
《雨夜の宮詣(見立蟻通明神》
1767年頃 中判錦絵
27.6x20.5㎝ 東京国立博物館
鈴木春信(すずきはるのぶ/1725-70)は、江戸時代中期の浮世絵師。
錦絵誕生に大きな役割を果たしました。
1760年代、絵暦(えごよみ/趣向をこらしたカレンダー)のブームの中で、彫師や印師と協力しながら多色刷り木版画を開発します。これが錦絵の誕生です!
それまで手彩色か、限定した色数にすぎなかった浮世絵版画の彩色法は、錦絵の開発によって革新的な飛躍を遂げました。
この絵《雨夜の宮詣(見立蟻通明神)》の上部には、小倉百人一首にもおさめられた、源重之(みなもとのしげゆき)の和歌が記されています。
春信の描く細身で可憐、繊細な表情の美人画はとても人気がありました。
4級 過去問/Q.89

《婦女人相十品 ポッピンを吹く娘》
江戸時代 大判錦絵
38x24.5㎝ 東京国立博物館
喜多川歌麿(きたがわうたまろ/1753頃-1806)は、江戸時代最大の版元の蔦屋重三郎(つたやじゅうさぶろう)に見出され、活躍した浮世絵師!
1790年代初めから、美人大首絵(おおくびえ)シリーズを世に出します。
役者絵によく使われた、上半身のみを描く手法を、美人画に応用しました。
この《婦女人相十品 ポッピンを吹く娘》は、若い娘がビードロ(ポッピン)で遊ぶ様子を描いたもの。
クローズアップした表情にさまざま女性の心理を写し、官能美をたたえたこのシリーズは、大きな人気を集めます。
しかし徳川幕府の風俗取り締まりにふれ、手鎖の刑に……
因みに「手鎖の刑」(てぐさりのけい)は、前に組んだ両手に鉄製のひょうたん型の手錠をかけて、一定期間自宅で謹慎させるもののようです。
因みに「手鎖の刑」(てぐさりのけい)は、前に組んだ両手に鉄製のひょうたん型の手錠をかけて、一定期間自宅で謹慎させるもののようです。

歌麿を見出した蔦屋重三郎は、東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)も見出した名プロデューサー♪
その蔦屋重三郎にあやかっての、あの「TUTAYA」だそうですね。
4級 過去問/Q.90

《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
1831-34 横大判錦絵
25.4x37.3㎝ 山口県立美術館・浦上記念館
葛飾北斎(かつしかほくさい/1760-1849)の《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》ですね!
北斎は江戸時代後期の浮世絵師。
浮世絵を学ぶかたわら狩野派も学び、 さらに琳派や洋風画なども研究しています。

北斎 自画像 1839年(79歳)頃
《富岳三十六景》を発表したのは、1831年頃からで北斎72歳の頃!
「富嶽」は富士山の別名 。
各地からの富士山の景観を描いたもので、全部で46図あります。
各地からの富士山の景観を描いたもので、全部で46図あります。
当初は36図の予定が、大反響により10図が追加出版!
主版の36図は「表富士(おもてふじ)」
追加の10図は「裏富士(うらふじ)」
と呼ばれます。
当時流行していた「ベロ藍」※こと、プルシャンブルーを使っています。
絵の輪郭線を、「表富士」では「ベロ藍」を、「裏富士」では「墨」を使って描いています。
改号すること30回、
引越すること93回、
90まで生きた北斎、生涯に3万点を超える作品を発表しました。
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4級 過去問/Q.91

《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
1857年 大判錦絵
36.3x24.1㎝ 山口県立美術館・浦上記念館
歌川広重(うたがわひろしげ/1797-1858)ですね。
15歳で歌川豊広に入門しています。

3代豊国筆 1858年 死絵(死去した時、訃報と冥福を祈って版行された浮世絵)
《名所江戸百景》は全119作品!
59歳頃からの作品で、61歳で亡くなる直前まで制作されました。
春夏秋冬の4つの季節で構成されていて、この《大はしあたけの夕立》は夏の部です。
この絵ゴッホも模写していますよ。
この絵ゴッホも模写していますよ。
広重もベロ藍を使っており、その鮮やかな透明感のある色は、欧米では「ヒロシゲブルー」ともいわれます。
もうひとつ有名なのが《東海道五十三次》。
東海道の53の宿場に、出発地「日本橋」と、到着地「京師」(京都)を足した全55作です。
東海道の53の宿場に、出発地「日本橋」と、到着地「京師」(京都)を足した全55作です。

《日本橋》

《京師》(京都)
4級 過去問/Q.92

《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》
1847年 大判錦絵
35.5x24.8㎝ 山口県立美術館・浦上記念館
35.5x24.8㎝ 山口県立美術館・浦上記念館
歌川国芳(うたがわくによし/1797-1861)は、初代 歌川豊国(とよくに)に学んだ、江戸末期の浮世絵師。

渡辺崋山像
《みかけハこハゐがとんだいゝ人だ》は、国芳が50代前半で描いたもので、戯画のうち「寄せ絵」と呼ばれるもの。
よーく見ると…… 目も 鼻も 口も 耳も 手も……
男たちが集まってつくり出されたユニークな作品です!
男たちが集まってつくり出されたユニークな作品です!
おもしろですね~
国芳は武者絵で一世を風靡しましたが、この絵のような戯画や、時の政治を風刺した浮世絵、美人画、風景画など、なんでもこなしました。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定4級問題[入門編 introduction] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019