
◆マニエリスムの特徴
・16世紀、イタリアで展開した美術様式(後期ルネサンス)
・社会的にも宗教的にも不安定な時代
・不安感漂う緊張感のある作品
・「様式・手法」を意味する「マニエラ」が語源
・ねじれたポーズ
・極端な長身化
・冷たく鮮やかな色調
・表面のなめらかな仕上げ
・短縮法や遠近法や明暗の誇張
・大胆な構図、非合理的空間表現
・寓意画・螺旋構図
◆主な作家
ポントルモ(初期)孤独な不安感、非現実的色彩
パルミジャニーノ(初期)極度に洗練された美の世界
ジュリオ・ロマーノ(初期)マントヴァの宮廷で活躍
ブロンツィーノ(中期)芸術的技巧と宮廷趣味の追求
ヴァザーリ(中期)画家・建築家・美術史家、多才な芸術家
ロッソ・フィオレンティーノ(中期)フォンテーヌブロー派※
名称不詳《ガブリエル・デストレとその妹》(中期)フォンテーヌブロー派
アルチンボルド(中期)奇妙な寓意的肖像画、プラハで宮廷画家
ティントレット(後期)神秘的な雰囲気、独創的
ジャンボローニャ(後期)彫刻家
エル・グレコ(後期)神秘主義的な宗教画
マニエリスム初期(1520~40年頃)
ポントルモ

ヤコポ・ダ・ポントルモ
(本名 ヤコポ・カルッチ)
Jacopo da Pontormo
1494年5月24日-1557年1月2日
イタリア
ミケランジェロやデューラー、ボッティチェリなどの作品から影響を受ける
マニエリスムの先駆者
ブロンツィーノの師

《十字架降下》
1526-28年頃
サンタ・フェリチタ教会(フィレンツェ)

《カルミニャーノの訪問》
1528年 油彩・板
202×156㎝ サン・ミケーレとサン・フランチェスコ(カルミニャーノ)
鮮やかで冷たい色使い、人物の表情やデフォルメされた体つき、浮遊感による不明確な位置関係など、不安をかきたてるような描写。
盛期ルネサンス美術を規範としながらも、それとは異なる独自の表現を模索しています。
マニエリスム中期(1540~70年頃)
技巧を洗練させ寓意性が高まる。
ヨーロッパ各地の宮廷を中心に広まる。
貴族趣味に合わせた、より華やかで装飾的な展開。
ブロンツィーノ(ブロンズィーノ)

《愛の寓意》
1545年頃 油彩・板
146.1×116.2㎝
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

《エレオノーラ・ディ・トレドと息子ジョヴァンニ》
1545年頃 油彩・板
115×96㎝
ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
作品についてはこちらを👇
ヴァザーリ

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Galeri.jpg
ウフィツィ美術館
(元フィレンツェ官庁舎)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:CorridorVasari.jpg
ヴァザーリの回廊
ウフィツィとパラッツォ・ピッティを結ぶ

《ウルカヌスの鍛冶場》
1564年頃 油彩・銅板
38×28㎝ ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

『美術家列伝』
1568年 第2版表紙
著書『美術家列伝』は、マチブーエから彼自身に至る約300年間に活躍した美術家を取り上げたもの。ミケランジェロやラファエロの「マニエラ(手法・様式)」を芸術の頂点としています。イタリア・ルネサンス美術研究の重要な資料となっています。
作者不詳

《ガブリエル・デストレとその妹》
1594年頃 油彩・板
96×125㎝ ルーブル美術館(パリ)
アルチンボルド

「四大元素」《水》
1566年 油彩・板
66.5×50.5㎝ 美術史美術館(ウィーン)

「ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像」
1566年 油彩・板
68×56㎝ スコークロステル城(スウェーデン)
詳しくはこちらを👇
マニエリスム後期(1570年以降)
カトリック改革により芸術に対する教会の統制が強まり、終焉に向かう。
明暗や遠近を強調した動きのある構成となっていく。
カラヴァッジョやカラッチの登場とともにバロックへと移行。
ティントレット

《最後の晩餐》
1592-94年 油彩・カンヴァス
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会(ヴェネツィア)
キリストが裏切り者の存在を告げる場面。上部の明かりによる強い明暗や、斜めに配されたテーブルによる遠近感、天井には天使が舞い、世俗性と神秘性の混じり合う、斬新な構図の《最後の晩餐》です。

《奴隷を解放する聖マルコ》
1548年 416x544㎝
アカデミア美術館(ヴェネツィア)
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エル・グレコ

《ラオコーン》
1610年-1614年 油彩
142x193㎝ ナショナル・ギャラリー(ワシントン)
グレコが描いた唯一の神話画。
蛇と格闘するラオコーンと2人の息子です。

《無原罪の御宿り》
1613年 油彩・板
サンタ・クルス美術館(トレド)
☆10頭身

《オルガス伯の埋葬》
1586-88年 油彩・カンヴァス
487.5x360㎝ サント・トメ教会(トレド)
今日使われている「マンネリズム(マンネリ)」も、この「マニエラ」「マニエリスム」から派生した言葉です。日本では「新鮮さに欠ける、型にはまった状態」を指す言葉として使われていますね。
[参考図書]
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 高階秀爾監修 株式会社美術出版社 2021
カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書) 宮下規久朗著 宝島社 2018
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ) 瀧澤秀保監修 株式会社三才ブックス 2019
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編 株式会社幻冬舎 2013