美術検定3級 過去問/Q.117~120(キュビスム・未来派)

次の原始・古代美術のうち、下図に影響を与えたとされるのはどれでしょう?
① 古代メキシコ文明の人面
② イースター島の巨大像モアイ
③ アフリカの仮面彫刻
④ 日本の縄文時代の土偶
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.66

      パブロ・ピカソ《アヴィニョンの娘たち》
  1907年 油彩・キャンヴァス
  244×234㎝ ニューヨーク近代美術館

答え ③ アフリカの仮面彫刻

フォーヴィスムの画家たちの原色よりも、もっと強く重厚な表現を求めていたピカソ。大胆な形のアフリカや太平洋の島々彫刻に出会います。

そして制作されたのが《アヴィニョンの娘たち》
人体や顔の様子に、その原始的な彫刻の影響がみられます。

パブロ・ピカソ(1881-1973)
パブロ・ピカソ 写真

はじめはまわりに理解されず、長い間一般には公開しませんでした。

しかしブラックは、そこに時代を超えた新しさを認め、2人はやがてキュビスムを生み出します。

キュビスムとは、対象を分解して、様々な角度からのイメージで再構成する技法です。

ポスト印象主義のセザンヌが、後のキュビスムに影響を与えたという問題が以前出てきましたね。(3級Q.96

「自然の中のすべての形態を、円筒、球、円錐で処理する」というセザンヌの言葉をヒントに、ピカソブラックは、明暗法や遠近法を使わず、分解と再現によって立体表現をめざしました。

ジョルジュ・ブラック(1882-1963)
ジョルジュ・ブラック

《円卓 1911年 アーティゾン美術館

3級 過去問/Q.118

ピカソの作品に関する説明のうち、1937年に描かれた《ゲルニカ》にあてはまるのはどれですか?
① 悲しみや絶望を抱えた人々を、青を中心に暗い色調で叙情的に描いた
② 過去の巨匠たちの絵画を大胆にアレンジした
③ 新古典主義といわれる写実的なスタイル
④ 強くゆがめられたモチーフと緊迫感のある構成で、戦争の悲惨さを表した
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.66

      パブロ・ピカソ《ゲルニカ》
  197年 油彩・キャンヴァス
  350 x 776㎝ ソフィア王妃芸術センター(マドリード)

答え ④ 強くゆがめられたモチーフと緊迫感のある構成で、戦争の悲惨さを表した

ゲルニカはスペイン北部にある町の名前です。

この作品は、1937年スペイン内戦の時、この街がドイツ軍によって爆撃されたことへの、抗議として制作されました。

巾8メートル近い巨大な作品ですが、ピカソはわずか1か月で完成させています。

作品の詳細は、4級Q.59 を!

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3級 過去問/Q.119

1909年イタリアで詩人のマリネッティを中心に結成され、機械文明のダイナミズムとスピード感を賛美した運動はなんと呼ばれますか?
① 野獣派
② 機械派
③ 未来派
④ 速度派
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.66
ボッチョーニ 《空間の中で連続するユニークな形態》

ボッチョーニ 《空間の中で連続するユニークな形態》
1913年 ブロンズ
111×88.5×40㎝ ニューヨーク近代美術館

答え ③ 未来派

イタリアの詩人マリネッティは、1909年フランスの新聞『フィガロ』に「未来派宣言」を載せます。

それまでの文化や政治を否定して、近代的なスピード感と、機械に代表されるダイナミックな感覚をたたえて、芸術の新しい方向をしめしました。

時間の経過を示すように、連続して描写されるのが特徴です。

彼に賛同したのが、上の彫刻の作者、
ウンベルト・ボッチョーニ(1882-1916)
ウンベルト・ボッチョーニ 写真

《空間の中で連続するユニークな形態》の詳細は、4級Q.60 を!

ボッチョーニは画家でもありました。

ボッチョーニ《都市の成長》

ボッチョーニ 《都市の成長
1910年 油彩・キャンヴァスズ
199×301㎝ ニューヨーク近代美術館

その他、未来派の作家は

ジャコモ・バッラ(1871-1958)
散歩する犬と人間の足の動きと、そこに時間も表現。
ルイージ・ルッソロ(1885-1947)

「騒音」を出す楽器「イントナルモーリ」を発明。
電子音楽の最初の理論家。

ルイージ・ルッソロ イントナルモーリ
ジーノ・セヴェリーニ(1883-1966)
アントニオ・サンテリア(1888-1916)
建築家
antonio-sant'elia-the-new-city

 ビルデザイン案
 1914年 27×21㎝ 個人蔵

文学に始まり、美術 建築 演劇 音楽、映画にまでも影響を与えました。

「フォーヴィスム」や「キュビスム」は、批評家らによって名付けられましたが、この「未来派」は宣言によって表明し、表現を創造していきました。

3級 過去問/Q.120

1913年の展覧会「アーモリー・ショー」でスキャンダルになった作品はどれですか?
① ピカソ 《ゲルニカ》
② デュシャン 《階段を降りる裸体No.2》
③ ダリ 《内乱の予感》
④ マネ 《オランピア》
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.66
答え ② デュシャン 《階段を降りる裸体No.2》
マルセル・デュシャン(1887-1968)
マルセル・デュシャン

フランスの美術家。画家として出発します。

この作品《階段を降りる裸体No.2》は、人が階段を降りる動作を連続写真のように重ねて、空間時間同じ画面で表現したもの。

キュビスム多視点の発想に、時間の経過という未来派の表現を取り入れた作品です。

アーモリー・ショウは、1913年にニューヨークで開催された「国際現代美術展」の通称で、ヨーロッパの現代美術を本格的にアメリカで紹介した展覧会でした。
当時のアメリカの批評は、作品の内容や精神性に向けられており、デュシャンのこの作品は大きな反響を呼びました。

下図はエティエンヌ=ジュール・マレ(1830-1904)の写真。
映画撮影機の原型となる「写真銃」の発明者です。

ジュール・マレ ペリカンの飛翔

《ペリカンの飛翔》 1882年頃

こちらはイギリスの写真家、
エドワード・マイブリッジ(1830-1904)の写真。

エドワード・マイブリッジ 疾走中の馬の連続写真

《疾走中の馬の連続写真

デュシャンはこれらの写真の影響を受けています。
デュシャンが絵を描いたのは、この作品を描いた1912年頃まで。

後にダダの中心人物として、20世紀の美術にさらなる大きな影響を与えます!

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
芸術教養シリーズ7 欧米のモダニズムとその後の運動 近現代の芸術史 造形篇I 林洋子編  株式会社幻冬舎  2013

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