北方ルネサンスの美術

ブリューゲル 農民の結婚式 

フィレンツェでルネサンスが開花した頃、アルプルより北ドイツネーデルラント(現オランダ・ベルギー)地域でも、ルネサンスが花開きます。
その中心は南部のフランドル地方。フランダースともいわれ、あの「フランダースの犬」の舞台となったところ。毛織物工業と貿易で栄え、美術が発展。油絵が誕生します。
この地域は、油絵具の原料となった亜麻仁油の産地でもあり、早くから油絵具が使われ、緻密で写実的な絵が描かれるようになりました。
そして中世以来の近寄りがたい神やキリストではなく、より人間らしい苦悩するキリストや、後光のない使徒を写実的に描くようになります。宗教改革者や人文学者といった人物の肖像画も登場します。

時代 15~16世紀
キーワード 油彩技法 肖像画 祭壇画 細密描写

フランドル地方
フランドル地方
Blank map of Europe (with disputed regions).svg: maix¿?derivative work: Alphathon, CC BY-SA 3.0 ,
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Flemish_Community_in_Belgium_and_Europe.svg

ファン・エイク兄弟《ヘントの祭壇画》

色彩を抑えた平日礼拝面(閉じた状態)と、豪華絢爛な日曜礼拝面(開いた状態)からなる祭壇画。兄のフ―ベルトが描き始め、兄の死後、弟のヤンが完成させたと伝えられています。油彩による細密描写です。

ヘントの祭壇画

 1432年 油彩・板
 シント・バーフ大聖堂(ヘント)

ヘント祭壇画 ファン・エイク
聖母マリア
ヘント祭壇画 ファン・エイク
父なる神
ヘントの祭壇画 ヨハネ
福音書記者ヨハネ
ファン・エイク兄弟 神秘の仔羊の礼拝
仔羊の礼拝
ヘント祭壇画 合唱の天使
合唱の天使
ヘントの祭壇画 生命の泉
生命の泉
ヘントの祭壇画
たたんだ状態

たたんだ状態の外翼
(平日礼拝面)

色彩が抑えられています。

 

ヤン・ファン・エイク

フーベルト・ファン・エイク(兄)
(1388年頃~1426年)
ヤン・ファン・エイク(弟)画像
(1395年-1441年7月9日)

油絵の技術を確立。超細密画を描き、空気遠近法の原理を始めて使ったと言われます。

その他の代表作

ヤン・ファン・エイク アルノルフィーニ夫妻

《アルノルフィーニ夫妻》

1434年
油彩・板
82.2x60㎝

ナショナル・ギャラリー(ロンドン)


作品の詳細はこちら

ヤン・ファン・エイク ファン・デル・パーレの聖母子

《ファン・デル・パーレの聖母子》
1434-36年 油彩・板
141x176.5㎝ グルーニング美術館(ベルギー/ブルッヘ)

ウェイデン《十字架降下》

息絶えたイエスが十字架から降ろされる場面。イエスと同じポーズで崩れ落ちているのはマリア。すべての登場人物から、苦悩悲しみを感じさせる精神性ある人物表現です。

ウェイデン 十字架降下

 1443年以前 油彩・板
 220×262㎝ プラド美術館(マドリード)

ウェイデン 十字架降下
ウェイデン 十字架降下
ウェイデン

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン
(1399/1400年-1464年6月18日)
初期フランドルの画家

祭壇画と肖像画
市民生活の現実感を宗教画に取り入れて表現しました。

その他の代表作

聖母を描く聖ルカ ファン・デル・ウェイデン

《聖母子を描く聖ルカ》
 1435-40年頃 油彩・テンペラ・板
 137.5x110.8㎝
 ボストン美術館

ヒエロニムス・ボス《快楽の園》

三連の祭壇画。快楽に溺れる愚かな人間の謎めいた行為を描いた「快楽の園」を中心にして、左翼には「エデンの園」、右翼に「地獄」が対照的に描かれています。
外翼には旧約聖書「創世記」の天地創造の場面が描かれています。

ボス 快楽の園

1503-1504年
油彩・板 220x389㎝
プラド美術館(マドリード)

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ボス 快楽の園 中央 詳細
ボス 快楽の園 地獄
ボス 快楽の園 アダムとイブ
ボス 快楽の園 天地創造
外翼 天地創造
ヒエロニムス・ボス


ヒエロニムス・ボス

(1450年頃-1516年8月9日)

宗教的な主題に、特殊で謎めいた表現を組み合わせて、幻想的な世界を描いています。

その他の代表作

ボス 放蕩息子

《放蕩息子》

1480-90年頃
油彩・板
71.5x71.5㎝

ボイマンス・ヴァン・べーニンゲン美術館(オランダ)

 

グリューネヴァルト《イーゼンハイム祭壇画》

手足はねじ曲がり、体中に傷…  この祭壇画は、当時流行していた皮膚病の施療院だった修道院のために描かれたもの。鮮やかな色彩と生々しい表現。キリストの苦しみを描くことによって、患者の苦しみを和らげようとしました。
キリスト教美術史上の最高傑作といわれる作品です。

グリューネヴァルト キリストの磔刑

第1面 平日礼拝面
《キリストの磔刑》

1512-15年
油彩・板
269x307㎝

ウンターリンデン美術館(フランス)

グリューネヴァルト キリストの磔刑

第2面 日曜礼拝面 (第1面の中央扉を開くと…)
「受胎告知」「キリスト降誕」「キリストの復活」

グリューネヴァルト キリストの磔刑 

第3面 祝日礼拝面
「聖アントニウスの隠修士パウルス訪問」と「聖アントニウスの誘惑」
聖アウグスティヌス・聖アントニウス・聖ヒエロニムスの立像

グリューネヴァルト キリストの磔刑
vincent desjardins, CC BY 2.0 ,
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chapel_of_Unterlinden_Museum_with_Isenheim_altarpiece.jpg

 

マティアス・グリューネヴァルト

(1470/75年頃~1528年8月31日)

ゴシック末期に活躍
人間の苦悩を劇的に表現

クラーナハ《エジプトへの逃避途上の休息》

ユダヤの王ヘロデが企てたキリストの殺害から逃れるため、ベツレヘムからエジプトへと逃避した場面

クラーナハ エジプトへの逃避途上の休息

1538年
油彩・板 70.7x53㎝
ベルリン美術館

ルーカス・クラーナハ(父)
(1472年10月4日~1553年10月16日)
ドイツ 息子も同じ名前

宗教画から世俗的なものまで幅広く描き、肖像画や裸体画も数多く手掛けています。

その他の代表作

マルティン・ルター

《マルティン・ルターの肖像》 

1529年
油彩・板 73x54㎝
ウフィツィ美術館(フィレンツェ)

デューラー《四人の使徒》

デューラー晩年の代表作。
当時 人間は4つの気質(四体液質)に分類されるという考えがあり、それをもとに、4人の聖人を描き分けています。
ヨハネ  活発で外交的な多血質
ペトロ  落ち着いた粘液質
マルコ  情熱的な胆汁質
パウロ  まじめな憂鬱質

デューラー 四人の使徒

1526年
油彩・板 212.8x76.2㎝
アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)

アルブレヒト・デューラー
(1471年5月21日~1528年4月6日)
ドイツ

ヴェネツィアでイタリア・ルネサンスの美術を学び、理想的な人体表現と、合理的な空間表現をドイツ絵画に取り入れます。
版画技術

その他の代表作

デューラー アダムとエヴァ

《アダムとエヴァ》

1507年
プラド美術館(マドリード)

 

作品の詳細はこちら

《メランコリアⅠ》 1514年
銅版画 24x18.8㎝

ホルバイン《大使たち》

聖ミカエル騎士団のジャン・ド・ダントヴィル大使と、ラヴールの司教ジョルジュ・ド・セルヴの肖像画。
足元の不思議な形は、引き伸ばされた骸骨。アナモルフォーシスの技法をつかった作品で、画面に近づき右上から見ると、その姿が現れます。「死を忘れるな」というメッセージが込められています。
ペストの流行によって、人々は「死」を身近なものと捉えるようになりました。

ホルバイン 大使たち

1533年
油彩・板 207x209.5㎝
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Holbein_Ambassadors_anamorphosis.jpg

アナモルフォーシスは「Ana-morphosis」
ギリシア語で再構成の意味。
対象を極端にゆがめたり、引き伸ばしたりして描く技法。角度を変えることで正常な形が見えます。

ホルバイン アナモルフォーシス

ハンス・ホルバイン
(1497/98年~1543年)
ドイツ

人物描写の優れた肖像画を残しています。

ブリューゲル《雪中の狩人》

宗教画が主流だった時代、ブリューゲルは、風景画と風俗画を合わせた絵画を生み出します。
16世紀当時の庶民の生活と自然を描き、神のいない世界を描きました。

油彩 117x162㎝ 1565年
美術史美術館(ウィーン)

ピーテル・ブリューゲル

ピーテル・ブリューゲル
(1525/30年~1569年)
ドイツ

農民の風俗をユーモラスに表し、寓意画も得意としました。

その他の代表作

ブリューゲル ネーデルラントの諺

《ネーデルラントの諺》

1559年
ベルリン美術館(ドイツ)

ブリューゲル 農民の結婚式 

《農民の婚宴》

1568年
プラド美術館(マドリード)