美術検定3級 過去問/Q.282~286(西洋絵画の画材)

水彩画では紙、油彩画ではキャンヴァスなどのように、その上に絵が描かれるものを何と呼ぶでしょう?
① 支持体
② 基礎体
③ 土台
④ 下地
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.140
答え ① 支持体

支持体(しじたい)は、絵が描かれる方の素材のこと。
漆喰層キャンヴァスなどがあります。
基底材(きていざい)と呼ばれることもあります。

    板    

」は、中世からテンペラ油彩によく使われた支持体です。
キャンヴァスが発明されるまでは、油彩画の主要な支持体でした。

レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》

レオナルド・ダ・ヴィンチ
《モナ・リザ》

1503-06年 ・油彩

ブリューゲル《雪中の狩人》

ブリューゲル《雪中の狩人》
1565年 ・油彩

  漆喰層(壁面・天井など)  

漆喰層」(しっくいそう)は、フレスコ画によく使われた支持体です。
教会や城の内部の絵画や装飾は、直接、天井に施されました。

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ジョット《ユダの接吻》
1304-06年 フレスコ画

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ミケランジェロ《最後の審判》
1508-12年 フレスコ画

  キャンヴァス  

キャンヴァス」は、油彩画で最もポピュラーな支持体です。
木枠に麻や合成繊維製の帆布が張ってあり、目の粗さで表現も変化します。
ルネサンス期に登場し、最も古いのは1410年頃です。

エル・グレコ《受胎告知》

エル・グレコ 《受胎告知》
1590
年頃 油彩・キャンヴァス

レンブラント 《夜警》
1642
年 油彩・キャンヴァス

    紙    

は、水彩画パステル画ペン画版画など、幅広く使われる支持体です。種類も豊富で、水分の吸収力によって表現が変化します。

ムンク《叫び》

ムンク《叫び》
1895年 厚紙・油彩・テンペラ・パステル

古くは、が支持体でした。
他には、(羊皮紙)もありますね。

3級 過去問/Q.283

一般的に絵具は色を持つ物質である顔料と、顔料を溶いて使いやすくする溶剤で成り立っています。この溶剤を何と呼びますか?
① 展色剤
② 助剤
③ 支持体
④ 保護剤
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.140
答え ① 展色剤

絵具は主に、顔料展色剤(てんしょくざい)からできています。
顔料は色の粉ですね。

天然ウルトラマリン顔料

天然ウルトラマリン顔料

顔料の多くは、土や鉱物由来のものか、生物由来のものです。
粉だけでは画面に定着しないので、接着剤の役割も持つ展色剤と組み合わせて、絵具が作られています。

その組み合わせる展色剤の種類によって、絵具の名前と特徴が変わります

 油絵具 = 顔料+乾性油(かんせいゆ) 

油絵具は、顔料乾性油樹脂を展色剤として混ぜたもの。乾性油は、空気中で徐々に酸化することで固まる油のことです。

チューブ入り絵具か開発されたのが19世紀。それまでは画家や弟子たちが、顔料と展色剤を練り合わせていました。チューブ入り絵具が出たことで、印象派の画家たちは戸外で描くようになりました。

モネ《印象、日の出》
モネ《印象、日の出》
1872年 油彩・キャンヴァス
 テンペラ絵具 = 顔料+卵やカゼイン

テンペラ絵具は、顔料卵やカゼインなどを練ってつくったものです。
カゼインは主に牛乳やチーズに含まれるリンタンパクの一種。
15世紀半ばに、油彩画が普及して衰退します。

ジョット《荘厳の聖母》
ジョット《荘厳の聖母》
1310-11年 板・テンペラ
水彩絵具 = 料+アラビアゴムの水溶液

水彩絵具」は、顔料アラビアゴムを練り合わせたもの。
アラビアゴムは、固まっても再度水に溶けだすので、再使用が可能です。乾燥時にはべたつかず、わずかな水分で粘性を出すので、切手の接着面の糊にも使われています。

デューラー《兎》
デューラー《兎》
1502年 水彩
 フレスコの色材 = 顔料 + 石灰水  

フレスコ」は、石灰と空中の炭酸ガスの化学変化を応用した技法です。顔料を水だけで練って、主成分が石灰である漆喰面が湿っているうちに、描いてしみこませます。

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ラファエロ《アテネの学堂》 1509-10年 フレスコ
 アクリル絵具 = 顔料+アクリル樹脂  

アクリル絵具」は、20世紀に入って開発された絵具で、合成樹脂を展色剤にした絵具の一般的な呼称です。
油絵具より速乾性で、重ね塗りが容易です。キャンバス以外に、粘土やレザー、木など、使用できる支持体もいろいろです。

パステル=炭酸カルシウム + 顔料 + アラビアゴム 

パステル」は、炭酸カルシウムなどに、顔料アラビアゴムを練って固めたスティック状のもの。17世紀半ばにドイツやイタリアで作られ、18世紀にフランスで普及。ルドンドガも好んで使った色材です。

パステル
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pastelkrijt.jpg

パステル

ドガ《エトワール》

ドガ《エトワール》
1876年 パステル

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3級 過去問/Q.284

アクリル絵具の特徴としてまちがっている記述はどれですか?
① 速乾性である
② 水溶性である
③ 透明にも不透明にも使える
④ 成分が粉っぽいので、こすれて汚れやすい
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.142
アクリル絵具
Hariadhi, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sapuan_akrilik.jpg
パステル
答え ④ 成分が粉っぽいので、こすれて汚れやすい

アクリル絵具は、粉っぽくはないですね。

アクリル絵具の展色剤は、アクリル樹脂でしたね。厚塗りの油絵具の表現力と、水洗い可能な水彩絵具の扱いやすさを兼ね備えた絵具です。

初めドイツで研究されていましたが、使用が一般化したのは1960年以後のアメリカです。大画面の絵画の流行を生んで、後にこれを受けて、ヨーロッパや日本でも使用されるようになりました。

3級 過去問/Q.285

水彩絵具は、通常、透明水彩絵具と不透明水彩絵具に大別されますが、次のうち不透明水彩絵具に属するものはどれですか?
① パステル
② メタルポイント
③ グワッシュ
④ ウォッシュ
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.142
答え ③ グワッシュ

水彩絵具の展色剤はアラビアゴムでしたね。

グワッシュ(ガッシュ)は、この展色剤の比率が少なく、透明性が低いのが特徴です。上塗りすると下地の色が隠れるので、重ね塗りによって重厚な描画ができます。

チューブ入りガッシュ
Jeff Dahl, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gouache.jpg
チューブ入りガッシュ

👆画像を見ても、わかりませんね。笑

透明水彩絵具は、産業革命後にイギリスを中心に発展しましたが、不透明のガッシュの歴史は古く、中世の装飾本の挿絵にも使われました。

👇こちらのサイトが、透明水彩ガッシュの違いを、コンパクトにまとめていてわかりやすいです。

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3級 過去問/Q.286

パステルの説明でまちがっているものはどれですか?
① 顔料とアラビアゴムなどのメディウムを練り合わせ、スティック状に固めたもの
② 油彩や水彩のように溶剤を用いないため、自由な混色には不向きだが、その一方で顔料本来の色の輝きを見せる
③ 18世紀フランスの肖像画の分野で特に愛用された
④ 19世紀には印象派の画家たちも使用し、マネのパステル画はとくに名高い
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.142
パステル
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Pastellkreide_2.jpg
パステル
答え ④ 19世紀には印象派の画家たちも使用し、マネのパステル画はとくに名高い

マネパステルの作品を残していますが、パステル画で特に名高いわけではありません。
とはいえ、👇こちらはマネのパステル画です。

エドゥアール・マネ
《メリー・ローラン》
1882年 アーティゾン美術館

パステルは、16世紀から素描に使用されていました。

18世紀のフランスで、やわらかな色彩と、伸びやかな描線を生かした作品が描かれるようになります。
多くの画家たちがパステル画を残していますが、中でも有名なのがルドンドガです。

オディロン・ルドン(1840-1916)
象徴主義を代表するフランスの作家で、幻想的な世界を描いています。
ルドン《オフィーリア》

《オフィーリア》
1900-05年 パステル

ルドン《アポロンの二輪馬車》

《アポロンの二輪馬車》
1909-10年 パステル・油彩

エドガー・ドガ(1834-1917)

展色剤のところでも出てきましたが、パステルというとドガが出てきますね。
ドガは生涯に700点ものパステル画を描いています。それはドガの全作品の半分を占めています。

《髪をすく女》
1886年 パステル

ドガ《青い踊り子たち》

《青い踊り子たち》
1898年 パステル

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019

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