美術検定3級 過去問/Q.15~18(ロマネスク美術・ゴシック美術)

11世紀~12世紀前半に、イタリアやフランスのラテン系諸国に興った下図のような建築様式は?
① ゴシック
② バロック
③ ロマネスク
④ ロココ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.22
ピサ大聖堂
Saffron Blaze, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Duomo_of_the_Archdiocese_of_Pisa.jpeg

ピサ大聖堂(イタリア)

答え ③ ロマネスク

ロマネスク美術は、10世紀後半にドイツとフランスから始まり、12世紀にはスペインまで広がります。

古代ローマの影響を強く受けています。

建築の特徴は、重厚な石壁開口部が小さく暗い内部空間
屋根が木造からで円筒形になり、壁は厚く柱は太くなり、窓は小さめです。

クリュニー修道院(フランス) 

クリュニー修道院
クリュニー修道院
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cluny-Abtei-Ostfluegel-mtob.jpg

サント=マドレーヌ大聖堂(ヴェズレー)

vézelay-abbey-the-nave-central-portal
《使徒たちに布教の使命を授けるキリスト》  1120-30年 
Dietrich Krieger, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commonshttps://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vezelay-7776-Bearbeitet.jpg
Dietrich Krieger, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Vezelay-7776-Bearbeitet.jpg

教会堂の内部へと入る扉の上部、半円形の壁面(タンパン)には、キリスト聖書の物語を主題とした彫刻が施されています。

サン=クレメンテ教会(現在はカタルーニャ美術館(スペイン)

サン=クレメンテ教会
Angela Llop, CC BY-SA 2.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Esgl%C3%A9sia_de_Sant_Climent_de_Ta%C3%BCll_(la_Vall_de_Bo%C3%AD)_-_4.jpg
栄光のキリスト サン=クレメンテ協会

《栄光のキリスト》

この問題文の「イタリアやフランスのラテン系諸国」というところで、「ラテン系」が気になりちょっと確認を。

ラテン語」はもともと、古代ローマ共和国の公用語で、カトリック教会の公用語としてヨーロッパ各地へ広まったもの!
イタリア語やフランス語、スペイン語、ポルトガル語、ルーマニア語なども、ラテン語から派生した言語でした。

スペインやポルトガルは、新大陸(アメリカ)への植民も盛んだったため、その言葉や文化が中南米で根付いています。

3級 過去問/Q.16

Q.16
建築のロマネスク様式について正しい記述は?
 ① がっちりとした壁体によって大きな窓を保持し、できるだけ多くの光を採り込んだ
② 「ロマネスク」とは「ローマ風」といった意味である
③ 教会堂建築のプランはバシリカ式ではなく、ギリシア十字型を基本とする
④ 代表的な建築としてランス大聖堂がある
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.20
サン・セルナン大聖堂 トゥルーズ
Basilica of St. Sernin, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:(Toulouse)_-_Basilica_Saint-Sernin_nave.jpg

サン・セルナン大聖堂(フランス)
ロマネスク時代最大の教会堂建築

答え ② 「ロマネスク」とは「ローマ風」といった意味である

ローマ風の」という意味ですね!

この時代には聖地巡礼が盛んになり、多数の参拝者の受け入れに適した聖堂が造られるようになりました。

上の画像のサン・セルナン大聖堂(トゥルーズ/フランス)をはじめ、スペインの聖地サンテイァーゴ・デ・コンポステーラへ向かう街道沿いの街には、多くのロマネスク教会が建てられました。

サンテイァーゴ教会

サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂
slideshow bob, CC BY-SA 2.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Catedral_de_Santiago_de_Compostela_2010.jpg
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路
Crop/edit: UploaderOriginal: See template below., CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:LocMap_of_WH_Route_of_Santiago_de_Compostela.png
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3級 過去問/Q.17

ロマネスク様式の聖堂には壁画が多く描かれましたが、ゴシック様式の聖堂を飾っていた代表的なものは?
① モザイク
② 板絵
③ レリーフ
④ ステンドグラス
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.22
シャトル大聖堂
シャトル大聖堂
答え ➃ ステンドグラス

ゴシック建築は、12世紀頃からフランス北部、イギリス、ドイツなど、ヨーロッパ北方を中心に広がりました。

ロマネスクの教会は、ヨーロッパ南部の田舎の方に散在していましたが、ゴシックの大聖堂の多くは都市の中心部に建てられました!

建築技術の向上によって、窓を大きくすることが可能となり、ステンドグラスが発達します。

シャトル大聖堂 バラ窓
Photo by PtrQs, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chartres_RosetteNord_121_DSC08241.jpg
バラ窓 シャトル大聖堂

そして、光と色彩の神秘的な聖堂や、堂内外を飾る彫刻群
キリスト教の教えヴィジュアル化して、人々を信仰に導きました✨

シャトル大聖堂 西正面扉口
Photo:Nina Aldin Thune User:Nina-no, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chartres.jpg
シャトル大聖堂 西正面扉口
シャトル大聖堂 使徒たち
側壁の円柱を背にした人像円柱

◆ノートルダム大聖堂(ランス)

ノートルダム大聖堂 ランス
bodoklecksel, CC BY-SA 3.0 >, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Reims_Kathedrale.jpg
ノートルダム大聖堂 ランス 四人の使徒
DIMSFIKAS at Greek Wikipedia, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Reims_Cathedral_-_Central_doorway.JPG
《受胎告知 御訪問》
 

13世紀になると、建築の構造にしばられない自立した彫刻像となります。

◆ケルン大聖堂(ドイツ)

ケルン大聖堂
Velvet, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cologne_cathedrale_vue_sud.jpg
ケルン大聖堂 ステンドグラス
Mkill, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Koelner_dom_nordseite_des_chors.jpg

◆サン=ドニ大聖堂(パリ)

サン・ドニ修道院
Chabe01, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Basilique_St_Denis_fa%C3%A7ade_ouest_St_Denis_Seine_St_Denis_20.jpg
サン・ドニ修道院 ステンドグラス
Photo: Myrabella / Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Basilique_Saint-Denis_chapelle_de_la_Vierge.jpg

どれもこれも美しいですね~

大聖堂 カテドラルは、より神に近づくために、先の尖った尖塔アーチ天上のイメージを生み出しました。

高さを追求したのもゴシック建築の特徴です!

※カテドラルは「椅子」や「座席」を意味するギリシア語の「カテドラ」に由来します。司教が座る椅子(司教座)のある聖堂のことで、その地域の中心となる重要な聖堂を指します♪

3級 過去問/Q.18

『ベリー公のいとも豪華なる時祷書』に代表される、宮廷趣味の優美さと装飾性、すぐれた細部描写を特色とする14世紀末頃の様式は?
① ゴシック・リバイバル
② フォンテーヌブロー派
③ 国際ゴシック
④ シエナ派
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.22
ベリー公のいとも豪華なる時祷書 6月

6月《夏草の刈り入れ》 ランブール兄弟
29x21㎝ 1413-16年 コンデ美術館(フランス

答え ③ 国際ゴシック

国際ゴシックは、ヨーロッパ各地の宮廷に生まれた共通の華やかな様式です。

14世紀中頃から宮廷や教会が、他国の芸術家に制作を依頼するようになり、芸術家の移動と交流の機会が増えます。

他の地域の芸術が相互に影響し合う中から、国を超えて共通に生まれた様式です。

その特徴は、豪華エレガント装飾的豊かな色彩、宮廷貴族の優雅さや緻密な描写 ・・・ ゴージャスです。

装飾写本など、持ち運びの可能な作品も欧州全土をめぐりました。

この時祷書(じとうしょ)は、中世フランス王国の王ベリー公ジャン1世の要請を受けて、ネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー)のランブール兄弟が作成した装飾写本です。

時祷書とは、キリスト教徒が用いる祈祷文、賛歌、暦などからなる聖務や、季節ごとの人々の暮らしなどが記されたもの!

中でもこの時祷書は、羊皮紙206葉からなる豪華な装飾写本として、国際ゴシックの傑作で、世界で最も美しい本といわれています。

ベリー公のいとも豪華なる時祷書 1月
1月
ベリー公のいとも華麗なる時祷書 8月
8月
ベリー公のいとも豪華なる時祷書 キリストの降臨
《キリストの降臨》
 
時祷書 レイモン・ディオクレの葬儀
《レイモン・ディオクレの葬儀》
 

ロマネスク時代までは、文化の担い手は修道士聖職者でした。
ゴシック時代になると、裕福な市民もそれに加わり、描かれるモチーフも宗教的なものばかりでなく、世俗のものも取り入れられるようになりました。

動植物自然描写もまた、国際ゴシックの特色です。



【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
増補新装 カラー版 西洋美術史  高階秀爾監修 株式会社美術出版社  2021
芸術教養シリーズ5 古代から初期ルネサンスまで 西洋の芸術史 造形篇I  水野千依編  株式会社幻冬舎  2013

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