ロココ美術

フラゴナール ぶらんこ
フラゴナール《ブランコ》

ロココ美術の特徴
18世紀の初頭からフランス革命のころまで(1710年代~60年代にかけて)
フランスを中心とした欧州各地に広まった美術の総称
・「ロココ」の由来は装飾用語の「ロカイユ」(16世紀の庭園の人工洞窟にはめ込まれた小石や貝殻の装飾を表す言葉)
・17世紀の厳格な古典主義に反発する流れ
貴族や裕福な市民の館が舞台
・甘く優雅な雰囲気、快楽
・軽やかで開放的、親しみやすさ
市民の日常を主題とした画家も登場
・王立アカデミーの設立
・金工、陶磁器など工芸装飾が花開く
・優美さと洗練、室内装飾が円熟期を迎える

絵画/主な作家
 ヴァトー(フランス) 雅宴画(フェート・ギャラント)の創始者
 プーシェ(フランス) 神話画、宮廷肖像画
 フラゴナール(フランス) 雅宴画を発展、ロココ後期の代表
 ラ・トゥール(フランス) 肖像画、パステル画
 シャルダン(フランス) 中産階級の日常を主題
 ホガース(イギリス) 風刺に富んだ庶民の暮らしを描く 
 レノルズ(イギリス) アカデミー初代院長、肖像画 
 ゲインズバラ(イギリス) イギリス風景画興隆の先駆者 
 ティエーポロ(イタリア) ヴェネツィア派最後の巨匠、天井画
 カナレット(イタリア) 都市景観画(ヴェドゥータ)
 ロンギ(イタリア) 生き生きとした市民の生活を描く
 ピラネージ(イタリア) 古代ローマ遺跡の空想的な建築表現、版画
 ゴヤ(スペイン) スペインの巨匠 晩年はロマン主義

工芸/主な作家・工芸品
 クレサン(フランス) 家具師、彫刻・金工家
 セーヴル(フランス) ポンパドゥール・ピンクや王の青、宮廷趣味
 マイセン(ドイツ) 花卉文様や神話主題、東洋の影響

建築/主な建築家
 ボフラン(フランス) 楕円形の間
 ガブリエル(フランス) プティ・トリアノン
 ミック(フランス) 愛の神殿
 ツィンマーマン兄弟(ドイツ) ヴィース巡礼教会

ルイ14世が亡くなった後のフランスで、それまでの厳格な古典主義に反発するように、ロココ美術が誕生します。

曲線軽やかな色彩装飾的優美な貴族主義の様式で、男女の愛官能をテーマにした作品が描かれるようになりました。

一方、ごく普通の市民の生活や、日常の暮らしも描かれました。

ヴァトー

ヴァトー

ジャン=アントワーヌ・ヴァトー
Antoine Watteau
1684年10月10日~1721年7月18日
フランス

初期のロココ様式を代表する画家。優雅で軽やかな作風で、ロココの絵画スタイルをつくる。「雅びな宴」と呼ばれ、愛を語り合う若い男女を多く描く。

ヴァトー シテール島の巡礼

《シテール島の巡礼》
1717年 
油彩・キャンヴァス
129x194㎝ 
ルーブル美術館蔵(パリ)

ヴァトー シテール島の巡礼

雅宴画(がえんが/男女が戸外で楽しむ愛の宴の情景で、上流社会の風俗や貴族趣味を反映したもの)という新たなジャンルの画家として、アカデミーに入会を認められた作品です。

シテール島にやってきた若い男女が、ヴィーナス像への巡礼を終えて、帰路につくまでの様子が描かれています。
貴族の娯楽を、幻想的で豊かな色彩で描いた、ヴァトーの中期の代表作。

シテール島は、地中海のキティラ島のこと。フランス語で「シテール」と呼ばれます。愛の女神ウェヌス(ヴィーナス)が流れ着いた場所とされる愛の聖地。幸福な恋愛を願う恋人たちの理想郷として、文学や美術で取り上げられました。

シテール島

ヴァトーの他の代表作はこちらを👇

ブーシェ

フランソワ・ブーシェ
François Boucher
1703年9月29日-1770年5月30日
フランス

ヴァトーの死後、ルイ15世の時代を代表する画家。解放的で明るい官能性で、柔らかく優美な女性の裸体画を得意に。広く人気を博し、ロココのイメージ形成に大きな役割を果たす。

ブーシェ ポンパドゥール夫人

《ポンパドゥール夫人》
1756年 
油彩・キャンヴァス
212x164㎝ アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)

その他の美しい女性画はこちらを👇

フラゴナール

フラゴナール

ジャン=オノレ・フラゴナール
Jean-Honoré Fragonard
1732年4月5日-1806年8月22日
フランス

ロココ盛期~末期にかけて活躍。
甘美で官能的、時には挑発的ともいえる風俗画や、軽妙で軽薄、非道徳的な貴族社会を描く。

フラゴナール《シーソー》

《シーソー》
1750-52年 油彩・キャンヴァス
120×95 cm ティッセン=ボルネミッサ美術館(マドリード)

フラゴナール 逢引き

《逢引き》
1771-72年頃 油彩・キャンヴァス
フリック・コレクション(ニューヨーク)

その他の代表作はこちらを👇

ラ・トゥール

モーリス・カンタン・ド・ラ・トクール

モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール
Maurice Quentin de La Tour
1704年9月5日-1788年2月17日
フランス

ロココ期を代表するフランスの肖像画家、パステル画の巨匠。ルイ15世の宮廷画家として活躍。

ポンパドゥール夫人の肖像 モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール

《ポンパドゥール夫人の肖像》
1748-55年頃 パステル
175x128㎝ ルーブル美術館(パリ)

👇多くの肖像画を残しています。

シャルダン

ジャン シメオン シャルダン

ジャン=バティスト・シメオン・シャルダン
Jean-Baptiste-Siméon Chardin
1669年11月2日-1779年12月6日
フランス

ロココ最盛期に活躍。繊細なタッチで詩情あふれる静謐な作品を描く。宮廷や貴族たちの甘美な世界ではなく、ごく普通の市民の生活や、日常の暮らしの中にある静物を描く。サロンでの評価は高く、ルーブル宮殿にアトリエ兼住居を授かっている。

baptiste-siméon-chardin_

《食前の祈り》
1740年 
油彩・キャンヴァス
49.5x38.5㎝ 
ルーブル美術館(パリ)

シャルダン《銅製の給水器》

《銅製の給水器》
1733
年 油彩・キャンヴァス
28.5x23㎝ ルーブル美術館(パリ)

シャルダン ラケットを持つ少女

《ラケットを持つ少女》
1737年 
油彩・キャンヴァス
81x65㎝ 個人蔵

シャルダン 銀のゴブレットとりんご

《銀のゴブレットとりんご》
1768年頃 
油彩・キャンヴァス
33x41㎝ ルーブル美術館(パリ)

18世紀に入ると、経済力を高めた市民階級の美術愛好家が増え、ロココ時代ではありながら、静物画風俗画の需要が高まります。それに答えた代表的な画家がシャルダンでした。

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ロココ/絵画(イギリス)

外国人画家が活躍していたイギリス美術界でしたが、ホガースの登場によって、イギリス人によるイギリス絵画が台頭し始めます。

1768年にはロイヤル・アカデミーが創設され、美術界は活気にあふれます。

雅宴画がブームだったフランスと違い、アカデミーは堅実で現実性を重視様々な分野の画家たちが活躍し、絵画の質が向上しました。風景画肖像画が人気となります。

ホガース

ウィリアム・ホガース

ウィリアム・ホガース
William Hogarth
1697年11月10日~1764年10月26日
イギリス

フランスロココ美術の明るい色彩や、軽やかなタッチの影響を受けつつ、当時のイギリスの風俗を鋭く、風刺絵画や銅版画で表現。

《当世風結婚》は、落ちぶれた貴族の息子と、裕福な市民の娘の政略結婚をテーマにした6枚の連作。婚約に始まり、やがてうまくいかず、2人とも死んでしまうという悲しい結末です。

第1場《婚約万端整って》
ホガース 当世風の結婚 1

1743年頃 油彩・キャンヴァス 
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

☆花婿の父は血筋をアピール。花嫁の父は契約書をチェックしています。左端の花嫁と花婿はお互い知らんぷり。

第2場《結婚してまだ日も浅いというのに》
ホガース 2 当世風の結婚

☆朝帰りの夫と、掛けトランプに明け暮れた妻。
しらけた夫婦に執事もあきれ顔。

ホガース 当世風の結婚 2場 詳細
第3場《インチキ医者に駆け込んで》
ホガース 当世風の結婚 3

☆浮気夫は娼婦と共にヤブ医者へ。2人とも梅毒に…

第4場《伯爵夫人は朝から御乱交》
ホガース 当世風の結婚 化粧の間
ホガース 当世風の結婚 化粧の間 詳細
☆朝の身支度に生演奏。 どうやら妻も弁護士と浮気しているよう…
第5場《狂刃に倒れた伯爵》
ホガース 当世風の結婚 5

☆妻の裏切りの場に踏み込んだ夫。
愛人は夫を刺して窓から逃走…

第6場《伯爵夫人は覚悟の自害》
ホガース 当世風の結婚 6

☆愛人は絞首刑。
それを新聞でしった妻は服毒自殺…

当時は、階級を超えて政略結婚も行われるようになり、貴族の家は財産的な援助を、市民の家は家柄をそれぞれ相手に求めました。

市民の生活を、風刺に富んだ芝居の舞台のように描きました。

レノルズ

ジョシュア・レノルズ

ジョシュア・レノルズ
Joshua Reynolds

1723年7月16日-1792年2月23日
イギリス

ロイヤル・アカデミーの初代院長
歴史的な見たてによる肖像画を描く

ジョシュア・レノルズ

《悲劇のミューズに扮するサラ・シドンズ》
1783-84年 油彩・キャンヴァス
239.4x147.6㎝

ハンティントン・ライブラリー(サン・マリノ)
☆女優 サラ・シドンズ(Sarah Siddons/1755~1831)が、悲劇の女神を演じた姿。

レノルズ マスター・ヘア

《マスター・ヘア》
1788-89年 
油彩・キャンヴァス
76x62㎝ ルーブル美術館(パリ)

ゲインズバラ

トマス・ゲインズバラ

トマス・ゲインズバラ
Thomas Gainsborough
1703年9月29日-1770年5月30日
フランス

田園肖像画や、流行服をまとった人物の肖像画で注目を浴びる。生涯に700点以上の肖像画を残す。イギリス風景画の先駆者。

トマス・ゲインズバラ 朝の散歩

《朝の散歩》
1785年 
油彩・キャンヴァス
236.2
x179.1㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

若い男女が手を取り合って散策する場面で、ゲインズバラ晩年の傑作のひとつです。軽やかな衣装のひだや光沢、風にそよぐ木々の表情などを、繊細なタッチで描き出しています。

ゲインズバラ アンドリューズ夫妻

《アンドリューズ夫妻》
1750年 油彩・キャンヴァス 
69.8
x119.4㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

サラ・シドンズ ゲインズバラ

《シドンズ夫人》
1785年 油彩・キャンヴァス 
126x99.5㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

ロココ/絵画(イタリア)

18世紀のイタリア絵画の中心地はヴィネツィアです。

室内装飾では、バロックの重厚な色彩や重量感が取り去られ、自由な表現となります。市民の生活や、都市景観画も描かれました。

イギリスからは富裕階級の子弟が、古典的教養教育の総仕上げとしてヨーロッパを旅行し(グランド・ツアー)、最終目的地のローマで、古代の文化を学びました。彼らは旅先で様々な美術作品を収集しました。(イギリス絵画の質の向上に大きな影響をあたえています。)

ティエーポロ

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
Giovanni Battista Tiepolo
1696年3月5日-1770年3月27日
イタリア

清らかで軽やかな色彩、躍動感のある表現。ドイツやスペインに招かれ、装飾事業を手掛ける。

ティエーポロ《スペインの栄光》
PMRMaeyaert, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:PMa_E_137_Madrid.jpg

《スペインの栄光》
1762-66年 
油彩・キャンヴァス
マドリード王宮

ティエポロ 惑星と大陸の寓意

《惑星と大陸の寓意》
1752年 
油彩・キャンヴァス
メトロポリタン美術館(アメリカ)

ティエポロ《オリュンポス山と四大陸の寓意》

《オリュンポス山と四大陸の寓意》
ヴェルツブルク司教館(ドイツ)

バロックの重厚な室内装飾に学びながら、色彩を白を基調とした明るいものに変え、重量感を取り除いた人体表現です。歴史にとらわれない自由な画面をつくりだしています。

カナレット

カナレット

カナレット
Canaletto
1697年10月18日~1768年4月19日
イタリア・ヴェネツィア

ヴェネツィアの美しい街並みや運河を生き生きと再現。1746年にロンドンへ招かれて10年ほど滞在。イギリスの風景画に大きな影響を与える。

カナレット サン・マルコ広場とその周辺

《サン・マルコ広場とその周辺》
1730-40年頃 油彩・キャンヴァス
アルテ・ピナコテーク(ドイツ)

カナレット サン・マルコの船溜り

《サン・マルコの船溜り》
1735
年頃 油彩・キャンヴァス
ボストン美術館(アメリカ)

canaletto-venice-piazza-san-marco

《北西の角から大聖堂を望むサン・マルコ広場》
1756
年頃 油彩・キャンヴァス
46.5×38㎝ 
ナショナルギャラリー(ロンドン)

まるで写真のように描かれた都市景観画(ヴェドゥータ)は、18世紀に盛んに描かれました。17世紀の理想的風景画とは違い、都市名や場所も特定することができるものです。

ロンギ

ピエトロ・ロンギ

ピエトロ・ロンギ
Pietro Longhi
1701年11月5日-1785年5月8日
イタリア

ヴェネツィア市民の生活の様子を、陽気で素朴な筆致で描く。

pietro-longhi

《薬剤師》
1752年 油彩・キャンヴァス
60×48㎝ カ・レッツォーニコ(ヴェネツィア)

ピエトロ・ロンギ

《犀》
1751年 油彩・キャンヴァス
62×50㎝ カ・レッツォーニコ(ヴェネツィア)

ピラネージ

ピラネージ

ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ
Giovanni Battista Piranesi
1720年10月4日-1778年11月9日
イタリア

都市の景観や廃墟の風景を多く手掛ける。新古典主義やロマン主義に影響を与える。

ピラネージ コロッセウム

《コロッセウム》(『ローマの景観集』より)
1757年 
油彩・キャンヴァス
236.2
x179.1㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン)  

ピラネージ 跳ね橋

761年 版画 
☆想像上の牢獄で、16枚シリーズの版画。

古代遺跡の発掘が盛んだった時代でもあり、ローマの古代遺跡をモチーフに、その広大さを強調して版画にしています。

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ロココ/絵画(スペイン)

スペインの宮廷で栄えたロココ文化は、ゴヤの初期の作品に見られます。

ゴヤというとロマン主義の作家として知られますが、初期ロココ風の作風で評価されて宮廷画家となっています。ゴヤによる王室のためのタペストリーの下絵は、貴族の遊楽の情景を表し「スペイン風の雅宴」と呼ばれています。

ゴヤ

ゴヤ

フランススコ・デ・ゴヤ
Francisco Goya

1746年3月30日~1828年4月16日
スペイン

ベラスケスと並ぶスペイン最大の画家。ロココで評価され宮廷画家へ。社会批判や挑発を含むテーマも手掛ける。代表作のほとんどは聴力を失った晩年のもの。(晩年はロマン主義)

《日傘》
1777年 油彩・キャンヴァス
104×152㎝ プラド美術館(マドリード)
※王室のためのタピストリー下絵

ゴヤ

Blind Man’s Bluff
1789年 油彩・キャンヴァス
269×350㎝ 
プラド美術館(マドリード)
※王室のためのタピストリー下絵

ゴヤ 着衣のマハ

《着衣のマハ》
1795-1980
年頃 油彩・キャンヴァス
プラド美術館(マドリード)

ゴヤ カルロス4世の家族

《カルロス4世の家族》
1800年 油彩・キャンヴァス
280×336㎝ 
プラド美術館(マドリード)
☆国王一家の集団肖像画

👇こちらで、タペストリーの下絵の数々を確認できます。
👇《着衣のマハ》の詳細はこちらを!

ゴヤは40代の時、病で聴覚を失い内向的な傾向を強めていきます。

独立戦争を機に描かれた作品では、不安な心情を描き、晩年に暮らした「聾者(ろうしゃ)の家」の壁には、内面性が強く表れた14枚の連作「黒い絵」を描いています。

ゴヤ マドリード、1808年5月3日

《マドリード、1808年5月3日》1814年 油彩・キャンヴァス
266×345㎝ 
プラド美術館(マドリード)
☆フランス軍によるスペイン民衆の虐殺の様子。戦争の不条理や巻き込まれた人々の苦しみを描いています。

ゴヤ 黒い絵 我が子を食らうサトゥルヌス

《我が子を食らうサトゥルヌス》
1819-1823
年 油彩・キャンヴァス
146×83㎝ 
プラド美術館(マドリード)

ゴヤ 黒い絵 魔女の夜宴

《魔女の夜宴》
1821-1823
年 油彩・キャンヴァス
140.5×435.7㎝ 
プラド美術館(マドリード)

ロココからは想像もつかない変化ですね…

ロココ/工芸

・工芸史の黄金期
・曲線的、繊細、軽やか、小ぶりなもの
・インテリアや家具、食器など、貴族の日用品に反映される
・金工、服飾、陶器の分野で質の高い作品が生まれる
・やがて簡素な直線様式へ

シャルル・クレサン

シャルル・クレサン(Charles Cressent/1685-1768)は、フランスの家具職人、彫刻家、鋳金細工師として活躍しました。
ロカイユやアラベスクの模様に金をかぶせたブロンズ細工など、華やかなの家具をつくりました。

箪笥 シャルル・クレッサン
Charles Cressent, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Charles_Cressent,_Chest_of_drawers,_c._1730_at_Waddesdon_Manor.jpg

《箪笥》
1730年頃 ワデスドンマナー(イギリス)

シャルル・クレサン チェスト
Sailko, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons

1735年頃 カルースト・グルベンキアン美術館(リスボン)

セーヴル

セーヴルは18世紀、フランスで発展した磁器です。フランス宮廷趣味を反映し、華やかで優美な花卉文様や彫刻的装飾が特徴です。
ポンパドゥール夫人の支援によって王立窯として設立されました。
ポンパドゥール・ピンク」や「王の青」といった、気品あるあでやかな釉と、草花などの美しい絵付けの甘く愛らしい作品を生み出しました。

セーヴル 船形ポプリ壺
Manufacture nationale de Sèvres, CC0, via Wikimedia

1757-58年

セーヴル
Manufacture nationale de Sèvres, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:S%C3%A8vres_porcelain_manufactory,_Fan-shaped_jardiniere_and_stand,_1758_at_Waddesdon_Manor.jpg

1758年 

セーブル 花瓶
Manufacture nationale de Sèvres, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia

1760年頃

セーヴル ルイ16世のためにつくられた花瓶

1778-82年 

👇こちらのサイトで、セーヴルの船形ポプリ壺について、詳しく紹介されています。

マイセン

1710年にドイツマイセン(ゼクセン州)で誕生し、ヨーロッパ初の硬質磁器を生産しました。東洋磁器(中国・日本の伊万里焼)の影響を受けています。幾何学模様や東洋風モチーフ、また神話や自然を題材にしています。(セーヴルよりも40年程早く生産が始まっています。)

マイセン カップと皿
Johann Gregorius Höroldt, CC0, via Wikimedia Commons

1725年 

マイセン ティーポット

1724-25年 

マイセン ティーポット
World Imaging, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Meissen_hard_porcelain_teapots_circa_1720_decorated_in_the_Netherlands_circa_1735.jpg

1735年頃

マイセン ディッシュ
Daderot, CC0, via Wikimedia Commons

1740年

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ロココ/建築

・市中の(ホテル)や市外の小離宮が建てられる
・各室も居住性を重視した小規模なものに
・優雅で繊細、洗練された室内装飾
・芸術と生活の融合
・装飾で区切りをなくした壁と天井
白地に金モールの多用、曲線
・愛の物語、キューピッドの浮彫
・大きな窓や鏡、シャンデリア
・象嵌や漆塗り、寄木細工など、技術の組み合わせ

ボフラン

ジェルマン・ボフラン

ジェルマン・ボフラン
Germain Boffrand
1667年5月16日-1754年3月19日
フランス

ロココを代表する建築家。宮殿や貴族の邸宅の設計を手掛け、華やかな装飾と優雅なデザインで知られる。

オテル・ド・スービーズ
Marko Kudjerski from Toronto, Canada, CC BY 2.0 , via Wikimedia Commons

ホテル・ド・スービーズ(現フランス国立公文書館)

スービーズ館 楕円形の間
Neoclassicism Enthusiast, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Salon_Oval_de_la_Princesse_of_the_H%C3%B4tel_de_Soubise_(Paris).jpg

楕円形の間

フランス屈指の名門スービーズ家の邸宅で、ボフランによって改築されました。
2階にある楕円形の間は、白地の壁に金色のロカイユ装飾、天井にかけて曲面で構成されています。植物などをモチーフにした縁取りや、キューピッドの浮彫があしらわれ、ロココ室内装飾の代表です。

フランス革命後は公文書館として利用され、現在も「フランス国立公文書館」として活用されています。
マリー・アントワネットの遺書や、ジャンヌ・ダルクの手紙など、フランス史上の重要人物に関する多くの古文書が展示されています。

ガブリエル

アンジュ=ジャック・ガブリエル

アンジュ=ジャック・ガブリエル
Ange-Jacques Gabriel
1698年10月23日-1782年1月4日
フランス

建築家
ルイ15世時代の宮殿や公共施設を設計。古典主義とロココを融合させたデザインが特徴。

プチ・トリアノン
ToucanWings, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vue_a%C3%A9rienne_du_domaine_de_Versailles_par_ToucanWings_-_Creative_Commons_By_Sa_3.0_-_055.jpg

プチ・トリアノン 1762-68年 

Starus, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Petit_Trianon_-_Fa%C3%A7ade_ouest_(2).jpg

西側ファサード

ダイニングルーム

サロン

プチ・トリアノンは、ヴェルサイユ宮殿の庭園にある離宮のひとつです。ルイ15世の愛妾ポンパドゥール夫人の為に建てられたもので(夫人は完成前に亡くなっています)、後にルイ16世が、王妃マリーアントワネットに与えた離宮です。

シンプルな四角形の建物で、4面のファサード(正面)を持ちます。

世紀後半、ギリシア・ローマ美術への関心が高まりから(新古典派様式への移行期)、古代風の柱や、直線のデザインもみられます。

ミック

リシャール・ミック
Richard Mique
1728年9月18日-1794年7月8日
フランス

建築家
特にルイ16世の時代に多くのロココ様式の建築を手掛ける。

愛の神殿 1778年
Starus, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Temple_de_l%27Amour_(1).jpg

愛の神殿
1778年 ヴェルサイユ宮小トリアノン庭園アモー内

ミック 愛の神殿
Moonik, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Temple_de_l%27Amour_de_Versailles_001.JPG

マリー・アントワネットが、ヴェルサイユ宮殿内に造らせた小さな神殿です。
田園風景の中に点在する建物や装飾が特徴的な「アモー」と呼ばれるエリアに位置しています。
こちらも古典主義様式と結びついた、ロココ後期のものです。

ツィンマーマン兄弟

ドミニクス・ツィンマーマン(Dominikus Zimmermann/1685-1766)は、ドイツ・ロココを代表する建築家です。画家である兄のヨハン・バプティスト・ツィンマーマン(Johann Baptist Zimmermann/1680-1758)と共に、装飾豊かな教会を手掛けました。

ヴィース巡礼教会
Majo statt Senf, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Santuario_Wieskirche_-_panoramio_retusche.jpg

ヴィース巡礼教会(ドイツ)
1745-54年

ヴィース巡礼教会
Llez, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wieskirche_18.jpg
ヴィース巡礼教会
Llez, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Wieskirche_01.jpg

このヴィース巡礼教会は、外観はシンプルですが、内部は「天から降ってきた宝石」と称賛された豪華な装飾です。
ロココ様式の最高傑作とされ、ユネスコの世界遺産にも登録されています。

【参考図書】
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著  宝島社 2018
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門 佐藤晃子著 株式会社美術出版社 2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013

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