美術検定3級 過去問/Q.23~25(ルネサンス美術/建築)

下の図版のような、空間の奥行を表すための工夫を何と呼ぶ?
① 透視図法
② 鳥瞰図法
③ 空気遠近法
④ 蛙の遠近法
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.26
ピエロ・デッラ・フランチェスカ 聖十字架の発見と検証2

ピエロ・デッラ・フランチェスカ
《聖十字架の発見と検証》(部分)
1452-66頃 フレスコ
356x747㎝ 
サン・フランチェスコ教会(アレッツオ)

答え ① 透視図法 

透視図法は、遠近法を表現する方法の1つ。

画面に消失点を設定して、そこに向かう複数の基本線と、それに直行する水平線に基づいて、建物や人物を配置します。

一点透視図法

奥に向かって規則的に小さくなっていきます。

参考作品

ペルジーノ ペテロへの鍵の授与

ペルジーノ 《ペテロへの鍵の授与》
1481-82年 フレスコ
330×550㎝ システィーナ礼拝堂(ヴァチカン)

レオナルド・ダ・ヴィンチ 最後の晩餐

レオナルド・ダ・ヴィンチ《最後の晩餐》
1495-98年 テンペラ
420×910㎝ サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院(ミラノ)

もうひとつ、おさえておきたいのが空気遠近法です!

空気遠近法は、近くのものは濃くはっきりと、遠くのものは淡くぼかすように表現する技法です。

空気遠近法
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Atmospheric_perspective_Powietrzna.svg

空気中の塵や大気によって、同じものも近くと遠くでは 見え方が違いますよね!

参考作品
レオナルド・ダ・ヴィンチ モナリザ
モナ・リザ 詳細

レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》
1503-19年頃 油彩・板
77×53㎝ ルーブル美術館(パリ)

遠くの対象が青みを帯びて霞んでいます。

15世紀の画家たちは、三次元的空間を、二次元の画面に置き換える「遠近法」を熱心に研究しました。

他の答えも…

鳥瞰図法(ちょうかんずほう)は、字のごとく飛ぶ鳥の目から見たように、上空から斜めに見下ろしたように見える図です。俯瞰図と一緒ですね。


蛙の遠近法
!?
えー そんなのあるのーと検索してみると…… ニーチェが唱えたもの?
正確ではありませんが、下から見上げるだけで、全体を俯瞰できない見方、一方的に絶対化したような見方のことをいうようです。

3級 過去問/Q.24

『絵画論』を執筆した初期ルネサンスの建築家は?
① ブルネッレスキ
② アルベルティ
③ ジョルジョ・ヴァザーリ
④ チェンニーノ・チェンニーニ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.26
アルベルティ 絵画論 消失点を示す図

消失点を示す図

答え ② アルベルティ

レオン・バッティスタ・アルベルティは、建築 法学 古典学 数学 科学 演劇 絵画 彫刻 音楽 運動…… 多方面に才能を発揮した天才です。

アルベルティ絵画論は、絵画を「幾何学を基礎とする学問」として、遠近法や画家に必要な教養を著したもので、絵画の新しい見方を提示しました。

絵画は遠近法構成物語の、3つの要素が調和したものと考え、絵画空間を秩序づけて、その調和を重んじています。

アルベルティ 絵画論 グリッドの柱を遠近法で示す図

グリッドの柱を遠近法で示す図

建築論も著して、同時代や後世に大きな影響を与えています!

アルベルティ 建築論

1541年版(初版は1450年)

アルベルティの代表作は、サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂ファサードの設計です!

アルベルティ サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のファサード
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:FlorenceSantaMariaNovella20020318.JPG
1470年頃

ファサードとは建物の正面部分のこと。
 フランス語の façade(face、顔)が語源です。

アルベルティ サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のファサード
アルベルティ サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂のファサード
Amada44, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

オシャレですね~

そしてルネサンス最初の建築家といわれるのが、フィリッポ・ブルネッレスキです。

フィリッポ・ブルネレスキ

透視図法を使った最初の人物とされています!

古代ローマの建築を研究し、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂大円蓋を完成させています。

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂
Petar Milošević, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Florence_Duomo_from_Michelangelo_hill.jpg
サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂
Fczarnowski, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Florence_duomo_fc10.jpg
パッツィ家礼拝堂の設計も♪
パッツィ家礼拝堂
Gryffindor, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pazzi_Chapel_Santa_Croce_Apr_2008_P.JPG
パッツィ家礼拝堂
Gryffindor, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pazzi_Chapel_Florence_Apr_2008.jpg

中世時代のゴシック建築では、聖堂や教会を中心に、尖塔アーチステンドグラスが発達しましたね。

ルネサンス期の建築は、絵画や彫刻と同様の芸術作品として造られ、建築家の個性や、理想的な比率調和が重視されました✨

宮廷個人の邸宅(パラッツォ)や、市役所など公共建築にも、個性ある建物が登場するようになりました♪

3級 過去問/Q.25

花の都フィレンツェにある建築は?
① サン・ピエトロ大聖堂
② ウフィツィ美術館
③ システィーナ礼拝堂
④ コロッセウム
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.26
ウフィツィ美術館
Michelle Maria, CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons
答え ② ウフィツィ美術館 

ウフィツィ美術館は、ルネサンス時代の芸術家たちを支えた、メディチ家のコレクションをもとにした美術館です。もとはトスカーナ公国の官庁でした。

ウフィツィ」とは、イタリア語の Ufficio(英語でofficesオフィスにあたる語)に由来します。

設計はジョルジョ・ヴァザーリです。

ジョルジョ・ヴァザーリ

ヴァザーリは、『ルネサンス画人伝』(美術家列伝)の著者!
ルネサンス初期に活躍したイタリア人芸術家と、その作家の特質についてまとめられた重要な資料です✨

第2版表紙 1568年
他の答えの
サン・ピエトロ大聖堂
サン・ピエトロ大聖堂
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Basilica_di_San_Pietro_in_Vaticano_September_2015-1a.jpg
システィーナ礼拝堂
sistine-chapel
システィーナ礼拝堂
Antoine Taveneaux, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chapelle_sixtine2.jpg

ローマのヴァチカン市国ですね。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
増補新装 カラー版 西洋美術史  高階秀爾監修 株式会社美術出版社  2021
芸術教養シリーズ5 古代から初期ルネサンスまで 西洋の芸術史 造形篇I  水野千依編  株式会社幻冬舎  2013

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