1507年 油彩・板
209x81㎝ プラド美術館(マドリード)
アダムとエヴァが、禁断の木の実を食べようとしている場面。
木版画で書物の挿絵を生業としていたデューラーは、二度ヴェネツィアを訪れ、同地のルネサンス美術に触れます。それまで北方絵画の伝統にはなかった、理想的で美しい人体の数学的比率を、イタリアの芸術家のように研究し、絶対的な美や調和といったものに取り組みました。
「上部ドイツ生まれのアルブレヒト・デューラーは、聖母マリアのご出産の1507年後に、これを制作」
古代ローマでは、ウィトルウィウスの『建築十書』にあるように、8頭身が理想の肉体比率とされており、デューラーもはじめ、それに倣って人体を描いていました。
下の絵は、油彩よりも3年早く制作された、銅版画の《アダムとエヴァ》
1504年 銅版画
24.8x19.0㎝
古代彫刻から学んだ理想的な人体のプロポーションで描かれています。
これを見ると、油彩の方があきらかにほっそりで、人体が引き伸ばされているのがわかりますね。
デューラーは2度目のイタリア旅行から戻ると、理想的といわれる人体美に、ゴシック的な細長い比例を採り入れ、9頭身で描いています。のちのマニエリスムを予感させるものでもあります。
贋作も多く模倣防止のため、名前の頭文字「A」と「D」を組み合わせたモノグラムを世界で初めて用いています♪
アルブレヒト・デューラー
Albrecht Dürer
ドイツ 北方ルネサンス
1471年5月21日-1528年4月6日
北方ルネサンス最大の画家
イタリア美術から遠近法や人体比率などを学び、ドイツにルネサンスをもたらす。
現存する油彩は60点、版画は400点あまり。
【参考図書】
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013
知識ゼロからの名画入門 永井龍之介監修 株式会社幻冬舎 2016
【参考URL】
国立西洋美術館 https://collection.nmwa.go.jp/G.1980-0001.html 2021年7月10日閲覧