美術検定3級 過去問/Q.300~307(日本画の技法)

山や石のひだを表す東洋絵画の手法を何と呼びますか?
① 襞法
② 皴法
③ 岩法
④ 石法
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.148
雪舟《秋冬山水図》冬景

雪舟《秋冬山水図》(冬景)
15世紀末-16世紀初頭(室町時代)
東京国立博物館

答え ② 皴法

皴法(しゅんぽう)」とは、東洋絵画において、山や岩石のひだを描いて、立体感や質感を出す手法です。

雪舟《秋冬山水図》冬景  部分

」は「しわ」ですね。

描く対象の性質や、画家・流派の個性により、いろいろな種類の皺法が編み出されました。

 斧劈皴(ふへきしゅん)
 斧で切断したような鋭い岩塊を表現したもの

 披麻皴(ひましゅん)
 山の稜線に平行に引いた柔らかな曲線

 雲頭皺(うずしゅん)
 雲が湧き上がっていくような崇高な感覚を表現したもの

 雨点皺(うてんしゅん)
 雨点のように描くことで、湿潤感を与えて立体感を強調

 牛毛皺(ぎゅうもうしゅん)
 牛の毛のように絡み合った線で、奇怪な表現を引き出す

など。

同じ皴法の中でも、それぞれの筆法に画家の個性が表れることから、これが画家を見分ける際の基準ともなるようです。

3級 過去問/Q.301

中国や日本の絵画で、輪郭線を用いないで色の濃淡だけで形を描く技法をなんと呼ぶでしょう?
① 没輪
② 没骨
③ 片ぼかし
④ 墨流し
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.148
俵屋宗達《蓮池水禽図》

俵屋宗達《蓮池水禽図》
17世紀前半(江戸時代)京都国立博物館

答え ② 没骨

没骨(もっこつ)」とは、輪郭線を表さずに、彩色や墨の濃淡によって、対象を一気に描き上げていく東洋絵画の描写法です。

俵屋宗達《蓮池水禽図》部分

早くは、中国の南梁時代(502-557)に活躍した宮廷画家、張僧繇(ちょうそうよう)や、唐代(618-907)の楊昇(ようしょう)に、没骨画があったとされています。

張僧繇《雪山紅樹図》

張僧繇《雪山紅樹圖》

楊昇の参考作品はこちら👇

五代十国時代(907-960)以降は、花鳥画の技法としても多く用いられるようになりました。

やがて日本へと伝わった没骨法は、俵屋宗達長谷川等伯などの水墨画に用いられています。

長谷川等伯《松林図》右隻

長谷川等伯《松林図》右隻
16世紀(桃山時代) 東京国立博物館

3級 過去問/Q.302

下図の神像の足元に描かれたような、初めに塗った墨が乾かないうちに、より多くの水を含んだ墨を重ねることによって、意図的に色の濃淡や滲みを生じさせる技法をなんといいますか?
① たらしこみ
② 裏彩色
③ 暈
④ 皺法
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.148
俵屋宗達《風神雷神図屛風》

俵屋宗達《風神雷神図屛風》
17世紀(江戸時代) 紙本金地著色   二曲一双 
建仁寺(京都国立博物館寄託/京都)

答え ① たらしこみ

たらしこみ」とは、墨や絵具のにじみを生かして、濃淡のグラデーションの中に、わざとにじみの模様をつくったぼかし技法です。

俵屋宗達が完成させたと言われています。

俵屋宗達《風神雷神図屛風》部分
俵屋宗達《風神雷神図屛風》部分

足元の雲の部分ですね。輪郭線がなく、むらむらとした陰影です。絵具が乾かないうちに、濃度の違う絵具で描き足して、自然なムラをつくっています。

一つ前の問題に「没骨」(もっこつ)という技法が出てきましたね。「輪郭線を表さずに、彩色や墨の濃淡によって対象を一気に描き上げていく」という描写法でした。
たらしこみ」はこの「没骨の発展形です。

この技法は、尾形光琳酒井抱一ら、琳派の絵師たちによって受け継がれます。

平面の中に立体感動き色彩のリズムを生み出すことができるため、装飾的効果を求めた絵師たちにとって、不可欠の技法となりました。

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3級 過去問/Q.303

下のイラストのAの部分の名称はどれでしょう?
① 扇
② 曲
③ 面
④ 幅
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.150
屏風 六曲一隻 イラスト

答え ① 扇

(せん)」です。
屏風のパネル1枚1枚は「」と呼ばれます。
扇子(せんす)の「せん」ですね。

各扇は右から、第一扇、第二扇、第三扇 …と数えます。
絵巻など、絵の物語も右から左ですね。

屏風の扇 数え方

奈良~鎌倉時代などの古い時代の屏風は、この作品のように、一扇一扇が独立していました。

《山水屏風》

《山水屏風》(せんずいびょうぶ) 
絹本着色山水屏風   13世紀(鎌倉時代) 神護寺

室町時代頃から、各扇が連続した画面を取るようになりました。

狩野永徳《唐獅子図屏風》

《唐獅子図屏風》(からじしずびょうぶ) 
狩野永徳 16世紀

ちなみに屏風とは、「風を屏(ふせ)ぐ」という言葉に由来します。

3級 過去問/Q.304

下図の屏風の数え方はどれですか?
① 六扉一枚
② 六面一本
③ 六曲一隻
④ 六幅一帖
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.150
屏風 六曲一隻 イラスト

答え ③ 六曲一隻

六曲一隻(ろっきょくいっせき)です。

扇が6枚からなる屏風は、6つに折りたためるという意味で「六曲屏風」と言われます。
それがひとつならば「六曲一隻」と数えます。

左右で対となったものは「六曲一双」と数えます。

六曲一双屏風 イラスト

向かって右にあるものが「右隻」、左にあるものが「左隻」です。
通常、時間や空間の流れは、右隻から左隻へ進みます。
この対の形式が一般化したのは室町時代です。

尾形光琳《八橋図》

尾形光琳《八橋図》
1710年頃 六曲一双 メトロポリタン美術館

数え方ですが、扇(パネル)の数を見て、それはひとつの作品(一隻)か、対の作品(一双)かで区別します。

 二曲一隻 対なら 二曲一双
two-panel-folding-screen
屏風 二曲一双 イラスト

四曲一隻 対なら 四曲一双

屏風 四曲一隻 イラスト
屏風 四曲一双 イラスト

一隻」か、対の「一双」かを区別すれば、あとは扇(パネル)の数が変わるだけですね。

3級 過去問/Q.305

下のイラストのBの部分の名称はなんですか?
① 壁掛
② 吊額
③ 掛軸
④ 吊画
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.150
掛け軸 イラスト

答え ③ 掛軸

掛軸(かけじく)ですね。

絵や書を掛けて鑑賞できるようにしたもので、中国・唐時代に始まり、日本にも奈良時代頃に伝わりました。

古代には、寺院で法事の際に礼拝用に仏画を掛けて使ったようです。

鎌倉時代に禅宗文化の影響で流行し、室町時代に入るとイベントや会合の際に、座敷飾りとして住宅でも使われるようになりました。

掛軸は、「一幅(いっぷく)」「二幅(にふく)」…と数えます。

掛軸に仕立てられた絵画を「掛幅(かけふく)」とも呼びます。

3級 過去問/Q.306

書や絵画を下図のBのように、床の間などで鑑賞できるようにすることを何といいますか?
① 額装
② 装丁
③ 表装
④ 縁取
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.150
掛け軸 イラスト

答え ③ 表装

紙や絹にかかれた絵や書を、掛軸や絵巻、屏風などに仕立てることを「表装(ひょうそう)」といいます。

表装する際には、貴重で高価な布地が用いられることも多くありました。
絵や書が掛軸として表装された場合は、絵や書の部分を「本紙」と呼びます。

掛軸 詳細
じくリン, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons https://commons.wikimedia.org/wiki/File:%E6%8E%9B%E8%BB%B8%E3%81%AE%E5%90%84%E9%83%A8%E5%90%8D%E7%A7%B0_editedby%E5%81%95%E6%8B%93%E5%A0%82.jpg

さらに詳しくはこちらを。👇

掛軸の上部にある2本のひらひらって何?と思っていたのですが、「風帯」というようです。
古く中国では、掛軸を屋外で鑑賞する習慣があり、風帯を風にひらひらさせて、燕が掛軸を汚すのを防いだそう。「払燕」「驚燕」といわれ、鳥よけだったんですね。
日本では単なる飾りとして、その形式が残ったようです。

3級 過去問/Q.307

3つの掛軸から構成される1セットのことを何といいますか?
① 三幅対
② 三軸対
③ 三連幅
④ 三連軸
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.150
牧谿《歓御猿鶴図》

牧谿《観音猿鶴図》
13世紀(南宋) 絹本墨画淡彩
大徳寺(京都)

答え ① 三幅対

三幅対(さんぷくつい)」は、中幅・左幅・右幅から成り、それぞれは中幅を中心に有機的な関連性を持ちます。

例えば、中幅に仏画の本尊などが描かれ、左右幅に脇侍や、副次的な花鳥・山水が添えられたり、中幅に人物、左右幅に副次的人物といった場合もあります。

「松竹梅や「雪月花」での構成もあります。

酒井抱一《雪月花図》

酒井抱一《雪月花図》

他、左幅と右幅からなる対幅(双幅)や、

与謝蕪村《鳶鴉図》

与謝蕪村《鳶鴉図》
重要文化財

四幅対(四季山水図)
八幅対(八景図)
十二幅対(12か月) 

など、バリエーションもさまざまです。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
絵でわかるアートのコトバ 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2011 

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