写実主義の美術(レアリスム)

オルナンの埋葬 クールベ
《オルナンの埋葬》クールベ

写実主義(レアリスム)の特徴
・19世紀中ごろ
・自然や社会の現実に目を向け、ありのままに描いた芸術運動
・見過ごされた現実をテーマとし、社会的抗議の意図を含む
・新古典主義的な価値観や、美化されたロマン主義への反発
バルビゾン派の形成

主な作家
 クールベ 労働者や農民 自然の姿をありのままに
 ドーミエ 政治や社会を風刺した挿絵
 ミレー 農民の生活や姿を主題(キリスト教的)


バルビゾン派
は、パリの郊外フォンテーヌブローの森近くのバルビゾンに住み着き、自然の美しい風景画を描いた画家たち。都会の騒々しさから離れ、自然の中で豊かな感情を取り戻そうとしました。彼らの絵は、地方から移住した都市生活者から都市生活の癒しとして求められました。

バルビゾン派の主な作家
 コロー 詩的
 テオドール・ルソー バルビゾン派の中心

クールベ

ギュスターヴ・クールベ
Gustave Courbet
1819年6月10日~1877年12月31日

フランス写実主義の画家
農民のリアルな日常を主題とする
歴史画を頂点とするアカデミーに挑戦
世界初の「個展」を開催

《石割り人夫》

クールベ 石割り人夫

1849年 油彩・キャンヴァス 
第二次世界大戦中、ドレスデンでの爆撃で焼失(1945年)

貧しい石割り人夫たちの重労働を、社会的抗議の意思を込めて描いています。

《画家のアトリエ》

画家のアトリエ クールベ

1855年 油彩・キャンヴァス
361×598㎝ オルセー美術館(パリ)

クールベを中心に、右側に詩人や友人を、左側にさまざまな階級の民衆を描いています。

《オルナンの埋葬》とともに、こちらでもう少し詳しく取り上げています。👇

ドーミエ

オノレ・ドーミエ

オノレ・ドーミエ
Philipp Otto Runge
1808年2月26日~1879年2月10日

政治や社会を風刺した挿絵画家
油彩では庶民の日常生活を描く
石版画

《洗濯女》

洗濯女 オノレ・ドーミエ

1863年 油彩・パネル
49x33.5㎝ オルセー美術館(パリ)

市井に生きる下層階級の人々を、愛情を持って描いています。

《三等車》

オノレ・ドーミエ 三等車

1862-64年 油彩・キャンヴァス
65.4×90.2㎝ メトロポリタン美術館(NY)

《ガルガンチュア》

1831年 石版画
21.4×30.5㎝ パリ公立図書館

こちらは石版画。
市民の税金を吸い込むフランスのルイ・フィリップ王。

権力者や社会に対する風刺画も数多く描いています。

ミレー

ミレー

ジャン=フランソワ・ミレー
Jean-François Millet
1814年10月4日~1875年1月20日
フランス

農民画家
1849年(35歳)パリからバルビゾン村へ家族と共に移住
早くから普通の労働者を絵のテーマとして描く

《種をまく人》

ミレー 種をまく人

1850年 油彩・キャンヴァス
101.6
×82.6㎝ ボストン美術館

1850年のサロンに出品し、一躍有名となったミレーの出世作。

《落穂白い》

ミレー 落穂拾い

1857年 油彩・キャンヴァス
83.8×111.8㎝ オルセー美術館(パリ)

刈り入れ後の残された落穂を拾い集めて、生活の糧とする農夫たち。
遠くには、積み藁と地主たちの豊かな収穫が見えます……

《晩鐘》

晩鐘 ミレー

1857-59年 油彩・キャンヴァス
55.5×66㎝ オルセー美術館(パリ)

ミレーの死後、何度も競売にかけられた作品。
アメリカが入手後、フランスの資産家が買い戻しています。

コロー

カミーユ・コロー

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー
Jean-Baptiste Camille Corot
1796年7月16日~1875年2月22日

バルビゾン派
詩的 抒情的風景画 
晩年は銀灰色を主調とする風景画を描く

《ティヴォリのヴィラ・デステ庭園》

コロー ティヴォリのヴィラ・デステ庭園

1843年 油彩・キャンヴァス
41×61㎝ ルーブル美術館(パリ)

《モルトフォンテーヌの思い出》

コロー モルトフォンテーヌの思い出

1864年 油彩・キャンヴァス
89×65㎝ ルーブル美術館(パリ)

全体が霧につつまれたように、はっきりとした輪郭線のない銀灰色の世界。

《真珠の女》

コロー 真珠の女

1868-70年 油彩・キャンヴァス 
70×55㎝ ルーブル美術館(パリ)

コローのモナ・リザ」といわれる作品。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」と同じ構図ですね。X線撮影では、手に本か手紙を持っていた下書きがあったそう!
額にかかる葉の冠が、真珠に見えたことから《真珠の女》というタイトルがついています。

コローは多くの肖像画も残しています。

ルソー

テオドール・ルソー

テオドール・ルソー
Théodore Rousseau
1812年4月15日~1867年12月22日

バルビゾン派
屋内制作が主流だった当時に 野外で絵を描いた外光派の先駆

《フォンテーヌブローの森はずれ、日没》

テオドール・ルソー フォンテーヌブローの森のはずれ、日没

1848-49年 油彩・キャンヴァス
142×197.5㎝ ルーブル美術館(パリ)

[参考図書]
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著  宝島社 2018
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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