美術検定3級 過去問/Q.71~74(ロココ美術2)

18世紀イギリスの画家、ゲインズバラについての説明は?
① ヴェネツィアの街や運河の景観を描いた
② 連作「放蕩息子の遍歴」など物語的教訓画を得意とした
③ イギリスで創設されたロイヤル・アカデミーの初代会長になった
④ 自然を背景に人物を配した田園風肖像画で人気を博した
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.46
ゲインズバラ 朝の散歩

《朝の散歩》
1785年 ナショナル・ギャラリー(ロンドン)  

答え ➃ 自然を背景に人物を配した田園風肖像画で人気を博した
トマス・ゲインズバラ(1727-1788)
ゲインズバラ
《自画像》1758-59年頃

田園肖像画や、流行服をまとった人物の肖像画で、注目を浴びた画家です。
生涯に700点以上の肖像画を残しています。

軽やかな衣装のひだや、風にそよぐ木々の表情など、みごとに描き出しました。

こちらは、広大な土地の地主夫妻の肖像画です。

ゲインズバラ アンドルーズ夫婦像

《アンドルーズ夫婦像》
1748-49年 油彩・キャンヴァス
69×119㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

イギリスでは17世紀末から18世紀、富裕階級の子弟の大陸旅行(グランド・ツアー)により、絵画が輸入されるようになります。

また1768年のロイヤル・アカデイーの創設により、美術界は活気にあふれ、様々な分野の画家たちが活躍。絵画の質が向上します。

人気があったのは、
歴史画ではなく風景画肖像画でした。

他に、イギリスで活躍したのは

ウィリアム・ホガース(1697-1764)
ウィリアム・ホガース
《画家とパグ》1745年

市民の生活を、芝居の舞台のように描いています。

ホガース 当世風結婚 第二場

《当世風結婚 第二場 結婚してまだ日も浅いというのに》
1743年 油彩・キャンヴァス
70×91㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

ホガース 当世風結婚 第四場

《当世風結婚 第四場 伯爵夫人は朝から御乱行》
1743年 油彩・キャンヴァス
70×91㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

《当世風結婚》は、落ちぶれた貴族の息子と、裕福な市民の娘の、政略結婚をテーマにした6枚の連作です。

ジョシュア・レノルズ(1723-92)
ジョシュア・レノルズ
《自画像》1776年

レノルズは、アカデミーの初代会長です。
歴史的な見たてによる肖像画を描きました。

レノルズ 悲劇のミューズに扮するサラ・シドンズ

《悲劇のミューズに扮するサラ・シドンズ》
1783-84年 油彩・キャンヴァス

ハンティントン図書館(アメリカ)

レノルズ マスター・ヘア

《マスター・ヘア》
1788-89年 油彩・キャンヴァス
77×63㎝ ルーブル美術館(パリ)

ロココイギリスにも伝わりますが、アカデミー保守的な路線をとります。

フランスの雅宴画に比べると、随分落ち着いていますよね。
「紳士の国」 イギリスでは、浮ついたロココはあまり性に合わなかったようです。

3級 過去問/Q.72

18世紀に流行したグランド・ツアーでは、この作品のような景色も注目されましたが、その作者は?
① カナレット
② ライスダール
③ ヴァトー
④ クロード・ロラン
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.46
カナレット サン・マルコ広場とその周辺

《サン・マルコ広場とその周辺》
1736/38年頃 油彩・キャンヴァス
69×94.5㎝ アルテ・ピナコテーク(ドイツ)

答え ① カナレット

カナレット(1697-1768)
本名は、ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール

カナレット

ヴェネツィア出身の画家で、故郷の街の姿を生き生きと再現しています。

イギリスでは17世紀末~18世紀にかけて、富裕階級の子弟が古典的教養教育の総仕上げとして、ヨーロッパを旅行しました。「グランド・ツアー」ですね。

彼らの最終目的地はローマ。そこで古代の文化を学びました。

旅先では様々な美術作品を収集し、その中にカナレットらが描いた都市景観画も含まれていました。

この時代の、イタリアの他の画家は

ョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ(1696-1770)
ティエポロ
ティエポロの壁画の一部で自画像とされている部分

ティエポロはバロックの重厚な色彩を、白を基調とした明るいものに変えて描きました。

ティエポロ スペインの栄光

《スペインの栄光》天井画
1762-66年 フレスコ
約1500×900㎝ マドリード王宮

ティエポロ 惑星と大陸の寓意

《惑星と大陸の寓意》
1752年 油彩・キャンヴァス
185×139㎝ メトロポリタン美術館(NY)

ピエトロ・ロンギ(1702-85)
ピエトロ・ロンギ
アレッサンドロ・ロンギによる肖像画

ヴェネツィアで活躍した風俗画家。
穏やかな描写の中に、軽妙な風刺を織り交ぜて表現しました。

ピエトロ・ロンギ

《薬剤師》
1752年 油彩・キャンヴァス
60×48㎝ カ・レッツォーニコ(ヴェネツィア)

ピエトロ・ロンギ サイ

《サイ》
1751年 油彩・キャンヴァス
62×50㎝ カ・レッツォーニコ(ヴェネツィア)

サイよりも、中央の仮面の女性が気になりますね!

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(1720-1778)
ピラネージ
死後の肖像画 1779年

都市の景観廃墟の風景で人気でした。

ピラネージ コロッセウム

《コロッセウム》
1757年 エッチング
44×70㎝

ピラネージ 跳ね橋

《跳ね橋》
1761年 エッチング
54.8×41.5㎝ 

この時代、古代遺跡の発掘も盛んだったため、それをモチーフに空想的な世界を描きました。

《跳ね橋》は想像上の牢獄で、16枚シリーズの版画です。

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3級 過去問/Q.73

この作品を描いたスペインの画家、ゴヤについての説明は?
① フェリペ4世の宮廷画家となりマルガリータ王女の肖像画を描いた
② 画僧として静かで神秘的な静物画や宗教画を描いた
③ スペインのラファエロと呼ばれる一方、庶民の姿を生き生きと描いた
④ 別荘「賢者の家」の壁に、連作《黒い絵》を描いた
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.46
ゴヤ マドリード、1808年5月3日

《マドリード、1808年5月3日》
1814年 油彩・キャンヴァス
268×347㎝ プラド美術館(マドリード)

答え ➃ 別荘「賢者の家」の壁に、連作《黒い絵》を描いた
フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)
ゴヤ

《フランシスコ・ゴヤの肖像画》
ヴィセンテ・ロペス・ポルターニャ画

1826年 油彩・キャンヴァス
93×75㎝ プラド美術館(マドリード)

イタリアへ留学後、マドリードで王宮のタピストリー下絵制作に携わります。

ゴヤ 日傘

《日傘
1777年 油彩・キャンヴァス
104×152㎝ プラド美術館(マドリード)

ゴヤ ブラインド・マンズ・バフ

《ブラインド・マンズ・バフ》
1789年 油彩・キャンヴァス
プラド美術館(マドリード)

ロココ様式の明るい色彩で、戸外で遊ぶ人々を描き、それが認められカルロス4世の即位とともに宮廷画家となります。1789年 ゴヤ43歳の時でした。

しかしその3年後 、大病を患い聴力を失います……

ゴヤ カルロス4世の家族

《カルロス4世の家族》
1800年 油彩・キャンヴァス
280×336㎝ プラド美術館(マドリード)

ゴヤ 着衣のマハ

《着衣のマハ》
1800-1805年頃 油彩・キャンヴァス
97×190㎝ プラド美術館(マドリード)

これらは聴力を失った後の作品です。

ナポレオンのスペイン侵攻や独立戦争など、不安な情勢の中で、問いの作品《マドリード、180853日》を制作します。

これはフランス軍によるスペイン民衆の虐殺の様子です。
戦争の不条理や、巻き込まれた人々の苦しみを描いています。

聴力を失った後から、次第に内省的になっていったゴヤ。
晩年は、怒りや絶望、狂気など、人間の内面を深く掘り下げた「黒い絵」シリーズを描いています。

ゴヤ 魔女の夜宴

《魔女の夜宴》 1821-1823年

ゴヤ わが子を食らうサトゥルヌス

《わが子を食らうサトゥルヌス》
1820-1823年 146×83㎝
プラド美術館(マドリード)

ゴヤ 砂に埋もれる犬

《砂に埋もれる犬》
1819-1823年 131×79㎝
プラド美術館(マドリード)

この頃はロマン主義にくくられます。
それにしても、同じ作家とは思えない作風の変化ですね!

3級 過去問/Q.74

ロココ期のイタリアで美術の中心となっていた都市は?
① ローマ
② フィレンツェ
③ ヴェネツィア
④ ミラノ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.46
答え ③ ヴェネツィア

ヴェネツィアで活躍したのが、2つ前の問題(Q.72)に出てきた、カナレット(風景画)や、ティエーポロ(歴史画による室内装飾)、ロンギ(風俗画)などです。

ピラネージ(都市景観画・廃墟の風景画)は、ローマで活躍しました。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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