美術検定4級 過去問/Q.93~95(近代と現代の美術1/明治時代)

下図は横山大観が描いた蒔絵の一部です。 題名は?
①《生々流転》
②《慈母観音図》
③《黒船屋》
④《海の幸》
出典:美術検定実行委員会・編『知る、わかる、みえる 美術検定4級問題 入門編』 (株)美術出版社 2021  p.100
横山大観 生々流転 部分
1923年 絹本墨画・画巻 1巻 
55.3x4070㎝ 東京国立近代美術館 重要文化財
答え ① 《生々流転》
《生々流転》(せいせいるてん)は、全長40メートルにもおよぶ絵巻です!
大気中の水蒸気からできた水滴が、山や川、海を巡り、最後には龍となり、天へと昇る様子が描かれています。
 

描いたのは、横山大観(よこやまたいかん/1868-1958)。
1868年(明治元年)の水戸生まれ。
近代日本画の大家で、人物画から風景画に絵巻まで、多くの名作を残した巨匠です。

そして東京美術学校(現・東京藝術大学)の第1期生
後にその母校の助教授に!
横山大観

東京美術学校の初代校長であった岡倉天心とともに、助教授の職を退いた後、日本美術院の創設に参加。日本画の革新運動を推し進めていきました!

4級 過去問/Q.94

これら明治時代の洋画のうち青木繁の作品は?

浅井忠 春畝

青木繁 海の幸

黒田清輝 湖畔

高橋由一 鮭
出典:美術検定実行委員会・編『知る、わかる、みえる 美術検定4級問題 入門編 』 (株)美術出版社 2021  p.102
答え ② 
青木繁 海の幸
《海の幸》
1904年 油彩・キャンバス
70.2x182㎝ アーティゾン美術館
青木繁(あおきしげる)の《海の幸》
西洋画として日本で最初の重要文化財です。
青木繁(1882-1911)は、明治浪漫主義絵画の中心的存在。
東京美術学校で、黒田清輝に師事。その一方、神話や文学、哲学に傾倒します。
青木繁

1906年(24歳)頃

《海の幸》は、1904年の夏に友人たちと、千葉県館山市の布良海岸に滞在した時に描かれたもの。
大海原に照り付ける熱い日差しの中、マグロ延縄漁で活気づいた漁村の風景です。
 
絵の中に一人だけ視線の合う人物がいます!
恋人の福田たねをモデルにしたと言われています。
青木繁 海の幸 恋人たね

他も有名な作品ばかりです!

浅井忠(あさいちゅう)
浅井忠 春畝

春畝》(しゅんぽ)
1888(明治21)年 油彩・キャンヴァス

55×73㎝ 東京国立博物館 重要文化財

早春の麦畑で農作業に励む農夫の家族。
湿り気を含んだ土の香りもしそうな、おだやかな農村風景です。
 
フランスへの留学後、関西洋画壇の重鎮として、安井曾太郎梅原龍三郎など多くの後進を育てています。
正岡子規にも西洋画を教え、夏目漱石の小説『三四郎』の中に登場する、深見画伯のモデルともいわれています!
黒田清輝(くろだせいき)
黒田清輝 湖畔

《湖畔
1897(明治30)年 油彩・キャンヴァス 
69×84.7㎝
東京国立博物館(黒田記念館) 重要文化財

9年間のフランス留学後、日本にそれまで知られていなかった外光表現を取り入れ、洋画界に大きな変化を与えました。
 
湖のほとりで団扇を持つ浴衣姿の女性は、後の妻。
箱根を訪れたとき、芦ノ湖畔の岩に腰かけた姿をみて、そのまま描いたそう。
光や大気の空気感は、油絵ではなく水彩画のようです。
高橋由一(たかはしゆいち)
高橋由一 鮭

《鮭
1877(明治10)年 油彩・紙 
140×46.5㎝
東京藝術大学大学美術館 重要文化財

江戸生まれ。
本格的な油絵技法を習得した日本で最初の「洋画家」と言われています。
 
この《鮭》の、分厚い皮や身の赤さなど、まるで実物のようなリアルな絵は、当時の人々を驚かせました。
縦長であることも珍しかったようです。
 
少し前までの主流は浮世絵でした。写実的な表現がまだ少なかった頃の日本です。
文明開化で急速に洋画の技術も入ってくる中、いち早く洋画を学んだ由一です。
 
息子は尺八奏者の福田蘭堂(ふくだらんどう)。
孫は元ハナ肇とクレージーキャッツメンバーの石橋エータロー

4級 過去問/Q.95

この《黒き猫》を描いたのは?
① 今村紫紅
② 土田麦僊
③ 菱田春草
④ 竹内栖鳳
出典:美術検定実行委員会・編『知る、わかる、みえる 美術検定4級問題 入門編』 (株)美術出版社 2021  p.102
kuroki-neko-by-hishida-shunso
《黒き猫》
1910年 絹本着色 150.1x51㎝
永青文庫(熊本県立美術館寄託) 重要文化財
答え ③ 菱田春草
菱田春草(ひしだしゅんそう/1874-1911)は、東京美術学校で岡倉天心の門下生。
横山大観らと日本画の革新を目指しました。
 
菱田春草
西洋画の技術を研究して、輪郭線のない描法を試みますが、当時は「朦朧体」(もうろうたい)と呼ばれ理解されませんでした。
 
この《黒き猫》は、西洋画から得た写実と、日本美術の装飾性を融合させた晩年の代表作です。
柏の葉の輝きを裏色彩(絵絹の裏にも顔料を塗る技法)で表現しています。
       
モデルのこの猫は、近所の焼き芋屋さんからお借りしたそう。
春草は他にもいろいろな猫を描いています。
 

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定4級問題[入門編 introduction]  美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本  美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社  2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著 株式会社美術出版社  2019

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