美術検定3級 過去問/Q.38~42(盛期ルネサンス美術3)

ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレットらを輩出したイタリアの都市は?
① フィレンツェ
② ローマ
③ ヴェネツィア
④ ミラノ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.32
答え ③ ヴェネツィア
ヴェネツィア 地図

ヴェネツィアでは、15世紀後半から、ベッリーニの一族を中心に絵画が発展しました。

アントネッロ・ダ・メッシーナ(1430頃-1479年)によって、油絵の技法はもたらされ、16世紀に黄金時代を迎えます。

アントネッロ・ダ・メッシーナ 自画像

油彩技法は、15世紀初めにフランドルで発展します。ナポリでフランドル絵画に接したしたメッシーナは、その北方の技法を学び、後にヴェネツィアで制作。大きな影響を与えました。

アントネッロ・ダ・メッシーナ《自画像》
1473年 油彩・パネル
35.5×25.5㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

そして、キャンヴァスの材料は、帆船に使われていた
海運の街 ヴェネツィアならではの画材ですね。

海に囲まれた街のため、フレスコの劣化が早かったのも、いち早くヴェネツィア油絵が根付いた理由です。

ヴェネツィアで活躍したのが、

ジョルジョーネ(1477頃-1510年)
ジョルジョーネ 自画像

《自画像》

ジョルジョーネ 嵐

ジョルジョーネ 《嵐》
1505-07年頃 油彩・キャンヴァス
83×73㎝ アカデミア美術館(ヴェネツィア)

この作品《嵐》は、ルネサンス絵画史上、最も謎の多い作品といわれています。
両端の男女…  街の奥 雲の中に稲光…
この男女の関係も、物語の背景も、一切わかっていません。
近年のX線調査で、男性の部分に、水に足を浸した裸婦がいたことがわかり、さらに深まる謎……

しかし西洋美術史上最初の風景画」ではないかといわれています!
当然レオナルドやラファエロも風景を描いていますが、それらはあくまで附属としての風景。「風景画の全盛期は19世紀です。

この《嵐》風景画ならば、ジョルジョーネは300年も時代を先取りしていることになります。

ティントレット(1518-1594年)
tintoretto-selfport
《自画像》

ティントレット 《最後の晩餐》
1592-94年 油彩・キャンヴァス
365×568㎝ サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂 (ヴェネツィア)

ティツィアーノは次の問題で♪

3級 過去問/Q.39

フィレンツェ派の「素描」と対照的に語られるヴェネツィア派の特徴は?
① 仕上げ
② 色彩
③ 現実感
④ 構図
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.32
ティツィアーノ 聖愛と俗愛

ティツィアーノ 《聖愛と俗愛》
1514年 油彩・キャンヴァス
118×279㎝ ボルゲーゼ美術館(ローマ)

答え ② 色彩

16世紀のヴェネツィア派は「色彩」に官能的な喜びを見出しました。

15世紀のフィレンツェ派が重視した「素描」とは、遠近法や解剖学から空間や人物を構造的に把握して、それを画面に組み立てていくための下描きのこと。
描き直しができないフレスコ画が主流だったので、下描きがとても重要でした。

しかしヴェネツィアで発達した油絵は、何度でも塗り重ねたり削ったりができる技法なので、素描はそれほど重視されませんでした。

個人のための作品が多く描かれ、特に色彩にあふれた感覚的で、詩的な絵が生み出されています♪

ティツィアーノ(1488/90頃-1576年)
ティツィアーノ 自画像

《自画像》

ティツィアーノは、約60年にわたりヴェネツィア画壇に君臨し続けた画家です。
当時の富裕層の多くが、彼の作品を買い求めました。

3級 過去問/Q.40

ジョルジョーネが描いた下の作品のタイトルは?
①《田園の奏楽》
②《嵐》
③《眠れるヴィーナス》
④《ウルビーノのヴィーナス》
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.32
ジョルジョーネ 眠れるヴィーナス

ジョルジョーネ 
1508-10年頃 油彩・キャンヴァス
108.5×175㎝ アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)

答え ③《眠れるヴィーナス》

屋外でおしげもなく裸体をさらして、ゆったりと横たわる女性。
横たわる裸体のヴィーナス像のルーツです✨

人物と風景の醸し出す詩的雰囲気も特徴です。

ジョルジョーネが(Q.38《嵐》の作家)、この作品の大半を描きますが、その途中でペストにより亡くなってしまいます。
その後完成させたのが、ティツィアーノです!(Q.39)

このヴィーナスがあまりにも素晴らしく、後世の画家たちは、同じような構図の作品を描くようになりました。

こちらが30年後 ティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス

ティツィアーノ ウルビーノのヴィーナス 

1534年 油彩・キャンヴァス
119×165㎝ ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

こちらは室内ですね。
見るものを誘うように目を開けて、つややかな生身の女性の官能美あふれる裸体です。

色っぽさが、かなり増していますね~

女性の裸体はまだタブーだったので、女神を示す赤いバラを持たせています。
貞節を意味するも一緒に!


後にマネの《オランピア》や、モディリアーニの《横たわる裸婦》など、後世の名作に大きな影響を与えています。これらはまた別の問題で。

3級 過去問/Q.41

下図の作者は?
① ティントレット
② ティツィアーノ
③ ロレンツォ・ロット
④ ヴェロネーゼ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.32
ヴェロネーゼ レヴィ家の饗宴

《レヴィ家の饗宴
1573年  油彩・板
556×1280㎝ アカデミア美術館(ヴェネツィア)

答え ➃ ヴェロネーゼ
パオロ・ヴェロネーゼ(1528-1588)
ヴェロネーゼ

《自画像

出身地のヴェローナから、「ヴェロネーゼ」として知られるようになりました。

色彩感覚が優れていて、物語性豊かな画面構成が特徴です。
世俗的祝祭的な雰囲気を持つ作品を多く描いています。

この作品は本来は「最後の晩餐」を主題にしていましたが、

ヴェロネーゼ レヴィ家の饗宴 詳細

贅沢な衣装を着たヴェネツィアの貴族階級の祝宴のようで、主題と無関係な道化や酔っ払い、小人などを描き込んだことで……

ヴェロネーゼ レヴィ家の饗宴 詳細
ヴェロネーゼ レヴィ家の饗宴 小人

下品で教会を愚弄していると、異端審問所に召喚されて、描き直しを命じられました。

しかしヴェロネーゼ!「我々画家は自由に表現する権利がある」と言い放ち、作品名を《レヴィ家の饗宴》に変えることで事なきを得ています!

こちらはヴェロネーゼのもうひとつの代表作。

ヴェロネーゼ カナの婚礼 

ヴェロネーゼ《カナの婚礼》
1562-63年 油彩・キャンヴァス

666×990㎝ ルーブル美術館(パリ)

表向きはキリストが水をぶどう酒に変えるという、最初の奇蹟をおこした「カナの婚礼」を主題としながらも、にぎやかな宴会の中、当時の著名人たちを登場させたり、派手な色で着色して世俗世界のテイストです。

ヴェロネーゼ カナの婚礼 キリスト

左の白い服がヴェロネーゼ
右の赤い服がティッツァーノ
その上部にキリストが!

客人であるはずのキリスト、マリア 使徒が、中央の席をしめています。

カナ」は村の名前。
666×990㎝という巨大な絵画で、ルーブルで一番大きい絵です!

カナの婚礼 ルーブル美術館
Dirk Vorderstraße, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons

3級 過去問/Q.42

晩年のレオナルド・ダ・ヴィンチやロッソ・フィオレンティーノらを保護したパトロンは?
① フランソワ1世
② レオ10世
③ ロレンツォ・デ・メディチ
④ ユリウス2世
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.32
francis-i-of-france
ジャン・クルーエ1535年頃 油彩・板ルーブル美術館蔵(パリ)
答え ① フランソワ1世

フランソワ1世(在位1515-1547年)は、フランスルネサンスを開花させた君主です。

度重なるイタリア遠征で、その洗練された文化や芸術に触れて、イタリアの芸術家を保護します。

レオナルドの最後のパトロンでもあります。レオナルド《モナ・リザ》を持って渡仏。67歳で亡くなるまで《モナ・リザ》を手元においていました。

イタリアのレオナルドの代表作が、フランスのルーブルにあるのは、この流れからなんですね!

ルネサンスの時代、作品はパトロンからの注文で制作され、その意向が作品に反映されました。

そのパトロンも、政府や組合・教会などの公的なものと、君主・教皇・貴族・市民などの私的なものとに大別されます。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
増補新装 カラー版 西洋美術史  高階秀爾監修 株式会社美術出版社  2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ)  瀧澤秀保監修  株式会社三才ブックス  2019

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