答え ① 絹
まず、日本画に使われる最も一般的な支持体は、紙で「紙本(しほん)」とよばれます。
「紙本著色」「紙本着色」といった表記がついたものは、「紙」が支持体です。どちらも読みは「しほんちゃくしょく」です。

伴大納言絵巻(ばんだいなごんえまき) 応天門炎上(部分)
紙本着色 12世紀後半
紙の中には、繊細な色付けが施されたものや、金銀の粉で装飾された「料紙(りょうし)」とよばれるものもあります。それだけで鑑賞対象となる美しい紙です。
そして平安時代より「絹」が、紙と並んで絵を描く材料の主流となりました。
絵画制作に使われる平織りの絹布を「絵絹(えぎぬ)」または「絹本(けんぽん)」と言います。上質で高価な素材で、仏画によく使われました。
「絹本着色」とは、絹布に絵具で彩色して描いた絵画のことです。

両界曼荼羅図のうち「胎蔵界」
絹本着色 9世紀後半
鎌倉時代までの宗教絵画は「絹本」が多いです。
中国の文人画では、「絖本(こうほん)」とよばれるサテン地(表面が光輝く素材)が、まれに使われました。
3級 過去問/Q.295
答え ③ コンテ
他はすべて日本画の画材です。
「岩絵具」は鉱物を原料とし、「泥絵具」は泥や土を原料とします。いずれも日本絵画の伝統的な絵具です。
「膠(にかわ)」は、動物や魚類の皮や骨からとったゼラチン質を固めたもので、絵具を溶く際に使われます。(膠については次の問題で)
「コンテ」は、鉱物を極微粒子にして固めたもので、西洋絵画の素描用の画材です。白・黒・褐色(セピア)・赭色(サンギース/赤褐色、赤土色)の4色があります。
発明したのがフランスの科学者、ニコラ=ジャック・コンテです。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cont%C3%A9_crayons.JPG

スーラ《トロンボーン奏者》
《サーカスの客寄せ》の習作

スーラ《ポール・シニャックの肖像》
3級 過去問/Q.296
答え ② 膠
「膠(にかわ)」です。
ひとつ前の問題に出てきましたね。
「膠」は、動物の皮や骨、腱、内臓膜などを水で煮佛して、抽出したゼラチンを濃縮・冷却して固めたものです。
日本画では、色の付いた粉末である顔料と、「膠」を温めて溶かした水とを混ぜ合わせて、絵具をつくります。顔料を画面に定着させる接着剤の役目を持っていましたね。
👇「膠」について詳しくはこちらを。膠水の作り方も動画で紹介しています。
西洋の絵画でも、テンペラの一種として膠が使用されました。
3級 過去問/Q.297
答え ① 胡粉
「胡粉(ごふん)」は、貝殻を砕いてペースト状にした白色の顔料です。なめらかで艶のないマットな質感が特徴です。
中国の西方を意味する「胡(こ)」から伝えられたことから「胡粉」と呼ばれます。
白色度の高いものにはハマグリ、加工のし易さではカキ・ホタテが用いられます。
貝殻を天日に晒して数か月~数十年、風化させて砕きます。それを水で溶いて、粘土状にしたものを伸ばし、さらに天日に晒してつくられます。
👇詳しくはこちらで!
とても時間がかかるものなんですね。
実際に描くための「胡粉の溶き方」という動画も確認できますが、これがまた手間のかかる作業でした。
下の作品は、伊藤若冲の「梅花皓月図」(ばいかこうげつず)です。
わかりにくいですが、梅の花びらに胡粉が使われていて、一枚一枚 変化をつけて、透けるような美しさを表現しています。


伊藤若冲《梅花皓月図》
他の答えにも出てきましたが、日本画では、
「鉱物」を原料とした、
群青(深い青色)
緑青(緑色)
黄土(黄色)
辰砂(しんしゃ/赤色)
代赭(たいしゃ/赤茶色)
「植物」を原料とした、
藍(青色)
蘇芳(すおう/赤色)
などが使われます。
幕末期にはヨーロッパから、鮮やかな青色の化学顔料、プルシアンブルーが輸入され流行しました。北斎や広重も愛用した「ベロ藍」ですね。
👇鉱物と絵具を確認できます。
3級 過去問/Q.298
答え ② 面相筆
「面相筆(めんそうふで)」は、日本画用の絵筆のひとつ。
人物の髪や眉毛、鼻の輪郭などの細い線を描くのに用いる、穂先が細長いものです。肥痩(太い細い)のない鉄線描といわれる線を引く場合にも用います。
通常は、イタチやタヌキの毛を使います。
👇こちらのサイトで、面相筆を確認できます
種類も様々あるようですね。
「面相」の名称は、まさに人物の顔や表情などを描画する時に用いられたことに由来するようです。
👇参考サイト
藤田嗣治が描いた美しい女性たちの細い輪郭線も、面相筆によるものです。
3級 過去問/Q.299

狩野永徳《花鳥図襖》
16世紀 紙本墨画 16面のうち4面
大徳寺聚光院(京都国立博物館寄託) 国宝
答え ③ 藁筆
「藁筆(わらふで)」は、動物の毛ではなく、藁などの植物を束ねて作る筆です。
樹の幹などを描くときなど、荒々しくざらついた効果をねらう際に用いられました。
👇どのような筆か、こちらのサイトで確認できます。
「藁筆は狩野永徳が初めて作ったといわれ、狩野派が好んだ筆である。」(引用:筆の里工房 http://fude.or.jp/jp/2009/07/827/)
だそう!
日本最初の絵画史の基礎資料である狩野永納撰『本朝画史』(1691) の狩野永徳伝には、「永徳は水墨画を描く際に藁筆を用い、狩野派の伝統に従いながらも新意を出している」とも書かれているそうで、
『本朝画史』の中を探したところ、149ページに狩野永徳について書いてありました。詳しい内容はわかりにくいですが、後半の方に確かに「藁筆」という文字を確認できましたよ!
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
絵でわかるアートのコトバ 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2011