
ヴェネツィアでは、15世紀後半から、ベッリーニの一族を中心に絵画が発展しました。
アントネッロ・ダ・メッシーナ(1430頃-1479年)によって、油絵の技法はもたらされ、16世紀に黄金時代を迎えます。

油彩技法は、15世紀初めにフランドルで発展します。ナポリでフランドル絵画に接したしたメッシーナは、その北方の技法を学び、後にヴェネツィアで制作。大きな影響を与えました。
アントネッロ・ダ・メッシーナ《自画像》
1473年 油彩・パネル
35.5×25.5㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
そして、キャンヴァスの材料は、帆船に使われていた布!
海運の街 ヴェネツィアならではの画材ですね。
海に囲まれた街のため、フレスコの劣化が早かったのも、いち早くヴェネツィアに油絵が根付いた理由です。
ヴェネツィアで活躍したのが、

《自画像》

ジョルジョーネ 《嵐》
1505-07年頃 油彩・キャンヴァス
83×73㎝ アカデミア美術館(ヴェネツィア)
この作品《嵐》は、ルネサンス絵画史上、最も謎の多い作品といわれています。
両端の男女… 街の奥 雲の中に稲光…
この男女の関係も、物語の背景も、一切わかっていません。
近年のX線調査で、男性の部分に、水に足を浸した裸婦がいたことがわかり、さらに深まる謎……
しかし西洋美術史上最初の「風景画」ではないかといわれています!
当然レオナルドやラファエロも風景を描いていますが、それらはあくまで附属としての風景。「風景画」の全盛期は19世紀です。
この《嵐》が風景画ならば、ジョルジョーネは300年も時代を先取りしていることになります。


ティントレット 《最後の晩餐》
1592-94年 油彩・キャンヴァス
365×568㎝ サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂 (ヴェネツィア)
ティツィアーノは次の問題で♪
3級 過去問/Q.39

ティツィアーノ 《聖愛と俗愛》
1514年 油彩・キャンヴァス
118×279㎝ ボルゲーゼ美術館(ローマ)
16世紀のヴェネツィア派は「色彩」に官能的な喜びを見出しました。
15世紀のフィレンツェ派が重視した「素描」とは、遠近法や解剖学から空間や人物を構造的に把握して、それを画面に組み立てていくための下描きのこと。
描き直しができないフレスコ画が主流だったので、下描きがとても重要でした。
しかしヴェネツィアで発達した油絵は、何度でも塗り重ねたり削ったりができる技法なので、素描はそれほど重視されませんでした。
個人のための作品が多く描かれ、特に色彩と光にあふれた感覚的で、詩的な絵が生み出されています♪

《自画像》
ティツィアーノは、約60年にわたりヴェネツィア画壇に君臨し続けた画家です。
当時の富裕層の多くが、彼の作品を買い求めました。
3級 過去問/Q.40

ジョルジョーネ
1508-10年頃 油彩・キャンヴァス
108.5×175㎝ アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)
屋外でおしげもなく裸体をさらして、ゆったりと横たわる女性。
横たわる裸体のヴィーナス像のルーツです✨
人物と風景の醸し出す詩的雰囲気も特徴です。
ジョルジョーネが(Q.38《嵐》の作家)、この作品の大半を描きますが、その途中でペストにより亡くなってしまいます。
その後完成させたのが、ティツィアーノです!(Q.39)
このヴィーナスがあまりにも素晴らしく、後世の画家たちは、同じような構図の作品を描くようになりました。
こちらが30年後 ティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》

1534年 油彩・キャンヴァス
119×165㎝ ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
こちらは室内ですね。
見るものを誘うように目を開けて、つややかな生身の女性の官能美あふれる裸体です。
色っぽさが、かなり増していますね~
女性の裸体はまだタブーだったので、女神を示す赤いバラを持たせています。
貞節を意味する犬も一緒に!
後にマネの《オランピア》や、モディリアーニの《横たわる裸婦》など、後世の名作に大きな影響を与えています。これらはまた別の問題で。
3級 過去問/Q.41

《レヴィ家の饗宴》
1573年 油彩・板
556×1280㎝ アカデミア美術館(ヴェネツィア)

《自画像》
出身地のヴェローナから、「ヴェロネーゼ」として知られるようになりました。
色彩感覚が優れていて、物語性豊かな画面構成が特徴です。
世俗的で祝祭的な雰囲気を持つ作品を多く描いています。
この作品は本来は「最後の晩餐」を主題にしていましたが、

贅沢な衣装を着たヴェネツィアの貴族階級の祝宴のようで、主題と無関係な道化や酔っ払い、小人などを描き込んだことで……


下品で教会を愚弄していると、異端審問所に召喚されて、描き直しを命じられました。
しかしヴェロネーゼ!「我々画家は自由に表現する権利がある」と言い放ち、作品名を《レヴィ家の饗宴》に変えることで事なきを得ています!
こちらはヴェロネーゼのもうひとつの代表作。

ヴェロネーゼ《カナの婚礼》
1562-63年 油彩・キャンヴァス
666×990㎝ ルーブル美術館(パリ)
表向きはキリストが水をぶどう酒に変えるという、最初の奇蹟をおこした「カナの婚礼」を主題としながらも、にぎやかな宴会の中、当時の著名人たちを登場させたり、派手な色で着色して世俗世界のテイストです。

左の白い服がヴェロネーゼ
右の赤い服がティッツァーノ
その上部にキリストが!
客人であるはずのキリスト、マリア 使徒が、中央の席をしめています。
「カナ」は村の名前。
666×990㎝という巨大な絵画で、ルーブルで一番大きい絵です!

3級 過去問/Q.42

フランソワ1世(在位1515-1547年)は、フランスルネサンスを開花させた君主です。
度重なるイタリア遠征で、その洗練された文化や芸術に触れて、イタリアの芸術家を保護します。
レオナルドの最後のパトロンでもあります。レオナルドは《モナ・リザ》を持って渡仏。67歳で亡くなるまで《モナ・リザ》を手元においていました。
イタリアのレオナルドの代表作が、フランスのルーブルにあるのは、この流れからなんですね!
ルネサンスの時代、作品はパトロンからの注文で制作され、その意向が作品に反映されました。
そのパトロンも、政府や組合・教会などの公的なものと、君主・教皇・貴族・市民などの私的なものとに大別されます。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019