美術検定3級 過去問/Q.250~252(大正・昭和時代~1945年の美術 3)

Q.250
「民藝」(=民衆の工芸品)という言葉を造語し、民藝運動を提唱した評論家はだれですか?
① 柳宗悦
② 岡倉天心
③ 森鴎外
④ 夏目漱石
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.124
日本民藝館
Kamemaru2000, CC BY-SA 3.0 , via Wikimedia Commons
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Nihon_mingeikan_meguro_2009.JPG

日本民藝館(目黒区)

答え ① 柳宗悦
柳宗悦 写真

柳宗悦(やなぎ むねよし)。「そうえつ」とも読まれます。

白樺グループのひとりだった宗悦を中心に、民藝運動が展開されました。「民藝」は、宗悦が考え出した言葉で、民衆的工芸品の略語です。

宗悦によると「民藝品」とは、無名の職人たちがつくった日常生活のための実用品で、その地方の特徴が現れたものを指します。
それまで美術品とは考えられなかった食器や道具などに、美を見出して、広く世の中に知らせました。

宗悦は、朝鮮半島や沖縄、日本各地から民藝品を収集しています。

1936年、民藝運動の拠点として日本民藝館が開設されました。

日本民藝館 西館(旧柳邸宅)
江戸村のとくぞう, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d4/Mingeikan-1.jpg

西館(長屋門)

宗悦の長男は「バタフライスツール」のデザインで知られる柳宗理(やなぎそうり/本名はむねみち)です。

次男は美術史家の柳宗玄(むねもと)で、三男は園芸家の柳宗民(むねたみ)です。

3級 過去問/Q.251

大正から昭和初期の院展を代表する画家で《炎舞》の作者はだれですか?
① 鏑木清方
② 速水御舟
③ 安田靫彦
④ 上村松園
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.126
速水御舟《炎舞》

《炎舞》 1924年
山種美術館  重要文化財

答え ② 速水御舟
速水御舟

速水御舟(はやみ ぎょしゅう/1894-1935)は、浅草の生まれ。院展で活躍した日本画家の1人です。

20代前半は兄弟子の今村紫紅(いまむら しこう)の影響を受け、明るい画風でした。

速水御舟《新緑》

《新緑》
1915年 足立美術館

西洋絵画の動向にも敏感だった御舟は、20代後半になると、デューラーの影響や、象徴主義の影響が伝わる画風へと変わります。

炎に群がる蛾の怪しさを表現したこの《炎舞》(えんぶ)は、そうした傾向を集約した代表作といわれています。

日本画にはなかった徹底した写実や、細密な描写を追求して、伝統的な空間構成装飾性をそなえ、独自のスタイルを築きました。

《炎舞》今村紫紅については、4級Q.97でも取り上げました。

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3級 過去問/Q.252

1922年に神原泰らが二科展から独立して組織した美術団体はどれですか?
① マヴォ
② 日本プロレタリア美術家同盟
③ 三科造形美術協会
④ アクション
出典:美術検定実行委員会・編『美術検定3級問題集-知る、わかる、みえる』 (株)美術出版社 2021  p.126
答え ④ アクション

カンディンスキーとも親交があり、ロシア革命を避けて1920年に来日した未来派の ブルリューク(1882-1967)の指導によって、日本の前衛美術運動が活気づき、いろいろなグループが生まれます。

前衛美術(アヴァンギャルド)とは、フォーヴィスムやキュビスム、未来派、ダダ、シュルレアリスム、抽象など。

これらがごちゃまぜとなり、この頃から、前衛的、挑戦的、破壊的な画家たちの活動が一気に増えました。

ダヴィド・ブルリューク
ダヴィド・ブルリューク

1922年、神原泰(かんばらたい/1898ー1997)や、矢部友衛(やべともえ/189-1981)、岡本唐貴(おかもととうき/1903-1986)らによって「アクション」が結成されました。

神原の《スクリアビンの「エクスタシーの詩」に題す》は、音楽と絵画を同時に扱ったカンディンスキーの影響がみられます。

「アクション」が結成される前、
1920年には未来派の影響を受けて「未来派美術協会」が、

1923年には「マヴォ」(日本のダダ)が、

そして1924年に、アクションを含むこれら前衛グループが一堂に集まり、「三科造形美術協会(三科)」が結成されました。1925年には、開店まもない銀座の松坂屋にて、展覧会を行っています。

忘れていけないのが、1923(大正12)年の9月1日。あの関東大震災が起こります。あの大災害により、廃墟となった街を前に、虚無感とともに再建のエネルギーといったものを、前衛作家たちは自分の作品の中へと持ち込み、活発にいろいろな表現を生み出していきました。

【参考図書】
知る、わかる、みえる 美術検定3級問題[基本編 basic] 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2021
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト 美術検定実行委員会編  株式会社美術出版社  2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術検定実行委員会編 株式会社美術出版社 2018
増補新装 カラー版日本美術史 辻惟雄監修 株式会社美術出版社 2020

この絵、誰の絵? 100の名作で西洋・日本美術入門  佐藤晃子著  株式会社美術出版社  2019

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