
雪舟《秋冬山水図》(冬景)
15世紀末-16世紀初頭(室町時代)
東京国立博物館
答え ② 皴法
「皴法(しゅんぽう)」とは、東洋絵画において、山や岩石のひだを描いて、立体感や質感を出す手法です。

「皴」は「しわ」ですね。
描く対象の性質や、画家・流派の個性により、いろいろな種類の皺法が編み出されました。
斧劈皴(ふへきしゅん)
斧で切断したような鋭い岩塊を表現したもの
披麻皴(ひましゅん)
山の稜線に平行に引いた柔らかな曲線
雲頭皺(うずしゅん)
雲が湧き上がっていくような崇高な感覚を表現したもの
雨点皺(うてんしゅん)
雨点のように描くことで、湿潤感を与えて立体感を強調
牛毛皺(ぎゅうもうしゅん)
牛の毛のように絡み合った線で、奇怪な表現を引き出す
など。
同じ皴法の中でも、それぞれの筆法に画家の個性が表れることから、これが画家を見分ける際の基準ともなるようです。
3級 過去問/Q.301

俵屋宗達《蓮池水禽図》
17世紀前半(江戸時代)京都国立博物館
答え ② 没骨
「没骨(もっこつ)」とは、輪郭線を表さずに、彩色や墨の濃淡によって、対象を一気に描き上げていく東洋絵画の描写法です。

早くは、中国の南梁時代(502-557)に活躍した宮廷画家、張僧繇(ちょうそうよう)や、唐代(618-907)の楊昇(ようしょう)に、没骨画があったとされています。

張僧繇《雪山紅樹圖》
楊昇の参考作品はこちら👇
五代十国時代(907-960)以降は、花鳥画の技法としても多く用いられるようになりました。
やがて日本へと伝わった没骨法は、俵屋宗達や長谷川等伯などの水墨画に用いられています。

長谷川等伯《松林図》右隻
16世紀(桃山時代) 東京国立博物館
3級 過去問/Q.302

俵屋宗達《風神雷神図屛風》
17世紀(江戸時代) 紙本金地著色 二曲一双
建仁寺(京都国立博物館寄託/京都)
答え ① たらしこみ
「たらしこみ」とは、墨や絵具のにじみを生かして、濃淡のグラデーションの中に、わざとにじみの模様をつくったぼかし技法です。
俵屋宗達が完成させたと言われています。


足元の雲の部分ですね。輪郭線がなく、むらむらとした陰影です。絵具が乾かないうちに、濃度の違う絵具で描き足して、自然なムラをつくっています。
一つ前の問題に「没骨」(もっこつ)という技法が出てきましたね。「輪郭線を表さずに、彩色や墨の濃淡によって対象を一気に描き上げていく」という描写法でした。
「たらしこみ」はこの「没骨」の発展形です。
この技法は、尾形光琳や酒井抱一ら、琳派の絵師たちによって受け継がれます。
平面の中に立体感や動き、色彩のリズムを生み出すことができるため、装飾的効果を求めた絵師たちにとって、不可欠の技法となりました。
3級 過去問/Q.303

答え ① 扇
「扇(せん)」です。
屏風のパネル1枚1枚は「扇」と呼ばれます。
扇子(せんす)の「せん」ですね。
各扇は右から、第一扇、第二扇、第三扇 …と数えます。
絵巻など、絵の物語も右から左ですね。

奈良~鎌倉時代などの古い時代の屏風は、この作品のように、一扇一扇が独立していました。

《山水屏風》(せんずいびょうぶ)
絹本着色山水屏風 13世紀(鎌倉時代) 神護寺
室町時代頃から、各扇が連続した画面を取るようになりました。

《唐獅子図屏風》(からじしずびょうぶ)
狩野永徳 16世紀
ちなみに屏風とは、「風を屏(ふせ)ぐ」という言葉に由来します。
3級 過去問/Q.304

答え ③ 六曲一隻
六曲一隻(ろっきょくいっせき)です。
扇が6枚からなる屏風は、6つに折りたためるという意味で「六曲屏風」と言われます。
それがひとつならば「六曲一隻」と数えます。
左右で対となったものは「六曲一双」と数えます。

向かって右にあるものが「右隻」、左にあるものが「左隻」です。
通常、時間や空間の流れは、右隻から左隻へ進みます。
この対の形式が一般化したのは室町時代です。

尾形光琳《八橋図》
1710年頃 六曲一双 メトロポリタン美術館
数え方ですが、扇(パネル)の数を見て、それはひとつの作品(一隻)か、対の作品(一双)かで区別します。


◆四曲一隻 対なら 四曲一双


「一隻」か、対の「一双」かを区別すれば、あとは扇(パネル)の数が変わるだけですね。
3級 過去問/Q.305

答え ③ 掛軸
掛軸(かけじく)ですね。
絵や書を掛けて鑑賞できるようにしたもので、中国・唐時代に始まり、日本にも奈良時代頃に伝わりました。
古代には、寺院で法事の際に礼拝用に仏画を掛けて使ったようです。
鎌倉時代に禅宗文化の影響で流行し、室町時代に入るとイベントや会合の際に、座敷飾りとして住宅でも使われるようになりました。
掛軸は、「一幅(いっぷく)」「二幅(にふく)」…と数えます。
掛軸に仕立てられた絵画を「掛幅(かけふく)」とも呼びます。
3級 過去問/Q.306

答え ③ 表装
紙や絹にかかれた絵や書を、掛軸や絵巻、屏風などに仕立てることを「表装(ひょうそう)」といいます。
表装する際には、貴重で高価な布地が用いられることも多くありました。
絵や書が掛軸として表装された場合は、絵や書の部分を「本紙」と呼びます。

さらに詳しくはこちらを。👇
掛軸の上部にある2本のひらひらって何?と思っていたのですが、「風帯」というようです。
古く中国では、掛軸を屋外で鑑賞する習慣があり、風帯を風にひらひらさせて、燕が掛軸を汚すのを防いだそう。「払燕」「驚燕」といわれ、鳥よけだったんですね。
日本では単なる飾りとして、その形式が残ったようです。
3級 過去問/Q.307

牧谿《観音猿鶴図》
13世紀(南宋) 絹本墨画淡彩
大徳寺(京都)
答え ① 三幅対
「三幅対(さんぷくつい)」は、中幅・左幅・右幅から成り、それぞれは中幅を中心に有機的な関連性を持ちます。
例えば、中幅に仏画の本尊などが描かれ、左右幅に脇侍や、副次的な花鳥・山水が添えられたり、中幅に人物、左右幅に副次的人物といった場合もあります。
「松竹梅」や「雪月花」での構成もあります。

酒井抱一《雪月花図》
他、左幅と右幅からなる対幅(双幅)や、

与謝蕪村《鳶鴉図》
重要文化財
四幅対(四季山水図)
八幅対(八景図)
十二幅対(12か月)
など、バリエーションもさまざまです。
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
絵でわかるアートのコトバ 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2011