美術検定3級 過去問/Q.270~274(昭和時代1945~1970年代の美術 5)

下図のポスターはだれのデザインによるものですか?
① 日比野克彦
② 栗津潔
③ 亀倉雄策
④ 横尾忠則
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.134

下図ポスターはこちらで確認を👇

答え ③ 亀倉雄策
亀倉雄策

亀倉雄策(かめくら ゆうさく/1915-97)は、新潟生まれで、戦後の日本を代表するグラフィック・デザイナー

デザインした上のポスターは、オリンピック史上初写真を使用した公式ポスターです。

過去のポスターは、どれも開催地や古代オリンピックをイメージしたイラストで構成されたものばかりです。

スポーツのダイナミックさをリアルに写真で構成したポスターに、デザイン界は衝撃をうけたそう。一般市民にも、ぼんやりとしていたオリンピックが、現実のものとして迫るポスターとなりました。

ポスターと合わせ、こちらのシンボルマークも制作しています。

亀倉雄策 東京オリンピックシンボルマーク

今見ても、シンプルでステキなデザインですね。

👇こちらのサイトで、デザイン決定の流れがわかります。

他、亀倉雄策の代表デザイン👇
知っているロゴばかりですね!

亀倉雄策 グッドデザイン賞ロゴ
亀倉雄策 Nikonロゴ
亀倉雄策 TDKロゴ
亀倉雄策 トステムロゴ
亀倉雄策 NTTロゴ

1964年のオリンピックでは、聖火リレー用トーチのデザインを柳宗理、参加メダルのデザインを岡本太郎が担当しています。

3級 過去問/Q.271

下図は1960年代にグラフィック・デザイナーとして一世を風靡し、1981年に画家に転身したアーティストのポスターですが、そのアーティストはだれですか?
① 日比野克彦
② 和田誠
③ 横尾忠則
④ 浅瀬川原平
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.134

下図はこちらのサイトで確認できます👇

《劇団状況劇場「ジョン・シルバー 新宿恋しや夜鳴き篇」》ポスター
1967年 シルクスクリーン
国立国際美術館(大阪)

答え ③ 横尾忠則

横尾忠則(よこお ただのり/1936-)は、兵庫県西脇市出身。神戸新聞社でグラフィックデザイナーとして活躍します。

1960~70年代にかけて、唐十郎の状況劇場や寺山修司の天井桟敷、土方巽の暗黒舞踏などの、反モダニズム色の強いアングラ・ポスターを多数手掛けます。

コラージュをもとにした、鮮烈なグラフィック・デザインが特徴です。

アングラ」とは、アンダーグラウンドの略で、「地下に潜った」「反体制の」という意味です。
美術館ではなく、ゲリラ的にパフォーマンスをする集団や、公園でテントを張って芝居をする劇団など、あるべき場所から外れた表現者たちを「アングラ」と呼びました。

《バラ色ダンス A LA MAISON DE M. CIVECAWA》
1966年

1980年、ニューヨーク近代美術館での「ピカソ展」に衝撃を受けて「画家宣言」します。それ以来、美術家として具象的な様々な作品を制作するようになりました。
文筆家としての一面もあり、多くの著作があります。

その他の作品はこちらを👇

横尾忠則公式サイト👇
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3級 過去問/Q.272

1951年に開館した、神奈川県立近代美術館(鎌倉館)を設計した建築家はだれですか?
① 坂倉準三
② 丹下健三
③ 黒川紀章
④ 磯崎新
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.134
坂倉準三 神奈川県立近代美術館(鎌倉間)
Wiiii, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Museum_of_Modern_Art,_Kamakura_2009.jpg

神奈川県立近代美術館(鎌倉間)

答え ① 坂倉準三
坂倉準三

坂倉準三(さかくら じゅんぞう/1901-69)
ル・コルビュジエに師事。

神奈川県立近代美術館 旧鎌倉は、鶴岡八幡宮境内の庭園と一体に展開する、日本のモダニズム建築の代表例です。

老朽化と土地の貸借契約満了で、2016年に閉館となりましたが、2019年「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」として、リニューアルオープンしました。

👇公式サイト

他、坂倉準三の代表作は、1937(昭和12)年のパリ万博日本館の設計(建設部門ブランプリ受賞)や、芦屋市民センタ―新宿駅西口広場大阪万博の電力館ホテルパシフィック東京などなど。

パリ万博 日本館
パリ万博 日本館 1937年
芦屋市民センター
663highland, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lune_Hall01s3872.jpg
芦屋市民センター 1964年
新宿西口広場
Kakidai, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:2018_Shinjuku_Station_WestGate.jpg
新宿駅西口広場 1966年

他の答えも皆、戦後の日本を代表する建築家です。

丹下健三(たんげ けんぞう/1913-2005)
丹下健三 写真
Hans van Dijk for Anefo, CC BY-SA 3.0 NL, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kenzo_Tange_1981.jpg
草月会館
Wiiii, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sogetsu_Hall.jpg
草月会館 1977年
広島平和記念講演
Wiiii, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hiroshima_Peace_Memorial_Museum_2009.jpg
広島平和記念公園 1955年
代々木第一体育館
Kakidai, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Yoyogi_National_Gymnasium.jpg
代々木第一体育館 1964年

他、大阪万博横浜美術館フジテレビ都庁など、海外にもたくさん。

黒川紀章(くろかわ きしょう/1934-2007)
黒川紀章 大阪万博東芝IHI
takato marui, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Toshiba-IHI_Pavilion.jpg

大阪万博東芝IHI館 1970年

黒川紀章 埼玉県立近代美術館
Wiiii, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Museum_of_Modern_Art_Saitama_2010.jpg
埼玉県立近代美術館 1982年
黒川紀章 中銀カプセルタワービル
Jordy Meow, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nakagin.jpg
中銀カプセルタワービル 1972年

他、国立新美術館豊田スタジアムゴッホ美術館別館など、国内外にたくさん。

磯崎新(いそざき あらた/1931-)
磯崎新
Manel Armengol / Archivo, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ARATA_ISOZAKI,_ARCHITECT_01.jpg
磯崎新 北九州市立美術館
Wiki591801, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kitakyushu_Municipal_Museum_of_Art_20090728.JPG

北九州市立美術館 1974年

磯崎新 東京造形大学

東京造形大学 1993年

磯崎新 京都コンサートホール
663highland, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kyoto_Concert_Hall01n4272.jpg

京都コンサートホール 1995年

他にも、安藤忠雄谷口吉生がいます。
戦後の急速な建築の進化がすごいですね。

3級 過去問/Q.273

1970年の日本万国博覧会に関係する組み合わせのうち、まちがっているのはどれですか?
① 岡本太郎-太陽の塔
② 谷口吉郎-お祭り広場
③ 菊竹清訓-エキスポタワー
④ 山口勝弘-三井グループ館
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.134
大阪万博博覧会
takato marui, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Osaka_Expo%2770_Korean_Pavilion.jpg
日本万博博覧会 1970年
答え ② 谷口吉郎-お祭り広場

万博とは絡まない谷口吉郎については最後に!

1970年に開催された「日本万国博覧会(大阪万博)」は、日本で開催された初めての万博です。「人類の進歩と調和」をテーマに、77ヵ国 4国際団体が参加しました。総入場者数は約6600万人です。

この会場の総合設計を行ったのが、丹下健三。ひとつ前の問題で出てきましたね。
👇こちらで会場のマスタープランを確認できます。

岡本太郎-《太陽の塔》

丹下の「大屋根」を突き抜けて、《太陽の塔》を立たせる岡本のプランは、当初丹下と激しく対立したようです。

「太陽の塔」についてはこちらを👇

菊竹清訓-エキスポタワー
菊竹清則 エキスポタワー
Own work, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:EXPO_TOWER.JPG
パリ万博 日本館 1937年

菊竹の他の代表作は、島根県立美術館銀座テアトルビル(ホテル西洋銀座)、江戸東京博物館、など多数。

山口勝弘-三井グループ館

三井グループ館はこちらを👇

山口勝弘は、少し前に出てきましたね。ビデオメディアを使った前衛芸術家です。(3級 Q.259)

そして、

谷口吉郎(たにぐち よしろう/1904-79)

谷口は金沢出身の建築家で、代表作は、東宮御所帝国劇場東京国立博物館東洋館や、東京国立近代美術館原敬記念館など、こちらも多数。
建築の理念は「清らかな意匠」。

谷口吉郎 東京国立博物館 東洋館
Wiiii, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Toyokan_of_Tokyo_National_Museum.jpg
東京国立博物館東洋館

博物館明治村(愛知県)の初代館長でもありました。

3級 過去問/Q.274

戦前、戦後を通じてリアリズムにこだわり、のちに写真集『古寺巡礼』に見られるような、日本の伝統文化を独自の視点で切り取った写真家はだれですか?
① 木村伊兵衛
② 土門拳
③ 荒木経惟
④ 中平卓馬
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.134
答え ② 土門拳
土門拳

土門拳(どもん けん/1909-90)は、戦後の日本を代表する写真家の1人。徹底してリアリズムにこだわりました。

第二次世界大戦前から、日本工房などで宣伝グラフ誌のための報道写真を撮影します。
戦後はライフワークである『室生寺』の写真集を出版。

広島の現状を1冊にまとめた写真集『ヒロシマ』も出版しています。

「カメラは道具にすぎず、写真を撮るのは人間であり、思想である。」 そうとらえて、自分の個性を重視しました。
数々の写真賞を受賞しています。

土門拳 11代目 市川團十郎

11代目  市川團十郎  1951年

土門拳 三島由紀夫
三島由紀夫  1955年

写真」は、明治末頃までは、対象を忠実に再現する視覚の技術とし重宝がられました。
大正に入ると、戦争や地震など事件の記録としての、ドキュメンタリー写真が登場します。
昭和には芸術写真を目指す動きが現れ、戦後は経済成長に合わせて、商業写真が発展します。
一方で、それまで注目されることのなかった、人々の生きるリアルな姿を追う写真家も登場しました。土門拳はその代表ですね。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020

この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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