美術検定3級 過去問/Q.34~37(盛期ルネサンス美術2)

ミケランジェロなどを擁護し、イタリア盛期ルネサンス美術のパトロンとして有名な教皇は?
① インノケンティウス8世
② ピウス2世
③ ユリウス2世
④ レオ1世
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.30
ユリウス2世

ラファエロによる肖像画

答え ③ ユリウス2世

第216代ローマ教皇です。(現在のフランシスコ教皇は第266代)

15世紀末から16世紀初頭にかけての、盛期ルネサンス美術の主な舞台は、ローマヴェネツィアへと移ります。

ローマ教皇ユリウス2世や、レオ10世のもとで活気にあふれ、ヴェネツィア地中海貿易で繁栄します。

ユリウス2世芸術の愛好家であり、凄腕の政治家でした。

ローマを発展させるために、サン・ピエトロ大聖堂の改築や、ヴァチカン宮殿の改修、システィーナ礼拝堂の天井装飾など、大規模な芸術事業を立案し、優れた芸術家を呼び寄せました。

ミケランジェロに、システィーナ礼拝堂の天上画を描かせたのも、ユリウス2世です!

3級 過去問/Q.35

これはミケランジェロが注文を受けて制作した彫刻ですが、何のために制作されたもの?
① 教会の正面扉の装飾
② 官庁の建物の装飾
③ メディチ家の墓廟の装飾
④ マントヴァ家のパラッツォの装飾
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.30
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ミケランジェロ
1526-34年頃 大理石
サン・ロレンツォ聖堂(フィレンツェ)

答え ③ メディチ家の墓廟の装飾

これは、ジュリアーノ・デ・メディチの墓碑です。

1512年にフィレンツェの共和制が崩壊し、メディチ家が再びその支配権を確立します。
教皇ユリウス2世の跡を継いだのが、メディチ家出身の教皇レオ10世
彼はサン・ロレンツォ聖堂内に、メディチ家礼拝堂を造ります。


ミケランジェロ
に命じたのが、ロレンツォジュリアーノ兄弟墓碑制作です。

ジュリアーノ・デ・メディチ家の墓碑 ミケランジェロ 
Michelangelo, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Florenz_-_Neue_Sakristei_Grabmal_Giuliano_II.jpg

中央がジュリアーノ(弟)の彫像。古代の将軍風の鎧を身につけています。

その下には 中年の女性像《》と、壮年の男性像《》が。

一方、こちらがロレンツォ・デ・メディチ(兄)の墓碑です。

ミケランジェロ ロレンツォ・デ・メディチの墓碑
Richard Mortel from Riyadh, Saudi Arabia, CC BY 2.0 , attraverso Wikimedia Commons

中央で肘をついて瞑想中なのがロレンツォ
下には 老いた男性像《黄昏》と、若い女性像《》。


ジュリアーノ
ロレンツォは、「活動的生」と「瞑想的生」という、地上の美徳を象徴する理想像です。

下に置かれた4体の彫刻《》《》《黄昏》《》は、人間の肉体を支配する「時間の擬人像で、この世の儚さを象徴しているそう。

そして二人の視線の先、中央の祭壇には……聖母子」が✨

ミケランジェロ 聖母子 サン・ロレンツォ聖堂
Richard Mortel from Riyadh, Saudi Arabia, CC BY 2.0 , attraverso Wikimedia Commons

中央の聖母子もミケランジェロキラキラ

こちらで空間全体を確認できます👇 画像をクリックしてみてくださいね。

3級 過去問/Q.36

スフマート法や空気遠近法を考え発展させた 盛期ルネサンスの画家は?
① レオナルド・ダ・ヴィンチ
② ラファエロ
③ ミケランジェロ
④ ボッティチェリ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.30
レオナルド・ダ・ヴィンチ 岩窟の聖母

岩窟の聖母》
1483-86年  油彩・板
(19世紀にキャンバスへと移植)
199×122㎝ ルーブル美術館(パリ) 

答え ① レオナルド・ダ・ヴィンチ 

スフマートはイタリア語の「」を意味するfumoから派生した言葉で「くすんだ」とか「薄れる」という意味です。

色彩の薄い層を何層も上塗りして、深みやボリュームを出す技法で、微妙な明暗だけで形態を柔らかく浮かび上がらせています。

monaLisa-sfumato

《モナ・リザ》

何層も乾かして上塗りを繰り返すと、独特のつやに柔らかなグラデーションが生まれます。

輪郭線を描かずに、陰影の移り変わりで表現しようとしたんですね。


空気遠近法
は、遠方の対象が青みを帯びて霞むことを応用して、色彩で空間の奥行を表現する技法です(Q.23)

初めに出てきた作品、レオナルドの《岩窟の聖母》の奥の風景はまさにそうですね!

ちょっとそれますが、この作品ほぼ同じ構成でもう1点あります!

上のルーブルの作品が、初めに描かれたのですが、注文主のミラノの教会が、右端の天使の視線や指差しなどが気に入らず、受け取りを拒否

要望に合わせ修正して、弟子とともに仕上げたのが、こちらの《岩窟の聖母》です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 岩窟の聖母

岩窟の聖母》
1495-1508年  油彩・板
189.5×120㎝ ナショナル・ギャラリー(ロンドン) 

指差しがなくなって、マリアとヨハネに光輪が加えられています。

3級 過去問/Q.37

ラファエロの作品で人気を博したモチーフは?
① 筋骨たくましい神々の姿
② 理想的に構成された風景表現
③ 壮大なスケールの戦場場面
④ 優美で調和のとれた聖母子像
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.30
ラファエロ 美しい庭師

ラファエロ 《美しい庭師》
1505-1508 油彩・板
122
×80㎝ ルーブル美術館蔵(パリ)

答え ➃ 優美で調和のとれた聖母子像

ラファエロが多く描いた聖母子像は、イタリアで「マドンナ」と呼ばれるキリストの母 聖母マリアと、幼いキリストの姿が描かれたものです。

慈しみのまなざしをキリストに向ける聖母の穏やかな表情と、伸びやかなキリストの姿は、後の画家たちに、大きな影響を与えました。

一緒に描かれているのは、洗礼者ヨハネ。聖書の中には3人が揃う描写はないようですが、マリア信仰の高まりとともに人気となった主題です。

画面に安定感をもたらす効果のある三角構図で描かれています。

《小椅子の聖母》

ラファエロ 小椅子の聖母

ラファエロ
1513-14年 油彩・板
φ71㎝ ピッティ美術館(フィレンツェ)

ある日、2人の子どもを連れた美しい母親に会いますが、キャンヴァスを持っていなかったため、近くにあった酒樽の蓋に描いたと伝えられています♪

《サン・シストの聖母》

ラファエロ サン・シストの聖母

ラファエロ
1513-14年 油彩・キャンヴァス
265×196㎝ アルテ・マイスター絵画館(ドイツ)

教皇ユリウス2世からの注文で描いた作品です。
ラファエロは、ユリウス2世の肖像画を描いていましたね。(Q.34)

聖母マリア」は、キリスト教会絵画において、最も多く描かれる聖人の一人で、赤い衣青いマントが目印です!

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
増補新装 カラー版 西洋美術史  高階秀爾監修 株式会社美術出版社  2021
芸術教養シリーズ6 盛期ルネサンスから十九世紀末まで 西洋の芸術史 造形篇II 水野千依編  株式会社幻冬舎  2013
この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019
366日の西洋美術 (366日の教養シリーズ)  瀧澤秀保監修  株式会社三才ブックス  2019

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