石
174×195x69㎝ サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)
《ダヴィデ像》
1501-04年 大理石
517×199㎝ アカデミア美術館(フィレンツェ)
ティツィアーノ
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
Titian
1488/90年頃~1576年8月27日
ヴェネツィア派
鮮やかな色使いや自由な空間構図、官能的な女性描写で国際的な名声を得ています。
《ウルビーノのヴィーナス》
1538年 キャンバス・油彩
119.2x165.5㎝ ウフィツィ美術館
ジョルジョーネが描いた《眠れるヴィーナス》の、30年後に描かれたもの。
女性の裸体はまだタブーだった時代、女神を示す赤いバラを持たせ、貞節を意味する犬も一緒に描いています。
後にマネの《オランピア》やモディリアーニの《横たわる裸婦》など、後世に大きな影響を与えています✨
《聖愛と俗愛》
1515年 キャンバス・油彩
118x279㎝ ボルゲーゼ美術館(ローマ)
《田園の奏楽》
1509年頃 油彩・キャンバス
105x136㎝ ルーブル美術館(パリ)
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