《聖母の死》
1601~1605/06年 油彩・キャンヴァス
369x245㎝ ルーブル美術館(パリ)
「聖母マリアの死」という特別で象徴的な場面を、カラヴァッジョ(1571-1610)は極めて現実的な死の場面として描きました。
だらりと垂れ下がった左手…
むき出しの足…
簡素なベッド…
そのリアルな迫力が人々に恐怖を与えるとして、依頼主の聖堂から受け取りを拒否されています……
人物を闇の中から浮かび上がらせる光の劇的な効果は、カラヴァッジョの得意とするところ。
のちに「光の魔術師」と呼ばれるレンブラントや、「夜の画家」と呼ばれるラ・トゥールらへ、大きな影響を与えています。
本名は、ミケランジェロ・メリジ・ダ・カラヴァッジョ。
あの彫刻家、ミケランジェロと同じ名前だったんですねー。
しかしあまりにも偉大な名前だったので、カラヴァッジョ(住んでいた町の名前)の方で定着したようです。
4級 過去問/Q.27
《聖テレサの法悦》
1647-52年 大理石 H350㎝
サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア聖堂(ローマ)
ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ(1598-1680)は、ミケランジェロと並ぶ天才彫刻家。
早くから才能を認められローマを中心に活躍しました。
《自画像》
1630-35年 ボルゲーゼ美術館(ローマ)
この作品は、16世紀スペインに実在した聖女テレサが神と出会い、その喜びに満たされる奇跡の場面です。
その瞬間的な動作や表情、衣類の材質感などを、大理石で表現しています。
ベルニーニは建築家としても優れ、この礼拝堂の内装のデザインから、すべてを手掛けています。
バチカンのサン・ピエトロ広場の造営にも携わっています!
「ベルニーニはローマのために生まれ、ローマはベルニーニのためにつくられた」と称賛されました。
4級 過去問/Q.28
《マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸》
(連作《マリー・ド・メディシスの生涯》より)
1621-25年 油彩・キャンヴァス
394x295㎝ ルーブル美術館(パリ)
マリー・ド・メディシスは、イタリアの大富豪メディチ家の娘。
フランス王アンリ4世の2番目の王妃で、ルイ13世の母です。
描いたのは、ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)。
《自画像》
1623年 ロイヤルコレクション(イギリス)
ルーベンスは、《マリー・ド・メディシスの生涯》として、21点の連作を描いています。この絵はそのうちの6番目。
マリーは自らの権威確立のために、ルーベンスに連作を依頼します。
ルーベンスは、政治的に功績のないマリーの生涯を、神話になぞらえてドラマティックに描くことで、王妃としての権威を表そうとしました。
しかしすべての作品が完成した頃には、マリーは失脚してしまいます……
素晴らしい歴史画・宗教画を多数描いたルーベンス。
やっぱり『フランダースの犬』が浮かびます。
《キリスト降架》
1611-14年 油彩・板
420.5x320㎝ 聖母大聖堂(アントウェルペン)
4級 過去問/Q.29
《チャールズ1世の肖像》
1635年頃 油彩・キャンヴァス
266×207㎝ ルーブル美術館(パリ)
アンソニー・ヴァン・ダイク(1599-1641)は、バロック期のフランドル出身の画家。
《自画像》 1621年(22歳)頃
ルーベンスの工房で弟子として働いたのち、イタリア留学を経て、イギリス王チャールズ1世の宮廷画家へ。
上流階級の華麗な肖像画を多く描いています。
この絵はチャールズ1世が狩りに出て、ひと休みしているところで、《狩猟場の王》とも呼ばれる作品です。
形式ばった堅苦しい肖像画ではなく、威厳を持ちながらも人間味あふれる描写ですね。
このような人物と風景画の組み合わせや構図は、18世紀のイギリスの肖像画や風景画の発展に、大きな影響を与えています。
4級 過去問/Q.30
《夜警》
1642年 油彩・キャンヴァス
379.5x453.5㎝ アムステルダム国立美術館(オランダ)
レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)は、オランダの画家。
「光の魔術師」「光の画家」とも呼ばれます。
《自画像》 1660年(54歳)
《夜警》は、町の自警団のメンバーたちを描いた集団肖像画です。
当時、裕福な市民がお金を出し合って、肖像画を描いてもうらうのが、ステイタスシンボルでした。
正式なタイトルは《フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊》です。
そしてこれは、夜ではなく昼の情景!
保護のために塗られたニスの劣化により、黒ずんでしまっていたことから《夜警》と呼ばれるようになりました。
斜め上方からの光がドラマチックです。
この光の当て方を、現在も撮影において「レンブラント・ライト」というそうですね♪
2019年~2021年にかけての美術館内での公開修復作業が完了しています。
4級 過去問/Q.31
《真珠の耳飾りの少女》
1665年頃 油彩・キャンヴァス
44.5×39㎝ マウリッツハイス美術館(オランダ)
ヨハネス・フェルメール(1632-1675)は、ひとつ前の問題にも出たレンブラントと並んで、バロック期のオランダ絵画を代表する画家です。
フェルメール
《取り持ち女》(1965年)の左端の人物
フェルメールは生涯のほとんどを、故郷デルフトで過ごしています。
潤んだ唇…
瞳や白い真珠の輝き…
この作品は「北方のモナ・リザ」とも呼ばれています。
「フェルメールブルー」と言われるターバンの「青」は、ウルトラマリン・ブルーと呼ばれるアフガニスタン原産の宝石・ラビス・ラズリを砕いて、細かい粒子にしたものに、亜麻仁油を加えた特別な絵具。
「青の王様」とも呼ばれ、当時は黄金にも匹敵するほど高価なものでした!
また特徴的なやわらかな光は、カメラの原型である「カメラ・オブスキュラ」の原理を利用して描かれています。
遠近感や輪郭がつかみやすくなり、ピントをずらすことで、光の点を浮き上がらせることができたそう。
その光の粒を描いたフェルメールは「光の魔術師」と呼ばれています。
4級 過去問/Q.32
《ラス・メニーナス》
1656年 油彩・キャンヴァス
320.5x281.5㎝ プラド美術館(マドリード)
ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)は、スペイン・バロックを代表する画家。
市民の姿を主題に多く描き、その後宮廷画家となりマドリードへ。
この作品は後世の画家に「すべての絵画の最高位に位置するもの」と絶賛されたベラスケスの代表作です。
《ラス・メニーナス》とは、スペイン語で「宮廷の侍女たち」という意味。
17世紀当時の作品目録では《家族の肖像》とされていたようです。
スペイン王フェリペ4世の息女マルガリータ(当時5歳)を中心に、女官や次女たちが描かれています。
画面左に絵筆を持つベラスケス自身が!
そして中央奥の鏡の中に、マルガリータの両親である国王夫妻が!
つまりこの絵は、
ベラスケスが、国王夫妻をモデルに絵を描いている時に、
女官をつれたマルガリータ王女が見学に訪れた場面を、
国王夫妻からの視点で、描かれたものです!
描く 描かれる…
見る 見られる…
これらを1枚の絵の中で表現した複雑な構成…
すごいですね!究極の絵として、西洋では印象派などのどの絵よりも、はるかに高く評価されています。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定4級問題[入門編 introduction] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013