
1500年 油彩・板
220x389㎝ プラド美術館(マドリード)
裸で入り乱れる人間… 不思議なオブジェ… 空想の生き物…
描いたのはヒエロニムス・ボス(1450頃-1516年)。レオナルド・ダ・ヴィンチらと同じ16世紀前半に、ネーデルラントで活躍した北方ルネサンスの画家です。
ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂天井画と、ほぼ同時期に制作された作品で、この時代に、他の宗教画とはあきらかに違う怪奇的・幻想的な三連祭壇画を描いています。
外翼には旧約聖書『創世記』の「天地創造」の場面がモノクロで描かれ、その扉を開くと、この三連の絵が現れます。左翼には「エデンの園」、中央に「快楽の園」、右翼に「地獄」が描かれ、左から中央、右へと物語が展開しています。
◆左翼「エデンの園」
神がアダムとイヴを引き合わせているエデンの園。美しい楽園です。
正しい男女の結びつきの在り方をしめしています。




◆中央「快楽の園」
愛と性の喜びを交わす500人もの裸の男女。快楽に溺れる人間の煩悩の世界が描かれています。謎めいた行為や異様な姿の動植物についての意味は不明のまま。通常、祭壇画の中央には、聖母子などが描かれるものですが、宗教的主題を特異な世界へと展開しています。










つっこみどころいっぱいですね!
◆右翼「地獄」
不気味な火災や、奇怪な怪物たち。欲望にとらわれた結果として、落ちる地獄の光景です。
ボスの自画像も!
左翼と対比的に描かれています。





ふつう祭壇画の中央には、聖母子などが描かれますが…
この作品は「誘惑への警告」と解釈されています。
左右を閉じると、天地創造時の世界が現れます。
◆外翼「天地創造」
閉じた状態では、天地創造3日目の地球の様子が描かれています。
大地と海と植物の創造時。人間はまだ誕生していません。


左上には小さく神が描かれ、上部に記されているのは「主が仰せられると そのようになり 命じられると それは立つ」という旧約聖書の言葉。

ヒエロニムス・ボス
Hieronymus Bosch
1450年頃-1516年8月9日
ルネサンス期ネーデルラントの画家。
宗教的な主題に、特殊で謎めいた表現を組み合わせて、幻想的な世界を描いています。

Francisco Anzola, CC BY 2.0 ,
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Garden_of_Earthly_Delights_(2).jpg
【参考図書】
瀧澤秀保監修『366日の西洋美術』株式会社三才ブックス 2019年
水野千依り編『盛期ルネサンスから十九世紀末まで』株式会社幻冬舎 2013年
永井龍之介監修『知識ゼロからの名画入門』株式会社幻冬舎 2016年
【参考URL】
Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%AB%E6%A5%BD%E3%81%AE%E5%9C%92 2021年7月15日閲覧