《草上の昼食》
1863年 油彩・キャンヴァス
208×265.5㎝ オルセー美術館(パリ)
スキャンダルを巻き起こした作品です。
描いたのは、エドゥアール・マネ(1832年1月23日-1883年4月30日)
「印象派の父」と言われるフランスの画家です。
当時、裸婦を描くこと自体は珍しくなかったのですが、それはあくまで聖書や神話の世界。
マネは、タブーとされていた現実世界の女性のヌードを描きます!
森の川辺を背景に、正装した中年の紳士らの横で、裸の女性がくつろいでいます。
かたわらには脱いだ服。奥には水浴びをする下着姿の女性もいます。
当時パリの中産階級の余暇の過ごし方で、セーヌ湖畔での水浴の様子を描いたものでした。
社会の陰とする世界を思わせ、風紀に反する作品として、厳しく批判されました。
しかし、非難の原因は他にもありました。
この作品は、下図の2つの作品から着想を得て描かれたもの。
《パリスの審判》ライモンディ(ラファエロ原画)
1513-15年 銅版画
フランス国立図書館
《田園の奏楽》ティツィアーノ
1509年 油彩
105×137㎝ ルーブル美術館(パリ)
マネとしては過去の名画を元に、神話の主題を借りて描いたのですが、名画を卑猥な絵のベースにしたと、より大きな批判を受けることになります。
ちなみに、1863年の同じ年に絶賛された裸婦は、
アレクサンドル・カパネルの 《ヴィーナスの誕生》です。
《ヴィーナスの誕生》 アレクサンドル・カパネル
1863年 油彩・キャンヴァス
130×225㎝ オルセー美術館(パリ)
こちらはヴィーナス!
もちろん、とっても美しいですね~
2年後の1865年、マネは続けて 《オランピア》を発表します!!
《オランピア》 エドゥアール・マネ
1863年 油彩・キャンヴァス
130.5×190㎝ オルセー美術館(パリ)
こちらも神話の女神ではなく、当時の高級娼婦!
またもバッシングにさらされます。当然、されますよね……
首に巻かれたリボンは、娼婦が身につけるもの。
脱げた片方のミュールは、性に対して開放的であることを暗示しています。
また「オランピア」とは、当時娼婦たちが好んで使っていた源氏名でした。
そして明度の高い色彩の対比や、筆触がわかるような絵具の粗い塗り方も、アカデミスムの常識から逸脱するものでした。
こちらの絵のベースとなったのは、
ティツィアーノの《ウルヴィーノのヴィーナス》です✨
《ウルヴィーノのヴィーナス》ティツィアーノ
1538年頃 油彩
119×165㎝ ウフィツィ美術館(フィレンツエ)
しかし、当時の保守的な美術界に窮屈さを感じていた若い画家たちは、マネの画家としての姿勢や、絵の構図や色彩など、その革新性に魅了され、彼のもとに集うようになります!
その若い画家たちというのが、モネやドガ、ルノワールにシスレー、セザンヌなど♪
彼らがやがて 「印象派」 という、あらたなジャンルを生み出すことになります✨
アンリ・ファンタン=ラトゥール
《バティニョールのアトリエ》
1870年頃 油彩
204×273㎝ オルセー美術館(パリ)
大きな影響を与えたマネ。まさに「印象派の父」です。
【参考図書】
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013
知識ゼロからの名画入門 永井龍之介監修 株式会社幻冬舎 2016日閲覧