支持体(しじたい)は、絵が描かれる方の素材のこと。
板や漆喰層、キャンヴァス、紙などがあります。
基底材(きていざい)と呼ばれることもあります。
「板」は、中世からテンペラや油彩によく使われた支持体です。
キャンヴァスが発明されるまでは、油彩画の主要な支持体でした。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
《モナ・リザ》
1503-06年 板・油彩
ブリューゲル《雪中の狩人》
1565年 板・油彩
「漆喰層」(しっくいそう)は、フレスコ画によく使われた支持体です。
教会や城の内部の絵画や装飾は、直接、壁や天井に施されました。
ジョット《ユダの接吻》
1304-06年 フレスコ画
ミケランジェロ《最後の審判》
1508-12年 フレスコ画
「キャンヴァス」は、油彩画で最もポピュラーな支持体です。
木枠に麻や合成繊維製の帆布が張ってあり、目の粗さで表現も変化します。
ルネサンス期に登場し、最も古いのは1410年頃です。
エル・グレコ 《受胎告知》
1590年頃 油彩・キャンヴァス
レンブラント 《夜警》
1642年 油彩・キャンヴァス
「紙」は、水彩画やパステル画、ペン画や版画など、幅広く使われる支持体です。種類も豊富で、水分の吸収力によって表現が変化します。
ムンク《叫び》
1895年 厚紙・油彩・テンペラ・パステル
古くは、石や地面が支持体でした。
他には、革(羊皮紙)もありますね。
3級 過去問/Q.283
絵具は主に、顔料と展色剤(てんしょくざい)からできています。
顔料は色の粉ですね。
天然ウルトラマリン顔料
顔料の多くは、土や鉱物由来のものか、生物由来のものです。
粉だけでは画面に定着しないので、接着剤の役割も持つ展色剤と組み合わせて、絵具が作られています。
その組み合わせる展色剤の種類によって、絵具の名前と特徴が変わります。
油絵具は、顔料に乾性油や樹脂を展色剤として混ぜたもの。乾性油は、空気中で徐々に酸化することで固まる油のことです。
チューブ入り絵具か開発されたのが19世紀。それまでは画家や弟子たちが、顔料と展色剤を練り合わせていました。チューブ入り絵具が出たことで、印象派の画家たちは戸外で描くようになりました。
1872年 油彩・キャンヴァス
テンペラ絵具は、顔料に卵やカゼインなどを練ってつくったものです。
カゼインは主に牛乳やチーズに含まれるリンタンパクの一種。
15世紀半ばに、油彩画が普及して衰退します。
1310-11年 板・テンペラ
「水彩絵具」は、顔料とアラビアゴムを練り合わせたもの。
アラビアゴムは、固まっても再度水に溶けだすので、再使用が可能です。乾燥時にはべたつかず、わずかな水分で粘性を出すので、切手の接着面の糊にも使われています。
1502年 水彩
「フレスコ」は、水と石灰と空中の炭酸ガスの化学変化を応用した技法です。顔料を水だけで練って、主成分が石灰である漆喰面が湿っているうちに、描いてしみこませます。
「アクリル絵具」は、20世紀に入って開発された絵具で、合成樹脂を展色剤にした絵具の一般的な呼称です。
油絵具より速乾性で、重ね塗りが容易です。キャンバス以外に、粘土やレザー、木など、使用できる支持体もいろいろです。
「パステル」は、炭酸カルシウムなどに、顔料とアラビアゴムを練って固めたスティック状のもの。17世紀半ばにドイツやイタリアで作られ、18世紀にフランスで普及。ルドンやドガも好んで使った色材です。
パステル
ドガ《エトワール》
1876年 パステル
3級 過去問/Q.284
アクリル絵具は、粉っぽくはないですね。
アクリル絵具の展色剤は、アクリル樹脂でしたね。厚塗りの油絵具の表現力と、水洗い可能な水彩絵具の扱いやすさを兼ね備えた絵具です。
初めドイツで研究されていましたが、使用が一般化したのは1960年以後のアメリカです。大画面の絵画の流行を生んで、後にこれを受けて、ヨーロッパや日本でも使用されるようになりました。
3級 過去問/Q.285
水彩絵具の展色剤はアラビアゴムでしたね。
グワッシュ(ガッシュ)は、この展色剤の比率が少なく、透明性が低いのが特徴です。上塗りすると下地の色が隠れるので、重ね塗りによって重厚な描画ができます。
👆画像を見ても、わかりませんね。笑
透明水彩絵具は、産業革命後にイギリスを中心に発展しましたが、不透明のガッシュの歴史は古く、中世の装飾本の挿絵にも使われました。
👇こちらのサイトが、透明水彩とガッシュの違いを、コンパクトにまとめていてわかりやすいです。
3級 過去問/Q.286
マネもパステルの作品を残していますが、パステル画で特に名高いわけではありません。
とはいえ、👇こちらはマネのパステル画です。
エドゥアール・マネ
《メリー・ローラン》
1882年 アーティゾン美術館
パステルは、16世紀から素描に使用されていました。
18世紀のフランスで、やわらかな色彩と、伸びやかな描線を生かした作品が描かれるようになります。
多くの画家たちがパステル画を残していますが、中でも有名なのがルドンとドガです。
《オフィーリア》
1900-05年 パステル
《アポロンの二輪馬車》
1909-10年 パステル・油彩
展色剤のところでも出てきましたが、パステルというとドガが出てきますね。
ドガは生涯に700点ものパステル画を描いています。それはドガの全作品の半分を占めています。
《髪をすく女》
1886年 パステル
《青い踊り子たち》
1898年 パステル
【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2019